「辞めたい」と思ったことがある新入社員は3人に1人。離職防止のカギは「給与」「仕事内容の適性」?

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「辞めたい」と思ったことがある新入社員は3人に1人。離職防止のカギは「給与」「仕事内容の適性」?

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さまざまな業界で人手不足の声が聞かれる昨今。「配属ガチャ」「退職代行」などのワードも話題になるなかでは、せっかく迎えた新入社員に「どのように向き合い、どのように接したら、能力を生かし長く働いてもらえるのか」と頭を悩ませている人も少なくないのではないでしょうか。

そこで、マイナビ転職では、2024年4月に入社した新卒社員を対象に、現在の仕事に対する満足度や配属先について思っていること、理想の上司・先輩像など、気になる実態を調べました。

※調査対象は、2023年4月に新卒入社した会社員(正社員)。WEB調査で2024年6月7日(金)〜6月9日(日)までに行ったアンケート調査結果を基にしています。

新入社員の33.4%が「会社を辞めたい」と感じた経験あり

新入社員に「今の会社を辞めたいと思ったことはありますか」と聞いてみたところ、「辞めたいと思ったことがある」という人は33.4%でした。現在転職活動をしている人は3.4%ですが、全体ではおよそ3人に1人の割合で会社を辞めたいと思ったことがあるという結果になりました。

新入社員の33.4%が「会社を辞めたい」と感じた経験あり

新入社員の約4人に1人が「3年以内に退職」と回答。女性は3人に1人が3年以内に退職予定

続いて、新入社員に「今の会社で何年くらい働く予定か」を尋ねたところ、「3年以内」と答えた人は25.9%。男女別に見ると、3年以内に退職予定の人は男性が18.5%、女性が33.3%で男女差が顕著な結果です。

また、最初の質問で「辞めたいと思ったことがある」と回答した退職検討経験者は、約半数の48.7%が3年以内に退職すると考えている一方、非退職検討経験者で3年以内に退職したい人は14.4%に留まりました。非退職検討経験者は、「定年まで」が25.3%で、比較的長期勤続を見据えている様子がうかがえます。

新入社員の約4人に1人が「3年以内に退職」と回答

新入社員の直近の月収は平均「22.2万円」

次に、直近の月収について尋ねたところ、全体の平均は「22.2万円」という結果となりました。19〜21万円台、22〜24万円台がそれぞれ3割とボリュームゾーンのようです。

退職検討経験者では、月収が16〜18万円台の割合が19.5%と、非退職検討経験者に比べ10pt以上高くなっています。平均月収を見ても、退職検討経験者の月収は非退職検討経験者を下回っており、月収が退職意向に影響を与えていることが示唆されます。

直近の月収

退職検討経験者では、小企業勤務者が非退職検討経験者よりやや多い

次に、従業員規模を聞いたところ、全体では小企業が13.0%、中企業が37.4%、大企業が39.0%でした。小企業勤務では退職検討経験者が19.1%で非退職検討経験者の9.9%を上回り、中企業・大企業に比べて「辞めたい」と思った人の割合が高い結果になっています。

退職検討経験者では、小企業勤務者が非退職検討経験者よりやや多い

新入社員で勤務地・配属先ともに希望通りだったのは59.9%

続いて、新入社員にとって配属時の大きな関心ごとである「配属ガチャ」についてです。初めての配属で入社前に希望を出せたかを聞いたところ、希望を出せた人は64.0%でした。希望通りの勤務地・配属先だった人は全体の59.9%。ファーストキャリアを希望以外の部署や配属でスタートした人が約4割いることが分かります。

「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者では、勤務地・配属が希望通りだった割合が51.3%と非退職検討経験者に比べ13ptほど低くなっています。また、後述する【現在の仕事内容】に関する質問でも「仕事内容が向いている」と感じているのは10.1%に留まり、こちらも低いスコアに。

このことから、希望通りの配属に就けていないことが「仕事内容が向いていない」という考えにつながり、退職意向の一因になる可能性が考えられます。

新入社員で勤務地・配属先ともに希望通りだったのは59.9%

「配属ガチャにハズレた」と感じている人は11.1%

思い通りの配属先ではない場所でキャリアをスタートする人が少なくないなかで、「配属ガチャにハズレた」と感じている新入社員はどの程度いるのでしょうか。今回の結果では、「ハズレた」と感じているのは11.1%。約10人に1人で、それほど多くはないようです。

ただし、「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者は、23.7%が「配属ガチャにハズレた」と感じており、非退職検討経験者よりも15pt以上高い結果に。望まない配属でキャリアをスタートすることは、勤続のモチベーションにネガティブに影響しているようです。

とはいえ、退職検討経験者の66.0%は「配属ガチャがハズレた」という認識ではありません。入社後およそ2カ月で辞めたいと思う原因は、配属ガチャ以外の部分が大きいのかもしれません。

「配属ガチャにハズレた」と感じている人は11.1%

配属ガチャは「経験につながる」「キャリアに影響する」と賛否両論

続いて、配属ガチャの存在が自身のキャリアへの影響や会社選びに加味したかどうかなどを自由回答で聞いてみました。結果、「経験が積める」「まずは配属された所で頑張ることが大切」といったポジティブな意見と、「モチベーションの低下につながる」「転職に影響する」といったネガティブな意見の両方が見られました。

また、女性の回答のなかには、結婚をはじめとした自身のライフプランに関する考え方も散見されました。「あらかじめ勤務地や部署を選べる会社だけを受けた」という声もあり、「配属ガチャがないこと」が安心感につながっていることもうかがえます。一方で、配属先や勤務地が希望通りであっても結局は「人間関係次第」との見方もありました。

※自由回答 抜粋
※ポジ・ネガ・ニュートラルの見出しは、回答内容を見て定義

男性 【ポジティブ】
・希望が通らないと残念ではあるが、最初のキャリアなだけであるのでそこまで悲観しない
・配属に関しては入社前に希望が通るのか聞いた。希望通りに配属されても、人間関係等でやる気が出ないことがあればそれはキャリアにマイナスに働くかもしれない。必ずしも配属でキャリアの善し悪しが決まるわけではないと考えている。
・配属後のモチベーションが左右されてしまうのは仕方ないが、だからといってすぐ辞めるのは今後の自分の為にならないと思う。
【ネガティブ】
・職場に尊敬できる先輩や上司がいないとモチベーションが上がらないと思う。
・自分のやりたい業務ができなかったりキャリアが積めなかったりした場合、転職にも影響する。
・配属ガチャに人生を左右されるのは嫌だったので、転勤のない東京勤務確定の企業しか受けなかった。
【ニュートラル】
・部署や分野に関しては、必ずしも最もやりたいことではないからと言って離れるのは違うかと思う。新たに得るものもあるでしょうし住めば都という言葉もある。まずやってみて考えるべき。しかし一方で人間関係に関しては、ある程度一緒に働いてみてどうしても合わないと感じたら見切りをつけるべきかと思う。
女性 【ポジティブ】
・自分のやりたいこと、行きたい場所に配属されることは最も良いことだとは思うが、与えられた環境でどう頑張れるかも大事だとは思う。
・とりあえず、配属されたところでできる限り頑張ることが大切だと思った。また、配属されたところでも学べるところはあると思う。
・(配属ガチャがあるからこそ)幅広い分野を経験できる。メリットが大きい。
【ネガティブ】
・結婚相手など、人生で重要な部分が勤務地によって変わることがあるので、勤務地は希望通りである方がいいと思う。
・勤務地が都心か地方かでかなり生活が変わってくるため、希望が叶わなかった場合かなり心的に負担がかかる可能性があると思う。
・配属ガチャがあることは、入社希望の人数が減る原因にはなりうると思う。私自身は配属ガチャが無いことが安心材料のひとつだった。
【ニュートラル】
・部署は多少は仕方がないと思うが、勤務地は配慮が必要だと思う。
・自分の苦手な事、その逆を知ることができるからいいと思うが、精神的な負担になる場合はマイナスに考える。

退職検討経験者の2人に1人が、仕事内容に不満を感じている

ここからは、退職検討に影響する要素を見ていきましょう。現在の仕事内容の満足度を尋ねたところ、79.9%が満足しており圧倒的多数。不満を抱いている人は20.1%でした。「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者のうち、仕事内容に満足しているのは52.8%と、非退職検討経験者と比べて約40ptも低い結果に。退職検討経験者は、入社前の期待と現在の仕事内容にギャップを感じていることが多いようです。

退職検討経験者の2人に1人が、仕事内容に不満を感じている

退職検討経験者とそうでない人の仕事内容の違いは?

では、具体的に仕事内容のどのような点が、満足度につながるのでしょうか。退職検討有無別で差が出たポイントを見ると、「身に付けるべきスキルが明確である」「仕事内容が向いている」などの項目で、非退職検討経験者を大きく下回っています。仕事への適性やスキルアップの方向性が明確であることが、仕事への満足度につながっていると考えられます。

退職検討経験者とそうでない人の仕事内容の違いは?

退職検討経験者が感じている、仕事内容の理想と現実のギャップは?

では、理想の仕事内容はどのようなものでしょうか。全体で見ると、「働きと報酬が見合っている」が53.8%で最も高く、次いで「仕事内容が向いている」「努力や貢献が賃金で評価される」などが続きます。給与に関する項目がトップ3に2つ入り、当たり前のことではありますが、給与は大事な要素であることが分かります。

理想の仕事内容

また、仕事内容の理想と現実のギャップを見たところ、「働きと報酬が見合っている」で大きくギャップが生じています。さらに、「辞めたいと思ったことがある」退職検討経験者は「仕事内容が向いている」のギャップスコアが大きく、非退職検討経験者に比べても15pt以上差が開く結果に。

離職防止のためには、まずは働きに見合った報酬があること、次いで仕事内容がマッチしていることが重要なようです。

また、退職検討者と非退職検討者で10pt前後の差がついている項目としては「仕事内容が向いている」「将来性のある事業・仕事内容を担当している」「今の仕事を続けたら、社外にも通用する人材になれそう」「資格取得やリスキリングの奨励など、スキルアップの制度がある」などがあります。「辞めたいと思ったことがある」退職検討者は、自身の成長や将来通用する人材になれそうかという点に焦りを感じているのかもしれません。これは、昨年の調査でも、「職場がゆるい」と危機感を抱いてる新入社員の存在が見て取れました。

退職検討経験者が感じている、仕事内容の理想と現実のギャップ

今の給与に対して満足している人は69.0%

理想と現実のギャップが顕著になった給与について、もう少し詳しく見てみましょう。今の給与年収に満足しているか聞いたところ、69.0%が満足し、31.0%が不満を抱いているという結果でした。

この項目でも、「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者は満足が50.2%に留まり、非退職検討者と28ptほど差が開いています。まだ同期の間で差が開きづらく、結婚や子育てなどのライフステージの変化で「もの入りになる」時期を迎えていないであろう時期でも給与に対して不満が生まれているという点は、その後の退職意向に影響する要素として、見逃せない部分もあります。

今の給与に対して満足している人は69.0%

今の労働時間・休暇に満足している人は71.8%

続いて、今の労働時間・休暇に満足しているかを聞いたところ71.8%が満足し、28.2%が不満を抱いているという結果でした。退職検討経験者の満足度は50.6%と半数程度で、非退職検討経験者に比べて約30pt下回っています。

今の労働時間・休暇に満足している人は71.8%

現在の上司・先輩に対しては満足している人が86.0%

また、現在の上司・先輩に満足しているか聞いたところ、全体では、満足している人が86.0%、不満を抱いている人が14.0%という結果になりました。

ここまでの仕事内容・給与・労働時間や休暇・上司の4要素の満足度をまとめると、「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者は仕事内容(52.8%)、給与(50.2%)、労働時間(50.6%)の満足度は低いものの、上司への満足度は70.0%と高めの傾向。

後述する【辞めなかった理由】では「上司や先輩、同僚に恵まれているから」が多いことからも、入社3カ月時点での退職意向に対して人間関係の影響度は小さく、むしろ、退職を思い留まらせている要素が上司・人間関係である可能性も考えられます。

一方で、「辞めたいと思ったことがない」非退職検討経験者の満足度は、上司(94.0%)が最も高く、仕事内容(93.4%)が僅差で続きます。労働時間(82.4%)、給与(78.4%)は若干低めの結果でした。上司と仕事内容の満足度が、新入社員の勤続に重要なことはここでも分かります。

現在の上司・先輩に対しては満足している人が86.0%

上司・先輩との関係性、退職意向別でコミュニケーション量に差あり

新入社員の勤続意向に一役買っていると見られている上司・先輩。では具体的に上司や先輩のどのような行動が、新入社員からの信頼につながっているのでしょうか。

今の上司や先輩との関係性について聞いたところ、全体では「話しかけてくれる(雑談)」「話しかけやすい(雑談)」「良くない時はきちんと指摘(指導)してくれる」などが上位の結果に。

「話しかけてくれる」「話しかけやすい」「尊敬すべき点がある」などは退職意向の有無に関わらず上位ですが、非退職検討経験者は退職検討経験者よりもスコアが高く、上司・先輩とのコミュニケーションが密でスムーズな様子です。

今の上司や先輩との関係性

上司・先輩の行動で嬉しかったことは「話しかけてくれる」が最多

次に、上司・先輩の行動で嬉しかったことを聞いたところ、全体では「話しかけてくれる(雑談)」「話しかけやすい(雑談)」「尊敬すべき・学ぶべき点がある」が上位の結果に。これらはいずれも、「辞めたい」と思ったことがない非退職検討経験者の方がスコアが高く、今の上司・先輩への満足度の高さにも影響していると考えられます。

また、「褒めてくれる」(35.5%)、「良くない時はきちんと指摘(指導)してくれる」(33.1%)は、 ほとんど同じ割合であることもポイント。「ただ褒めるだけでなく、ためになる指導をしてくれる上司・先輩か」も求められている様子がうかがえます。

上司・先輩の行動で嬉しかったことは「話しかけてくれる」が最多

理想の上司・先輩像は「話しかけてくれる/話しかけやすい」「尊敬すべき・学ぶべき点がある」など

続いて理想の上司・先輩像を聞いたところ、【上司・先輩の行動で嬉しかったこと】と同じく、「話しかけてくれる/話しかけやすい」「尊敬すべき・学ぶべき点がある」が上位にあがりました。

「尊敬すべき点がある」が3位に入っていることから、上司や先輩は単に年齢や年次が上であるだけでなく、尊敬できる点が求められていることが分かります。具体的な行動としては「プロセスもチェックして指摘・指導してくれる」「良くない時はきちんと指摘(指導)してくれる」などが高くなっています。

また、「ランチ/飲み会に誘ってくれる・誘える」が「業務外の付き合いはしない」よりも多いことから、新入社員は上司・先輩との交流をポジティブに捉える傾向があると考えられます。「褒めてくれる」(49.5%)と「良くない時はきちんと指摘(指導)してくれる」(49.4%)がほぼ同数であり、「プロセスもチェックして指摘・指導してくれる」(41.9%)のスコアも高いことから、【上司・先輩の行動で嬉しかったこと】と同様に、「優しいばかりがいい上司・先輩」というわけではないようです。

「辞めたい」と思ったことがない非退職検討経験者の回答に注目してみると、「良くない時はきちんと指摘(指導)してくれる」「プロセスもチェックして指摘・指導してくれる」「キャリアや目標を一緒に考えてくれる」など、成長につながる項目がやや高いのが特徴的です。一方で、退職検討経験者では「プライベートでも仲良くできる」がやや高く、業務外のコミュニケーションを求めている特徴が見られました。

理想の上司・先輩像は「話しかけてくれる/話しかけやすい」

上司・先輩の行動/理想と現実のギャップは「なんでも相談できる」がトップ

上司・先輩の行動で理想と現実のギャップが大きいものをみると、「なんでも相談できる」が突出しており、理想の50.5%に対し現実は23.6%と、26.9ptの差があります。次いで、「今後のキャリアや長期的な目標を一緒に考えてくれる」「ワーク・ライフバランスに理解がある」が上位なことから、「目の前の業務以外のことも気軽に相談できる関係か」で理想と現実のギャップが大きいと考えられます。

上司・先輩の行動/理想と現実のギャップは「なんでも相談できる」がトップ

また、「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者の理想と現実のギャップが大きい項目としては、「なんでも相談できる」「話しかけやすい」「尊敬すべき・学ぶべき点がある」が目立ちます。日頃から「相談しにくい」「話しかけにくい」などコミュニケーションに苦労をしていたり、「尊敬できない」と感じてしまうような部分を目の当たりにしていたり、という事情があるのかもしれません。

上司や先輩への相談で「よくある」ものは「今相談していいタイミングか分からない」が最多

続いて、上司や先輩への相談で「よくある」ものを聞いたところ、全体では「今相談していいタイミングか分からない」が最も高く、「忙しそうで相談しづらい」「相談したいが、自分の状況を説明するのが難しい」などが上位にあがりました。相談する内容以前に、上司や先輩に声をかけづらいと感じている様子です。

また【上司・先輩の態度や行動/理想と現実のギャップ】を踏まえると、上司・先輩に対して相談したい気持ちはあるものの、ハードルが高いと感じていることが分かります。「自分から質問する」といったアクションは社会人としてもちろん必要ではありますが、まずはそのスキルを身に付ける土台作りとして、上司や先輩から困ったことはないか声掛けをしたり、定期的に話せるタイミングを作ってあげたりすることも有効かもしれません。

「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者は、「不機嫌そう」「そんなことも知らないのかと相談しづらい」「誰に聞けばいいか分からない」で、非退職検討経験者のスコアを上回っていることも要注目です。退職検討経験者は【上司・先輩の満足度】で3割が上司・先輩に不満を感じていたこともあり、こういったコミュニケーションのストレスが影響している可能性が考えられます。

上司や先輩への相談で「よくある」ものは「今相談していいタイミングか分からない」が最多

また、この上司・先輩への相談に関する項目は、男女別でも差が一定数見えました。女性は「今相談していいタイミングか分からない」「忙しそうで相談しづらい」が男性に比べて高い結果に。女性は、空気を読み話しかけることを遠慮してしまう傾向がある様子がうかがえます。

上司や先輩への相談で「よくある」ものは「今相談していいタイミングか分からない」が最多

今の会社を辞めなかった理由は「上司や先輩、同僚に恵まれているから」が最多

ここまでの結果では、仕事内容・給与・労働時間・上司や先輩との人間関係とさまざまな要素のなかで、一定数の理想と現実のギャップや不満が見えてきました。しかし、冒頭にあった通り「辞めたい」と思っても「転職活動するまでには至らない」人が3割ほどいるのです。

その3割は、なぜ辞めなかったのか。理由として上位にあがったのは、「もう一度就活をしたくないから」「辞めると言いづらいから」。このように、「辞めて新たな場所に就労する労力に耐えられない」という理由で会社に「残っている」新入社員は、退職代行やダイレクトリクルーティングなど「気負いなく新たな場所に移れる」手段が現実的になった時にどのようにすれば引き止められるのか、難しい部分があります。

また、「辞めたい」と思ったことがない非退職検討経験者と比べると「なじめている/社風が合っているから」「仕事にやりがいを感じているから」「向いている仕事だから」「上司や先輩、同僚に恵まれているから」「成長できる環境だから」などでも、回答が大きく下回る結果に。

「配属ガチャが外れた」と回答した人は1割に留まりましたが、それでもやはり、「思っていたのと違う」とギャップを感じたり、張り合いのなさや成長への焦りに直面したりしている人は一定数いるようです。

まずは適性や希望にあった業務配置、加えて入社前に「実際の業務内容のイメージ」のギャップをなるべく埋めておくこと、そして、入社後は「今の仕事を続けることで3年後、5年後、10年後にどんなスキルが身に付いて、どんな活躍をできるのか」がイメージできるような目標設定やコミュニケーションをしていくことなど、不安を払拭していくことが求められるのかもしれません。

今の会社を辞めなかった理由は「上司や先輩、同僚に恵まれているから」が最多

今の会社で長く働きたくない理由は「ライフステージに合わせて働き方を変えたいから」が最多

ちなみに、今の会社で長く働きたくない理由を聞いたところ、全体では「ライフステージに合わせて働き方を変えたいから」が最も高く、「給料が低いから」「色々な会社で経験を積んでいきたいから」などが上位にあがりました。

「辞めたい」と感じたことがある退職検討経験者は、給料、ライフステージの変化に続いて、「仕事がハード」「フレックスや柔軟な働き方をしたい」「仕事が向いていない」と仕事内容に関するネガティブな理由が続き、特に「給料が低いから」「仕事が向いていないから」などで非退職検討経験者のスコアを大きく上回っています。

今の会社で長く働きたくない理由は「ライフステージに合わせて働き方を変えたいから」が最多

また、この「長く働かない理由」の設問も、男女差が顕著に出ました。男性は「給料が低いから」が最も高く、「色々な会社で経験を積んでいきたいから」「ライフステージに合わせて働き方を変えたいから」と続きます。一方、女性は「ライフステージ」が最も高く、「給料が低いから」「色々な会社で経験を積みたい」の順に続きます。

「ライフステージに合わせた働き方」は男女ともに上位にあるものの、女性が男性を18.4pt上回り、大きなギャップがあります。結婚や出産をしても働き続ける女性が多くなり、ライフステージに合わせた柔軟な働き方ができるかどうかが、勤続年数を延ばす鍵になるかもしれません。

今の会社で長く働きたくない理由は「ライフステージに合わせて働き方を変えたいから」が最多

今の会社で仕事を続けた場合の5年後の見通しは、「年収が上がっている」が半数を割る

今の会社で仕事を続けた場合の5年後の見通しを聞いたところ、全体では「年収が上がっている」が最も高く、「気軽に雑談できるような先輩/同僚/後輩が増えている」「貯金ができている」と続きました。

しかし、「年収が上がっている」はスコアが最も高いにもかかわらず5割以下に留まります。また、「貯金ができている」「趣味やプライベート・衣食住にかけられるお金が増えている」など、給与に対するポジティブな項目はいずれも半数以下で、給料に対して明るい展望を持っていない人が多い様子です。

「辞めたい」と思ったことがある退職検討経験者は、「目標とする上司/先輩がいる」「年収が上がっている」など、人間関係と給与面の両方で期待感が低いことが分かります。退職検討経験者は、人間関係に対する不満は高くないものの、目指したい理想の上司・先輩像がないことや、給与に期待できないことが退職意向に影響していると考えられます。

今の会社でずっと仕事を続けたら、5年後どんな人生を送っていると思いますか?

新入社員の直近の月収は、22万円が満足度の分岐点

ここまで何度か出てきた給与に対する切実な希望について、実際いくらくらいの給与を望ましいと思っているのでしょうか。

新入社員の直近の月収を満足度別にみると、「満足・計」では22万〜27万円台、「不満・計」では16万〜21万円台が全体よりやや高く、不満が満足を逆転する給与満足度の分岐点は21万〜22万円の間であることが分かります。初任給による離職防止を考えるならば、「22万円以上」は一つの目安になるかもしれません。

また、これまでの給与に関する満足や納得度合いの設問と直近の月収を付け合わせて見ると、「今の仕事の働きが報酬と見合っている」と回答した人は25万〜27万円のレンジで高めの傾向。対照的に、「今の会社で長く働かないのは給料が低いから」と回答した人は、16万〜18万円台のレンジで高めの傾向となりました。月収18万円台以下は、退職意向に影響しやすい金額帯と言えるのかもしれません。

新入社員の直近の月収は、22万円が満足度の分岐点

以上、2024年度に入社した新入社員の満足点や「辞めたい」と感じた理由を見てきました。人手不足のなかで獲得した大事な新入社員に長く働いてもらうカギは「給与」と「仕事内容のマッチ度」と。いずれも配属現場ではカバーが難しい点もあるなかで、上司や先輩の存在が「辞めない」理由になっていた点は注目すべきポイントです。

とはいえ、上司や先輩はどのようなコミュニケーションをしていけばいいのか。ここで留意しておきたいのは、今回の調査のなかで「配属ガチャ」について、「思い通りの配属ではなくてもまずはがんばってみる」「何かしらためになる経験があるはず」と前向きにがんばろうとする新入社員の声も少なからずあったこと。

また、例え希望の配属先であっても初めから活躍できる新入社員は少なく、慣れないことばかりで自信を喪失したり、まだ仕事の全体像が見えづらかったりするなかで「目の前の業務がだれの役に立っているのか」「続けることで、自分にどんなスキルが身に付き、将来どんな仕事ができるようになるのか」という手ごたえを得られず、結果「向いていない」「合わない」と見切りをつけてしまうケースもあるということです。

新入社員が仕事に慣れ、ある程度独り立ちし裁量を得て充実感を得られるまでの間は、上司や先輩がフィードバックやコミュニケーションを通して成長している点に気付かせ、「どんな意図でその業務を任せているのか」「同じ業務を経験した先輩は、どのようなキャリアにつなげているのか」などを伝えサポートする。そして、企業としては、安心して働き続けられるだけの給与や当人の適性や意向に寄り添う姿勢が見える制度を用意していくことが、新入社員の定着には重要なのかもしれません。

マイナビ転職 編集部

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【調査概要】マイナビ転職『新入社員の意識調査(2024)』
調査期間:2024年6月7日(金)~6月9日(日)
調査方法:2024年卒の新入社員を対象にWEB調査を実施
有効回答数:800名(内訳:22歳~23歳の男性400名、女性400名)
※調査結果は、端数四捨五入の関係で合計数値と合わない場合があります
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【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社マイナビ
転職情報事業本部 ブランド推進課
Email:mt-brand@mynavi.jp

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