本当にいいものを嘘なく映し、視聴者・紹介店を動機付け聖地巡礼キャンペーンは大盛況で開始当日にグッズ配布が終了 - テレ東と
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Case study 事例紹介

本当にいいものを嘘なく映し、視聴者・紹介店を動機付け
聖地巡礼キャンペーンは大盛況で開始当日にグッズ配布が終了

「絶メシロード」(テレビ東京)

#コンテンツ開発

この事例の担当者

  • 寺原洋平の写真

    寺原洋平

    テレビ東京 配信ビジネス局

    編成部のほか、デジタル専門の関連会社やコマース専門の関連会社に出向。テレビでツアーを開発・販売する新規サービス「ハーフタイムツアーズ」をクラブツーリズム株式会社と立ち上げる(現在もサービス継続中)。2018年に、現部署である配信ビジネス局に異動し、「サ道/サ道2021」「量産型リコ」「絶メシロード」などの深夜ドラマを手がける。

  • 太田凌介の写真

    太田凌介

    テレビ東京 配信ビジネス局

    テレビ東京入社と同時に現部署である配信ビジネス局に配属され、以来ドラマやバラエティの放送外の業務を担当するコンテンツプロデューサー業務に従事する。2022年のseason2より、「絶メシロードseason2」のプロデューサーを務める。

パートナー企業・自治体ご担当者さま

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    柴田晃典

    佐賀県 政策部 広報広聴課 サガプライズ! プロジェクトリーダー

    スポーツクラブ、ラジオ局勤務を経て2018年佐賀県に入庁。県内に伝わる伝承芸能の振興、JAXAと佐賀県の宇宙教育プログラム等の取組「JAXAGAプロジェクト」などに従事し、2021年4月サガプライズ!に着任。プロジェクトリーダーとして、企業やコンテンツとのコラボレーションを通じた情報発信事業を担当している。

  • 外園理恵の写真

    外園理恵

    佐賀県 政策部 広報広聴課 サガプライズ!
    プロデューサー

    2015年佐賀県庁に入庁。
    佐賀県立唐津南高等学校事務、農山漁村課、文化課に在籍し、2022年サガプライズ!に着任。

  • 畑中翔太の写真

    畑中翔太

    dea /BABEL LABEL
    企画プロデューサー・脚本家

    2008年博報堂入社後、博報堂ケトルに参加。2021年dea inc.を設立。
    手段とアプローチを選ばないプランニングで「人と社会を動かす」広告キャンペーンを数多く手掛ける。「絶メシ」の生みの親。現在では、ドラマや番組などのコンテンツ領域における企画・プロデュース・脚本も務め、「絶メシロード」「量産型リコ」「お耳に合いましたら。」などを手がける。

目次

  • 企業やコンテンツとのコラボレーションにより佐賀県の地域資産を磨き上げて首都圏から全国に向けて発信するのがサガプライズ!の目的。
  • 佐賀県のありのままを映し出せるコンテンツとして「絶メシロード」の特別編を提案。
  • 「佐賀のいいところ・いい景色を見せて現地に人が訪れる」をゴールに制作スタート。

  • デフォルメせず、現地にある本当にいいものをそのまま映すことを意識。
  • きれいだけの映像ではなく、ストーリーに乗せて佐賀県のよさをおもしろく発信。
  • 紹介したお店を回るとコラボ限定グッズをお渡しする聖地巡礼キャンペーンも開催。

  • 放送前から予告編を見てSNS上で期待する投稿が見られ、放送後にも反響多数。
  • 「廃業しないようにがんばる」と、紹介したお店のモチベーションがアップ
  • 聖地巡礼キャンペーンは開始後数時間でグッズの配布が終了する盛況ぶり。

経緯

「佐賀のいいところ・いい景色を見せて現地に人が訪れる」をゴールに、サプリメントのような優しいドラマを構想

畑中:
佐賀県 広報広聴課サガプライズ!(以下、サガプライズ!)さんと「何か企画をやりましょう」となったのがスタートです。「佐賀のいいところ・いい景色を見せて現地に人が訪れる」をゴールに、人が動くところまで設計しようと最初から考えていました。「絶メシ」は、取り上げたお店にお客さんが来て追体験をしたがるコンテンツです。“ドラマに出ていた”というワードで、人が動く。「絶メシロード」と佐賀県がコラボレーションしたら、「人が動くプロモーション」ができると思い、今回の“出張編”を提案しました。

柴田:
サガプライズ!では、さまざまな企業やコンテンツとのコラボレーションやオリジナルコンテンツの制作など、2013年からこれまでに36のプロジェクトを実施してきました。3〜5本程度の情報発信プロジェクトを毎年やる都道府県は、佐賀県以外にないと思います。佐賀県は、ほかの自治体のようにアンテナショップを都内に設置していません。代わりに、情報発信部隊であるサガプライズ!が都内に常駐し、佐賀県を話題化し、盛り上げるプロジェクトを生み出しています。サブタイトル「おどろきの佐賀、ぞくぞく。」のとおり、特産品や地域資源を磨き上げて発信していくために、毎年さまざまなプロジェクトを仕掛けているんです。今回は、テレビ東京さんとの取り組みによって、ドラマという形で全国に情報発信できたことは、初めての取り組みながらもとても効果があったと感じています。

寺原:
僕たちはオリジナルドラマを多く作っています。その中でも畑中さんと作るドラマでは、初期段階に畑中さんが提案してくれた「ドラマは深夜のサプリメント」というコンセプトを今でも強く意識しています。同時に、放送される時間帯に関しても、畑中さんとは早くから、「金曜日の深夜を『今週もよくがんばった!』と労ってもらえるような時間帯」にすることを大事にしてきたんです。今のテレビはさまざまな方法で見られますよね。しかしリアルタイムへの配慮もまだまだ必要で、曜日&放送時間帯のトンマナを理解するのも重要です。電源を一度つけると、視聴者のプライベートゾーンにテレビが入り込んでしまうのは今も変わりませんから。エゴを押しつけず、『ちゃんと優しく背中を押せているか』を畑中さんといつも確認しています。

太田:
“この時間にこれを作れ”みたいにいわれた経験は僕もありません。仕事をしていて深夜になるときもある中で、疲れているときだと難しい伏線がある番組は僕も見られないんですよね。だから“サプリメント”という言葉に僕も共感しています。むしろこのように難しい内容を削ぎ落とした結果、筋が通った本質だけが残るので、メッセージ性が色濃く視聴者に伝わるんです。

取り組み

デフォルメせず、現地にある本当にいいものをそのまま映せる演出を逆算

柴田:
先にも申し上げたとおり、ドラマとのコラボレーションは今回が初めてでした。私たちから提案したことは、佐賀県で見せたいエリアぐらいで、それ以外はほとんどお任せです。参考情報としてお伝えした佐賀県の課題もうまくピックアップしてもらえたと感じています。畑中さんからいわれて共感したのは、「本当にいいものは現地にある。デフォルメせず、そのまま映すことに価値がある」という言葉です。「絶メシロード 出張編」では、この言葉を表現できたと思っています。「絶メシロード」ファーストや「佐賀県」ファーストでなく、お互いのいいところを補完したり伸ばし合ったりしたコラボレーションでした。

畑中:
「佐賀のいいところ・いい景色を見せて現地に人が訪れる」を達成するには、“いいところ”をたくさん巡って見せる必要がありました。しかし主人公・須田民生(演:濱津隆之)は車中泊の旅に出かけて食事もしますが、さまざまなところを積極的に巡るタイプではありません。だから誰かに連れ回される設定が必要になりました。本編の鏑木勉(演:山本耕史)のようなキャラクターを考えたとき、佐賀県出身の白竜さんの存在を見つけたんです。なので今回はゴールから逆算したキャスティングの狙いがありました。

太田:
嘘を除く作業が活きていると感じています。“佐賀県の現地にあるいいもの”を表現する演出にもつながる部分で、いいと思ったものをそのまま入れてしまうんです。頭で考えたストーリーを入れても最初の感動にはかなわないと思っています。

寺原:
反響を作るためのさまざまなマーケティングやPR領域の戦略を広告業界出身なので畑中さんは知っているはずです。しかし、そのノウハウを一旦横に置いて、マニアックさやシンプルさが支持されてきたテレビ東京の文化に適合してもらった感じがあります。その配慮があったからこそ、ここ数年、反響もちゃんと担保しつつ、広告のよさとテレビ東京のよさを融合した稀有な制作ノウハウを磨き続けられ、さらにありがたいことに、作られたドラマの多くに視聴者からの共感をもらえました。その中でも「絶メシロード」は中年の視聴者からの共感がすごいんです。だからこそ今更、その場しのぎのデフォルメも嘘も必要ないんです。

反響・効果

放送前から予告編で盛り上がり!視聴者だけでなく、紹介店のモチベーションもアップ

柴田:
放送前に佐賀県にゆかりのある都内のお店にチラシやポスターを配布していた際、数多くのよい反応をもらいました。放送前に予告編で少し見切れた段階から、『あの店が出るのでは?』と予想するSNS投稿もあったほどです。もちろん「絶メシロード」のファンの皆さんも、民生の初の九州・佐賀県への旅を楽しみにしてくださっていて、とてもうれしかったです。そして何より、ドラマに登場したお店や聖地巡礼スタンプラリーに参加していただいたお店にお客さんが増えた点は大きいと感じています。「これを機に絶滅しないようがんばります!」と、“ぎょぅざ屋”の店主さんもうれしそうに話されていました。

また聖地巡礼キャンペーンの先着プレゼントとして、今回のコラボレーション限定の有田焼どんぶりを20個用意しました。すると初日早々になくなる盛況ぶりだったんです。ドラマで紹介した3店を回るのが条件で、11時ごろからしかお店が開かないにもかかわらず、14時ごろにはすべてのどんぶりの引き渡しが終わってしまいました。もらえなかった人が多く恐縮ですが、それほどコラボレーションの反響があったと感じています。

外園:
佐賀県がロケ地になるドラマや映画は過去にもありました。ただ佐賀県内に実在する場所が、実在するものとしてストーリーに登場する作品はなかなかありません。『前に行ったあのお店にこんなストーリーがあるんだ!』と、佐賀県内の人々にも新たな発見を提供できた手応えがあります。単純に、ドラマを見て「佐賀県に行ってみたい」といってくださる人が多かったのもうれしかったです。

畑中:
地方自治体のPRは、トゥーマッチや嘘がないことが重要だと思っています。今回は、娘が東京に出ていくのを寂しがる父親を登場させました。同じように地方から人がいなくなる場面は多くあるのではないでしょうか。だから『いい場所だから、佐賀県にずっといる!』は、ある意味、きれい過ぎる話だと思っていたんです。佐賀県から人が出ているのは事実ですから。ただし帰ってきたくなる場所であるのも事実です。嘘でも、悲観でもない。逆に『佐賀県はパラダイスだよ!』もトゥーマッチで違う。だから佐賀県のよさとして“ちょうどよさ”を描きたかったんです。

きれいなだけで終わらない!佐賀県のよさをストーリーに乗せておもしろく伝えた

外園:
テレビ東京さんの番組、特にドラマについて個人的に感じていたのは、オムニバス感というか、一見バラバラなストーリーの中でも最終的に伝えたいメッセージがしっかりある点です。何の気なしに見ているドラマにも、何らかのメッセージが込められている。だからこそ、ついつい何度も観たくなってしまう。まさしくサプリメントのようなドラマだなと感じていました。

柴田:
テレビ東京さんには、きちんと情報を伝えつつ遊び心を入れてくる、おもしろい切り口で“唯一無二”を生み出してくれるような期待感がありました。サガプライズ!のコピーである「おどろきの佐賀、ぞくぞく」とのフィット感がとても強く、いつか一緒に仕事をしたいと思っていたんです。

自治体プロモーションには「PR動画作り過ぎ問題」があると思っています。きれいな映像を作っても、多くのPR動画にあふれていて観てもらえないし、話題にもなりにくい。しかしドラマならば、特に「絶メシロード」であれば、現地にあるストーリーをそのまま見せられるため、『行ってみたい』という感情を生みやすいと考えていました。

寺原:
マーケティング戦略でちゃんと設計をしてからPRをするのがよいと思う人もいるでしょう。しかしテレビ東京では、“セオリーどおり”を重要視していません。セオリーどおりだと他とかぶるので。「絶メシロード」は、サラリーマンの悲哀をテーマにし、その共感性を軸に制作してきました。僕らは、マーケティングのセオリーではなく、「親しみがある共感」で、巡礼行為までしてもらうのが得意なコンテンツメーカーなんです。今回、「絶メシロード 出張編」においても、どこの地方でもそれが実現できると感じました。だって共感モンスターの主人公・民生を巻き込んでくれる人と味わい深いお店さえあれば成立できるんです。ですので王道のマーケティングやブランディングはもう聞き飽きたという地方自治体や企業の担当者さんがいましたら、ぜひテレビ東京にお声がけをもらいたいです。

畑中:
原作がないからこそ自由なストーリーの発想ができます。寺原さんと私がいいと思えば、主人公・民生には転勤や出張もさせられます。また“場所”がコアにありながら、「絶メシ」はさまざまな形になれる存在なのです。テレビ東京さんとのドラマだけでなく、飲食事業会社さんと立ちあげた「絶メシ食堂」も、私一人ではできない取り組みでした。チャンスがあればほかの形にもしていきたいと思っています。

そして「店が長く続いていく・昔からの食事が残っていく」のが「絶メシ」のゴールで、実現するためには何でもやりたいと思っています。だから“このようにあるべき”みたいなブランディングイメージもまったくありません。「絶メシ」で紹介したお店に人が来て、『もう少し続けようかな』と店主さんによろこんでもらえればもうゴールです。

太田:
「絶メシロード」では、ストーリー要素を薄くする工夫が、共感しやすさにつながっていると思います。現実離れしたドラマ的なストーリーが少ない分、視聴者が重ね合わせやすい部分がある。その部分をサガプライズさんに評価してもらえたのかなと感じています。

テレ東と だからできること

中年サラリーマンが移動するだけ、セオリー破りのドラマで人を動かした

寺原:
“しがない中年サラリーマンの逃避行”でありながら、視聴者の行動変容を起こせたのは僕たちならではだと思っています。柴田さんのご指摘のとおり、地方自治体のPRでよく見るのが「きれいでおしゃれだけで終わる映像」です。マーケティングやPRのセオリーを詰め込んだカスタマージャーニーをベースにした制作物はほかにもある中で、埋もれることなく、おもしろいと感じて行動変容を促せるものが実際いくつあるでしょうか?

そのような状況において、しがない中年サラリーマン・民生が、佐賀県を背負ってキャンペーンを完遂できたのが今回うれしかったです。参考書どおりのものではないのに、形になって、ちゃんと反響も出せたことが自分でも痛快でした。それに加えて、白竜さんも記者会見に出てもらった片渕アナウンサーも佐賀県出身で、『佐賀県を広めたい!』との嘘のない地元愛も援護射撃になったと感じています。濱津さんも佐賀県を気に入っていて、みんなの佐賀県への愛を最後まで一つの嘘もなく詰め込めたのがうれしかったです。

太田:
「絶メシロード」にあるのは“移動”ぐらいで、大きな伏線もありません。この設定や世界観は、テレビ東京だからできたものだと感じています。だからこそ視聴者が翌日すぐにドラマの民生の行動をまねでき、ノベルティグッズが足りなくなる展開につなげられたと思っています。ドラマとキャンペーンを同時に出せた点もテレビ東京のいいところです。ここまで純粋に“旅をするきっかけ”を視聴者に提供できたのは、テレビ東京ならではだと思います。

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