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Case study 事例紹介
採れたて食材をフルコース料理にして
即興レストランを開店
体験バスツアーも企画し、新しい形で市の魅力を発信
「畑そのまんまレストランにする。in 高崎」(テレビ東京)
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この事例の担当者
※所属・役職は取材時点の情報
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伊藤隆行
テレビ東京 制作局
編成局を経て制作局にて「モヤモヤさまぁ~ず2」「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」「やりすぎ都市伝説」など、数多くのバラエティー番組を手掛ける。2023年より制作局長を務める。
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工藤里紗
テレビ東京 制作局
『生理CAMP』『極嬢ヂカラ』『アラサーちゃん 無修正』『シナぷしゅ』『昼めし旅~あなたのご飯見せてください~』など幅広いジャンルのヒット番組を多数手がける。
パートナー企業・自治体ご担当者さま
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畑中翔太
dea /BABEL LABEL 企画・プロデューサー
2008年博報堂入社後、博報堂ケトルに参加。2021年dea inc.を設立。
手段とアプローチを選ばないプランニングで「人と社会を動かす」広告キャンペーンを数多く手掛ける。「絶メシ」の生みの親。現在では、ドラマや番組などのコンテンツ領域における企画・プロデュース・脚本も務め、「絶メシロード」「量産型リコ」「お耳に合いましたら。」などを手がける。 -
湯浅安紀久
高崎市農政部農林課
※取材当時の情報です
目次
- 高崎市のプロモーションとして「絶メシリスト」の制作をした。
- ほかにもPR施策をする中で、さらに多くの人に届く施策がしたいと高崎市から要望が上がる。
- PR施策を一緒にやっていた博報堂ケトルも一緒に、番組制作をする運びになった。
- 高崎市内で収穫した食材をコース料理にして提供する即興レストランを作る番組を企画した。
- 食材の生産者や高崎市長を招き、一流シェフによるコース料理を食べる様子を放送した。
- 番組で紹介した高崎市の名産品や名所に触れられるバスツアーも企画した。
- 「テレビ、見たよ」と高崎市民から多くの声かけがあった。
- 紹介した野菜をJR高崎駅前の商業施設で販売したところ、テレビ効果で売り上げが伸びた。
- 補助金を活用した加工品なども紹介でき、販路の拡大や群馬県外へのPRに成功した。
経緯
シティプロモーション事業の一環として、さらに多くの人の関心を引くために番組制作をする流れに
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湯浅:
まず高崎市シティプロモーション事業の一環として、博報堂ケトルさん協力の下、古い飲食店を応援する「絶メシリスト」(絶やしてしまうには惜し過ぎる絶品グルメをまとめて紹介する企画)などの施策を行いました。そして2019年から今度は、高崎市の農業の魅力を伝えるプロモーションが始まり、『農Tube高崎』という動画を29本配信し、農家の皆さんの人柄や栽培技術などをPRしたんです。そのような取り組みの中、「さらに多くの皆さんの関心が高められるプロモーションをしたい」と話が広がり、博報堂ケトルさんと企画を練りながら、今回の制作に取り組む流れになりました。
畑中:
撮影やロケで全国を回る機会が仕事柄多く、元気がない場所や町を見ては『なんとかならないものか…』と考えていたように思います。ただ地域創生のような仕事は、きっかけがないと難しいんです。一番のターニングポイントは、ドラマ『絶メシロード』のもとになり、さきほど話に出た「絶メシ」のプロジェクトでした。「絶メシ」も高崎市がスタートで、町おこしにみるダイナミズムや与える影響の大きさをそのとき改めて体感できたと思います。作品やプロジェクトを通して地域そのものに影響を与えられる…そこに魅力を感じました。
高崎市の一番の魅力は、住みやすさですよね。都心から50分くらいで来られますし、食も自然も豊かで、地の食材も多く採れます。すべてにおいて“ちゃんと揃っている町”だと思います。一方で静岡県におけるお茶やしらすのような突出した名産品が高崎市にはありません。そのためアピールするのが難しい町という印象もありました。これからまだまだで、いろいろな可能性を秘めている町だと思います。
取り組み
食材を収穫して食べるだけでなく、コース料理を作って即興レストランを開店!体験バスツアーも企画
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高崎市と制作したのが、2020年9月26日夕方4時から放送された『畑そのまんまレストランにする。in高崎』です。関東屈指の農業が盛んな町・高崎市を舞台に、市内の採れたての食材を一流シェフが即興でフルコースに仕立てて地元の皆さんに振る舞う番組を制作・放送しました。
畑で収穫された野菜で即興のフルコースを作ってくださったシェフは、東京都渋谷区の恵比寿に店を構え、グルメ雑誌『dancyu』編集長も注目する小泉洋さんです。調達チームから次々と送られてくる食材にうれしい悲鳴を上げながら、その日にしか出せない即興フルコースを完成させ、出演者そして高崎市の皆さんに感動をもたらしました。
畑中:
今回のようなタイトルで、地方のアンテナショップみたいな番組を作りたいと考えてはいました。ただイメージをどのように形にしていくかは、制作陣の皆さんと具体的に決めていった感じです。“採って食べる”番組や企画は他局でもある中で、フルコースを作りレストランをオープンするオリジナリティを付け加えられた点が今回よかったと思っています。食材を調達する際のドキドキや、シェフが何を作るかわからないおもしろさが加わったのではないでしょうか。
工藤:
『昼めし旅~あなたのご飯見せてください~』(毎週月曜~金曜ひる11時40分)で、高崎市でのロケは何度もやってきました。しかし今回のフルコースを通して、今まで私が接してきた高崎ブランドとは違う側面を目撃でき、ものすごく新鮮でした。野菜だけでなく乳製品もあり、地産地消で賄える豊かさをうらやましく思います。
また畑中さんから企画提案があったとき、「フルコースにする」というコンセプトに、従来のテレビ東京にはない新しさとチャレンジを感じました。今回、畑中さんをはじめとした博報堂ケトルの皆さんとご一緒し、“テレ東らしさ”の枠を越えた新たな番組の魅力を生めたと思っています。
湯浅:
番組を放送して一過性で終わるのではなく、首都圏の人に高崎市の農業の魅力を実感してほしいとの意味を込めて、名産品に触れられるバスツアーも企画しました。農家さんでニンジン収穫やキウイフルーツ狩り体験をしたり、市内の農畜産物を使ったランチコースを食べたりできます。参加者から、「楽しかった!」という感想も頂戴しました。高崎市の農業体験として非常に効果的だったと思っています。
反響・効果
商品だけでなく、市民も知らない情報を県外にまで広く発信!「テレビを見た」という買い物客も
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湯浅:
今回の番組は、高崎市の農家の皆さんからも大きな反響がありました。高崎市に限らず、後継者不足が農業の大きな問題になっていますので、問題解決に貢献できた部分があるのかもしれません。
また高崎市の魅力を1時間丸々伝えられて有意義なプロモーションになったと私自身も実感しています。「テレビ、見たよ」と多くの声を市民からもらい、市役所にも問い合わせがありました。市内に住んでいても知らないような情報を紹介でき、テレビの力の大きさを感じています。
なお紹介した野菜は、JR高崎駅前にある商業施設「高崎オーパ」内の「高崎じまん」で販売しています。テレビの反響で売り上げが伸びたとの報告もありました。また「高崎市6次産業化等推進事業補助金」を交付しており、当補助金制度を活用した加工品も番組で紹介しました。「テレビを見た人から注文が来た」「“これ買ってきて・送って”と県外の知人からいわれて来た」という反響もあったようです。加工品の販路拡大ができた点もよかったと思います。
畑中:
“テレ東イズム”が入ったいいロケ番組でありつつ、地方をしっかり紹介できたと思います。高崎市の名産を多く紹介でき、しかもそれが嫌味ではなく自然と情報として入ってくる。みんなが心からロケを楽しんだ結果、地域の魅力が存分に詰まったアンテナショップのような番組になったと感じています。富岡賢治高崎市長も番組に出演してくださり、「みんなで作っている」という空気が現場にはあふれていました。地方自治体のプロモーションではこのような感覚が重要だと改めて感じています。
テレビ番組だけでなく、ツアーもパッケージで企画できる豊富なリソース
工藤:
今回は、“放送して終わり”ではなく、ツアーで番組をそのまま体験できるので、「このような魅力的なところがあったんだ」という発見につながりますよね。地域に対する理解や発展にも影響を与えられたのかなと思います。
湯浅:
テレビ東京さんで番組を放送した反響が大きかったので、今回のような企画があれば高崎市としてもまた参加したいです。野菜はもちろん、群馬県内の出荷量の半分以上を生産している梨や梅など、高崎市は果物の名産地でもあります。果物のPRもしていきたいので、そのような番組がいつかできれば高崎市としてもうれしいです。
畑中:
時間がない中で、高崎市の皆さんともすぐにテレビ東京さんがコミュニケーションを取り、スムーズにパッケージにしてくださったのは大きかったです。もう一つ、話が出た番組×配信×ツーリズムの企画も、テレビ東京さんのリソースを借りたからこそ実現できました。その点が、一定の成果も出ましたし、今回はおもしろかったです。
また“番組×配信×ツーリズム”のパッケージ企画は、今後求められるような気がしています。今回に限らず、開発したパッケージをいろいろなところで試していきたいです。特にコロナ禍が収束したのち、我慢していた分を取り戻そうとみんなが一気に動くのが予想されます。そこを応援するエンタメコンテンツを、テレビ東京さんとは作り続けていきたいなと思っています。個人的に、東北地方の人口減少率が高いと聞いたのが頭に残っているんですよね。地球温暖化でスキーができなくなったり、人口の減少に伴ってコンテンツがどんどん少なくなっていたりすると…。東日本大震災からの復興も含めて課題が多くあると感じているので、今後一緒に考えられる機会があれば、東北地方で何かプロジェクトを仕掛けてみたいと思っています。
テレ東と だからできること
協業先を巻き込んで、今までにない「新しい何か」を提供!挑戦・進化・変化をテレ東は続けていく
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工藤:
画的な話や空気感も含め、博報堂ケトルさんによるブランディングで、従来のテレビ東京ではなかなか引き出せない「新しい何か」が今回あったと思っています。新しい風によって、今までにない違うものにテレビ東京が挑戦していければいいですし、いろいろなコラボレーションによって進化したり変化しないといけなかったりする時期に来ていると感じています。
またコロナ禍の影響で、自由にどこにでもロケに行けるようになるまでには、もう少し時間がかかりそうです。そのため今は、関東近郊を中心に広げていきたいと思っています。身近にも魅力的な所が多くあると感じているんです。渋沢栄一がモデルになり大河ドラマ(NHK)の舞台となったのはもちろん、サウナやキャンプの施設に加え、『ムーミン』を活用してフィンランド化計画の匂いがする埼玉県に個人的に興味があります。あと、まちづくりで興味があるのは鹿嶋市(茨城県)です。株式会社メルカリ取締役 President(会長) 兼 株式会社鹿島アントラーズFC代表取締役社長の小泉文明さんにより、鹿嶋市がIT×リアルでどんどん変わっていっているんです。ほかにもコロナ禍による移動への意識の変化で、サイクリングロードがある地域にも個人的に興味が湧いています。
なおビジネスにおいて、スモールスタートできるのがテレビ東京の特長です。「まずはやってみよう!」という勢いだけでなく、「失敗してももう一回チャレンジできる」のもテレビ東京らしさかなと感じています。人数が少なくてすぐにコミュニケーションが取れ、部署をまたいで展開ができる点もテレビ東京の強みです。「このような取り組み、一緒にどうですか?」とお気軽に相談してもらえるとうれしいです。