テラヤマ WK(ワ―ケーション) プロジェクト
2020年、コロナ禍で世界が大きく変化しました。日本でも様々な業務形態が推奨されてテレワークが普及し、またソーシャルディスタンスを強いられたことが、近しい家族との時間や自然とのふれあいを見直すきっかけにもなりました。
そんな時代の流れに沿うべく、業務の傍らテラヤマでは粛然と、しかし着々と、あるプロジェクトが進められてきました。その名も「テラヤマ蓼科WKプロジェクト」。
社員がテレワークの拠点として、あるいはバケーションとして、家族や仲間を誘って利用できる場所を作ってはどうかという発案のもと、緑豊かな蓼科高原で社宅の建設計画が行われました。
家屋を設計したのは、家と庭とを一体化させた建築を得意とする横内敏人氏。計画開始から2年、ハルゼミの合唱やカッコウの鳴き声に包まれたカラマツ林の中に、洗練された木造家屋がこのほど竣工しました。
木材や石材など地元の天然素材がふんだんに使われた家屋の中は、デンマーク製や国産の機能美を追求した家具が配置され、さながらインテリア雑誌の一ページのような空間ができあがりました。
土地選びから建築、家具や雑貨までこだわりぬいたこの社宅、こだわりをご紹介し始めたらきりがないので、ここでは造園会社テラヤマとして植栽のご紹介をしたいと思います。
植栽を考える上では、既存のカラマツ林の魅力を最大限に生かし、なおかつ洗練された家屋との一体感を持たせる植栽と樹種を選定しました。
南北の窓から両側の庭を見通せる構造の家屋は、屋内にいても緑に包まれているような、まさに一体感があります。この一体感に一役買っているのが、家屋のデッキとカラマツ林や植栽との間に配された、寒冷地に育つ西洋芝、ジョイターフ。ふわふわでつやのある緑がまぶしい芝生地に、カラマツの木漏れ日が絵画のように美しく映ります。
家屋のエントランス部は、八ヶ岳をイメージした庭石に合わせ、シンボルツリーとしてイロハモミジを配しました。南北のデッキ前にもモミジを配し、カラマツとのコントラストと季節感を演出します。
露天風呂のように窓を全開放できるメインバスルームの目隠しには、赤い実がかわいらしい常緑樹のソヨゴを植栽しました。
敷地境界にはサワラで奥行きを出し、やはり赤い実がつく針葉樹のイチイを選択しましたが、ここで問題発覚。どうやらこの地域に野生している鹿やウサギの被害を受けやすい樹種のようなのです。樹種変更も検討したものの、やはりイチイを植えたい!ということで、挑戦と実験を兼ねてイチイを植え、鹿避けのネットを一本一本に巻いていきました。更に馬酔木という名の通り、馬がしびれて歩けなくなるほどの毒性があり食害されないと言われるアセビを合わせて配しました。全体の植栽のコツは「上手(うま)下手(へた)」。自然に溶け込むように、ランダムな配置を意識しました。
北側の庭にはクリノキと、ちょっと珍しいジンチョウゲ科の長寿桜を。こちらも鹿さんの胃袋に入らないように防御です。
そして全ての植栽をまとめるのは既存のカラマツたち。作られたものではない圧倒的な美しさがあります。林床には、様々な野草たちの姿も。
住空間に溶け込む様々な緑たち。これからの四季折々の変化も、追々ご紹介していければと思います。