「はっきり言って、ジジイの趣味ですよね。ジジイがジジイと話して、何が楽しいんですか?」
人に趣味の説明をするのは、とても難しい。なぜなら、「趣味」自体が曖昧な言葉で、本人も何が楽しいか分かっていないからだ。
そして、ここに2つの誤解がある。
最近は無線で誰とも話さないし、そして、まれに若者や女性もいる。ごくまれに。
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これまで会場だった「国際展示場」から、「有明GYM-EX」に移して行われたハムフェアは、なぜか混雑していた。
主催者であるJARL(日本アマチュア無線連盟)の発表によれば、昨年より2000人多い45000人の来場があったらしい。2002年から2008年までは、30000人も来ない年があったし、アマチュア無線人口が減る一方なのに、来場者は増加しているのだ。
今年は特に、無線機の新製品発表があったせいかもしれない。
10時20分。新製品発表に合わせて会場に到着したが、チケットを買って入場出来たのは、30分も行列に並んだ後だった。
それにしても・・・。アマチュア無線って、こんなに流行ってるんだっけ?
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「ご趣味は何ですか?」
この質問には、大きな問題がある。
なぜなら、人それぞれの「趣味像」が、あまりにも違いすぎるからだ。
釣り。山歩き。オーディオ。
確かに、それは趣味かもしれない。
読書、音楽鑑賞、家庭菜園。
履歴書に書く、無難な3大趣味と言える。
休日に寝転んで一杯やりながら野球を見ること、ですかねぇ。
キミぃ、ですかねぇとは、なにごとだ。
下町をブラブラすること、ですかねぇ。
節約、ですかねぇ。
発泡酒じゃなく、たまに本当のビールを飲むこと、ですかねぇ。
もちろん、辞書に書いてある通り、「仕事でなく楽しみで行うこと」が趣味なら、何でも趣味になり得る。だが‥。
愛する夫です。
愛妻です。
愛犬です。
もはや理解不能である。「好き」を極めると、趣味になってしまうんだろうか。
結局のところ、「趣味」は、「好き」の延長にある、もわもわっとした概念のようなものだと言える。趣味なんだから、そう難しく考えなさんな、そんなテキトーな気配も漂っている。
趣味なんて、各々がそれぞれ楽しめばいいのだ。人に分かってもらう必要なんて、さらさらない。サバゲーが好きな人はサバゲーを、南京玉すだれが好きな人は南京玉すだれをするがよろしい。
ハムフェアの会場も、知らない人が見たら、よく言えば「リサイクル」会場、悪く言えば「粗大ゴミ」の売買会場かと思うだろう。
だが、多くの人は子供のように喜々として、それらを時間をかけて吟味し、買って帰るのだ。
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総務省は、令和3年11月19日付で、「
総務省のアマチュア無線に関する取組について」(総合通信基盤局電波部)という資料をまとめている。何の会議で使ったものか分からないが、その中で「アマチュア無線を活用したワイヤレス人材やIoT人材の育成のために、制度・環境を整える」と書いている。
40年前、アマチュア無線は青少年の興味をかきたてた。そのまま理工系の学校に進み、電子立国日本を支えた人も多いだろう。だが、バブル期以降、電子立国の凋落と軌を一にするかのように、日本のアマチュア無線人口は減少の一途をたどる。アメリカや中国は増加しているというのに。
「私をスキーに連れてって」を見て無線を始めた人が当時20歳なら、今はもう55歳。JARLの平均年齢は65歳ぐらいだから、あと20年もしたら、アマチュア無線なんかやっている人は、誰もいないかもしれない。
といった悲観論と裏腹に、このフェスティバルの盛況ぶりは、どうしたことだろうか。とても絶滅危惧種の催しものとは思えないではないか。
「コロナでインドア系の趣味が復活した」ことに加え、数年前に登場した「ディジタルモード」がゲームチェンジャーとなったことも活気づいた要因のひとつかもしれない。貧弱な設備で、これまで考えられなかった遠方と交信ができるようになったからだ。
とはいえ、パソコンと無線機の設定は、結構面倒だ。それなのに、ご年配の方も多くディジタルモードに参加されている。私が交信した最高齢は、90歳。高齢になっても衰えない好奇心に、感服するばかりだ。
会場に、若者と女性の姿こそ少なかったが、ジャンク品を見て回る多くの人たちは、年寄りの姿かたちをした少年だった。
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結局、宇都宮から来た友人と3時間会場を歩き、夕方、居酒屋でビールやハイボールを痛飲した後、帰宅。
酔いすぎて、この日はついぞ無線機に電源を入れることができなかった。