今回はMad Cobraのアルバム

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「Goldmine」です。

Mad CobraMad Cobra(別名:Cobra、本名:Ewart Everton Brown)は、
90年代から2000年代に活躍したジャマイカのダンスホール・
ディージェイです。

90年代のラガの時代に「バッド・ボーイ・ディージェイの代表格」と
して活躍した人で、世界的な大ヒットをした「Flex」などの楽曲でよく
知られています。

Mad Cobra - Flex


ネットのDiscogsによると、共演盤を含めて23枚ぐらいのアルバムと、
519枚ぐらいのシングル盤をリリースしています。

Mad Cobra – Wikipedia

アーティスト特集 Mad Cobra (マッド・コブラ)

今回のアルバムは1993年にUSのReal Authentic Soundというレーベル
からリリースされた彼のソロ・アルバムです。

プロデュースはPrince JazzboとDelroy 'Spiderman' ThompsonとMad Cobra
で、バックをWinston WrightやTony Peko、Prince Jazzboなどが務めた
アルバムで、表題曲の「Goldmine」や「Acid」、「Punaany」リディムの
「Tease Dem」、「Fresh」、「Back Out With It」リディムの「Woman In
Love」など、デジタルなラガのリズムに乗せたMad Cobraのちょっと
アナーキーなトーストが楽しめる好内容のアルバムとなっています。

手に入れたのはReal Authentic SoundからリリースされたLPの中古盤
でした。

ちなみに2024年にレゲエ・リイシュー・レーベル333からこのアルバム
のダブのみを集めた「Goldmine (Dubbed Out By Prince Jazzbo)」が
リイシューされていますが、これは今回のアルバムのCDに歌9曲と
そのダブ8曲が収められていたもののダブのみをLPでリイシューした
ものです。
LPの方は歌の全9曲のみで、8曲のダブ・ヴァージョンは付属して
いません。
ただCDのジャケットをLPにそのまま流用したのか、丸く飾り文字で
「Bonus Dub 8 Tracks」という文字が入っています。
そういう雑さもいかにもジャマイカといった感じかもしれません。

Side 1が5曲、Side 2が4曲の全9曲。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Musicians: Winston Wright, Tony Peko, Prince Jazzbo, Mojah
Recorded at Dynamics and Tuff Gong by Mikey Riley & Gary Sutherland
Mixed at I & I Studio by Jr. Chemis & Prince Jazzbo
Produced by Linvall Carter, Prince Jazzbo (1-5) D. Thompson, Cobra (6-9) & Spiderman
Photoy by Lee Abel
Art by Marcus Burrowes

となっています。

ミュージシャンはWinston WrightとTony Peko、Prince Jazzbo、Mojah
となっています。
レコーディングはジャマイカのキングストンにあるDynamics Studioと
Tuff Gong Studioで行われ、レコーディング・エンジニアはMikey Riley
とGary Sutherlandが担当しています。
ミックスはカルフォルニアのロサンゼルスにあるI & I Studioで行われ、
ミックス・エンジニアはJr. ChemisとPrince Jazzboが担当しています。
プロデュースは多くの人が担当しているように読めますが、1~5曲目
までがPrince Jazzbo(本名:Linvall Carter)で、残りの6~9曲目
がMad Cobraの叔父のDelroy 'Spiderman' ThompsonとCobra(Mad Cobra)
のようです。
Mad CobraはTuff Gong Studioでエンジニアをしていたこの叔父の影響で
ミュージシャンを志したんだそうです。

写真はLee Abelで、ジャケット・デザインはMarcus Burrowesが担当して
います。
書いたようにダブのヴァージョンは付属していませんが、ジャケットに
「Bonus Dub 8 Tracks」という文字が入っています。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、この時代らしいデジタル・ダンスホール・
レゲエ=ラガのリズムに乗せたMad Cobraのバッド・ボーイらしい
ちょっとアナーキーなフローがとても魅力的なアルバムで、内容は悪く
ないと思います。

このMad Cobraですが彼の叔父さんがTuff Gong Studioのエンジニア
で、その影響から早い時期からMighty RulerやStereo Oneといった
サウンドシステムで修業を積んだ人なんだそうです。
そうした努力もあって92年頃には「Flex」を大ヒットさせ、世界的
にも人気のバッド・ボーイ・ディージェイとなって行ったんですね。
その「Flex」は92年のアルバム「Hard To Wet, Easy To Dry」に
収められていますが、その翌年にリリースされたのが今回のアルバム
という事になります。

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Mad Cobra – Hard To Wet, Easy To Dry (1992)

いわばMad Cobraがバッド・ボーイ・ディージェイとしてもっとも勢い
があり人気がある時代にリリースされたアルバムのひとつが、この
アルバムという事になります。

実際に聴いた印象ですが、バックの演奏が少しラフな印象で、特に
叔父のDelroy 'Spiderman' ThompsonとMad Cobraのプロデュースした
Side 2の4曲のラフさが際立ちます。
このラフさはバックの演奏がこの時代の多くのアルバムをプロデュース
したSteely & ClevieやSly & Robbieではなく、キーボード奏者の
Winston WrightやTony Peko、Prince Jazzbo、Mojahといったバック陣
だった事も影響しているのかもしれませんが、あえてラフにする事で
サウンド・システムで行われる現場の臨場感を演出したとみる方が自然
なのかもしれません。
そのあえてラフな臨場感がMad Cobraという人の粗野なバッド・ボーイ・
ディージェイの魅力を際立たせているんですね。
そのあたりはプロデュースしたPrince JazzboやDelroy 'Spiderman'
Thompson、Mad Cobraのセンスが光ります。

↑にも書きましたがこのアルバムのCDに収められていたダブ8曲が
2024年にレゲエ・リイシュー・レーベル333から「Goldmine
(Dubbed Out By Prince Jazzbo)」というタイトルでリイシューされて
います。
おそらくSteely & ClevieやSly & Robbieのような洗練された音楽
センスではなく、ちょっとラフな音作りが面白かったのでしょうか?
しかも歌の方ではなく、ダブというチョイスも気になるところ。
この333というレーベルは独特のセンスのリイシューをしているので、
ちょっと注目です。

ジャマイカのサウンド・システムで培われたリアルなバッド・ボーイ・
ディージェイとしての魅力を発揮した、Mad Cobraのフローが楽しめる
なかなか面白いアルバムだと思います。

Side 1の1曲目は「Acid」です。
デジタル感のあるドラミングに、ホーンとベース音、ピアノのメロディ、
伸びやかなMad Cobraのトーストがイイ感じ。

Mad Cobra - Acid (Goldmine LP 1993)


2曲目は表題曲の「Goldmine」です。
Mad Cobraの奇声を交えたイントロから、デジタル感のあるドラミング
に、ベース音と甲高い音のキーボードのメロディ、流れるように滑らか
なMad Cobraらしいフローがイイ感じ。

Goldmine


3曲目は「Fulfillment」です。
こちらもMad Cobraと思われる奇声から、デジタル感のあるドラミング
に、キーボードの軽快なメロディ、Mad Cobraの力強いトーストが
イイ感じ。

Fulfillment


4曲目は「Wicked In Bed」です。
心地良いリズミカルなドラミングに、キーボードのメロディ、ハリの
あるMad Cobraのフローがイイ感じ。

Wicked in Bed


5曲目は「Tease Dem」です。
リディムはAdmiral Baileyの「Punaany」。
心地良いドラミングに、ベース音とピアノ音のメロディ、流れるように
滑らかなMad Cobraの力強いフローがイイ感じ。

Tease Dem


リズム特集 Punanny (プナニー)

Side 2の1曲目は「Fresh」です。
「Fresh! Fresh!」の掛け声から、軽快なドラミングに、ピアノ音の
メロディ、Mad Cobraの話芸を感じるトーストがイイ感じ。

Fresh


2曲目は「Bun」です。
デジタル感のあるドラミングに、刻むようなピアノ音に甲高いキーボード
のメロディ、語るようなMad Cobraのフローがイイ感じ。

Mad Cobra - Bun


3曲目は「Woman In Love」です。
リディムはThe Wailing Soulsの「Back Out With It」。
Mad Cobraの掛け声から、ベースとピアノ音のメロディ、伸びやかな女性
のヴォーカル、Mad Cobraのトーストがイイ感じ。

Woman in Love


4曲目は「We Vex」です。
マーチング風のミリタントなドラミングに、ベース音とポンポン音の
メロディ、伸びやかなのトーストがイイ感じ。

We Vex


ざっと追いかけて来ましたが、ラフなミックスがかえって魅力的な
アルバムで、内容は悪くないと思います。

このMad Cobraですが今も活動を継続しており、ネットのYouTubeには
そのライヴの模様などが多くアップされています。
彼の音楽への愛やバッド・ボーイとしての魅力は、今も失われては
いないんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


Reggae Sumfest 2017 - Cobra - Flex (Part 6 of 8)


TOKYO REGGAE NIGHT 199X MAD COBRA


Mad Cobra - LEGACY


○アーティスト: Mad Cobra
○アルバム: Goldmine
○レーベル: Real Authentic Sound
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1993

○Mad Cobra 「Goldmine」曲目
Side 1
1. Acid
2. Goldmine
3. Fulfillment
4. Wicked In Bed
5. Tease Dem
Side 2
1. Fresh
2. Bun
3. Woman In Love
4. We Vex

●今までアップしたMad Cobra関連の記事
〇Mad Cobra「Hard To Wet, Easy To Dry」