今回はBnxnのアルバム

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「Sincerely, Benson」です。

まず初めに書いておきますが、このアルバムは一般的にはアフロビーツ
やアフロ・フュージョンなどに分類される事が多いアルバムです。
ただサウンド的にはレゲエのダンスホール・レゲエなどにも近いもの
があり、ここではレゲエを聴く者の視点からこのアルバムについて
書いています。

Bnxn(ベンソン、本名、1997年5月14日ナイジェリアのラゴス
生まれ)はナイジェリアのシンガー・ソングライターでプロデューサー
でもある人です。

アフロビーツのBurna Boyに憧れてミュージシャンになった彼は、
最初はBujuという名前で活動し、2021年に「Sorry I'm Late」と
いうアルバムをリリースしました。
しかしBuju Bantonとの混同を避ける為、22年に現在のBnxnに改名
しました。
同じ22年にPheelzとの共演曲「Finesse」がUKの公式シングル・
チャートで52位、Jae5との共演曲「Propeller」が38位と成果を
上げ、その独特の鼻にかかったような歌声が注目を浴びます。

Pheelz - Finesse (ft. BNXN) [Official Music Video]


JAE5 - Propeller ft. Dave & BNXN (Official Video)


さらにその22年にはEP盤「Bad Since '97」をリリースし、23年
には今回のアルバム「Sincerely, Benson」、24年にはRugerとの7曲
入りの共演盤「RnB」をリリースしています。

残念ながらネットのDiscogsにはこのアーティストの記録がありません
が、今やアフロビーツを代表するアーティストとなり、活躍している
のがこのBnxnという人です。

Bnxn - Wikipedia

今回のアルバムは2023年にUSのEmpireというレーベルからリリース
された、Bnxnの実質的なデビュー・アルバムです。

ヒットした「PRAY」や「Sweet Tea (Aduke)」、Kizz Daniel & Seyi Vibez
との共演曲「GWAGWALADA」、さらにはHeadie Oneとの共演曲
「Maximum Damage」、2Babaとの共演曲「Regret」、Popcaanとの共演曲
「Final Answer」など、アフロビーツらしいリズムに乗せたBnxnの
ちょっと鼻にかかったヴォーカルがとても魅力的な好内容のアルバムと
なっています。

手に入れたのはEmpireからリリースされたCD(新盤)でした。

Sincerely, Benson - Wikipedia

全15曲で収録時間は43分52秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Executive Producers:
Daniel Benson 'Bnxn', Tomide 'Bayarn' Abifade, Shama Joseph

Producers:
Denzl, Jofis, Malik Bawa, Jaes, Atg, Sarz, Sakpase, Davinchiii, Leriq,
Magicsticks, Tempoe, Guiltybeatz, Blaisebearts, Dro, Ljay Currie, Stone

Creative Direction:
Sore Adebisi, Seunrankingg, Emmaniel 'Manny' Oguazu, Ted, Prodigeezy,
Blessed Akinlabi, Scoop, Sinformas

Mixing and Mastering:
All records mixed by Leanord 'Dro' Hidalgo
Exept Pray by Milla

となっています。

(裏ジャケに書かれた英文の文字はかなり小さな文字で、スキャンして
拡大して写しましたが、もしかしたら間違えて写した文字があるかも
しれません。)

エグゼクティブ・プロデューサーはDaniel Benson 'Bnxn'と
Tomide 'Bayarn' Abifade、Shama Josephが担当しています。

プロデューサーはDenzlとJofis、Malik Bawa、Jaes、Atg、Sarz、Sakpase、
Davinchiii、Leriq、Magicsticks、Tempoe、Guiltybeatz、Blaisebearts、
Dro、Ljay Currie、Stoneと多くの人が参加しています。

クリエイティブ・ディレクション(制作指揮?)はSore Adebisi、
Seunrankingg、Emmaniel 'Manny' Oguazu、Ted、Prodigeezy、
Blessed Akinlabi、Scoop、Sinformasという名前があります。

ミキシングとマスタリングは11曲目「PRAY」がMilla、それ以外の全て
の曲はLeanord 'Dro' Hidalgoが担当しています。

演奏者やデザインの名前を見つける事は出来ませんでした。

ジャケットは2つ折りの紙ジャケットで、表ジャケは石化したBnxnと
思われる人物のCG画で、裏ジャケは青い花畑の上に曲目が書かれた
羊皮紙が乗っている、こちらもCGで書かれたと思われる画像です。

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裏ジャケ

さて今回のアルバムですが、Bnxnの抜けるような歌声がとても魅力的
で、現在のアフロビーツの勢いを感じさせる、とても好内容のアルバム
だと思います

このBnxnという人ですがアフロビーツのシンガーBurna Boyに触発され
てシンガーになったという人ですが、その歌声はまるでヴォイス・
チェンジャーで声を変えたような、独特の鼻に抜けるような強く印象に
残る個性的な歌声なんですね。
アフロビーツのシンガーはBurna Boyをはじめとして、こうした強く
耳に残る個性的な歌声の人が多いですが、特にこの人は際立って特徴的
な歌声の持ち主です。

彼のシンガーのスタートはネットのWikipediaを見る限りでは21年頃
で、その時彼は24歳頃とかなり遅いスタートなんですね。
ただもしかしたらその前に長い下積み時代があったのかもしれません。
当時彼はBujuと名乗っていて、ネットのYouTubeで「Buju Afrobeats」
で検索すると、彼のBuju時代の楽曲が多く出て来ます。

Buju ft. Burna Boy - Lenu Remix (Official Video)


Timaya - Cold Outside feat. Buju (Official Video)


Buju - Outside (Official Video)


Savage & Buju - Confident (Official Music Video)


Buju - Never Stopped (Official Video)


実際にそれらの映像を観ると、すでにBurna Boyと共演もしていて、
さらにかなりお金をかけて制作されているようなので、すでにこの時代
には彼はナイジェリアではかなりのスターだったようです。

そしてBuju Bantonとの混同を避ける為に22年に改名し、現在のBnxn
という名前で活動し、22年にはEP盤「Bad Since '97」をリリース
し、23年には今回のアルバム「Sincerely, Benson」、24年には
以前に確執があったと思われていたRugerとの7曲入りの共演盤「RnB」
をリリースしています。
今アフロビーツの中でももっとも勢いのあるシンガーのひとりがこの
Bnxnなんですね。

ネットのWikipediaには今回のアルバムについて書かれた文章もあり、
その記述によるとこのアルバムはEP盤「Bad Since '97」の続編で、
ビルボード・ワールド・アルバム・チャートで11位にランク・イン
したアルバムなんだそうです。
実質的な世界へのデビュー盤で、アフロビーツのトップ・アーティスト
の地位を不動のものとしたアルバムという事のようです。

アルバムの内容的にはアフロビートやアフロ・フュージョン、
アマピアノ、ダンスホール・レゲエ、ゴスペルなどの音楽がミックス
されたサウンドという事が書かれていました。
ちなみにアマピアノ(Amapiano)とは2010年代半ばに南アフリカ
発祥のハウス・ミュージックのサブ・ジャンルとの事です。

Amapiano - Wikipedia

アフリカの様々な音楽とジャマイカのダンスホール・レゲエなどが
ミックスされて誕生したのがアフロビーツで、2000年代以降に
ナイジェリアやガーナなどの西アフリカで人気となった音楽のよう
です。

アフロビーツ(Afrobeats)を知るための10曲

ちなみにアフロビーツという呼び名は「アフロビート」の創始者である
Fela Kutiの子孫が嫌っているという事で、アフロ・フュージョンや
ナイジェリアン・ポップなどと呼ばれる事があるようです。
ちょっと紛らわしいですがアフロビートとアフロビーツは別の音楽なん
ですね。

アフロビート

このアフロビーツに影響を与えたと思われるのが、2000年代後半
から活動し、ミュータント・レゲエを標榜するダンス・ミュージックの
プロジェクトMajor Lazerで、Burna BoyやMr Eaziなどのアーティスト
を取り上げた事で、世界的にアーティストの知名度が上がったんですね。
元々はダンスホール・レゲエを標榜してDiploとSwitchの2人のプロデュサー
で始まったこのプロジェクトですが、Switchの脱退後はアフリカの
アーティストを多く取り上げて、サウンドも基本はEDM
(エレクトリック・ダンス・ミュージック)ですが、かなりアフロビーツ
系に方向転換をしているところもあります。
そのあたりにDiploという人の先見の明が感じられます。

Major Lazer - All My Life (feat. Burna Boy) [Official Music Video]


Rudimental & Major Lazer - Let Me Live (feat. Anne-Marie & Mr. Eazi) (Official Music Video)


そうしてダンスホール・レゲエやEDMなど様々な要素を取り入れて
発展して来たのが、アフロビーツという音楽のようです。
そのアフロビーツに光が当たり出した頃に活躍したのがBurna Boyで、
2020年にアルバム「Twice As Tall」をリリースし、第63回の
グラミー賞で最優秀ワールド・ミュージック・アルバムを受賞して
います。
このあたりでアフロビーツはようやく世界の音楽として認められたと
いう事になるのかもしれません。

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Burna Boy - Twice As Tall (2020)

ちょっと話が長くなってしまいましたが、そうしてBurna Boyに触発
されて出て来た次の世代が、このBnxnという事になるようです。
初めにも書きましたが、Bnxnの生み出すまるでヴォイス・チェンジャー
でも使っているような独特の歌声は衝撃的で、その強烈なグルーヴ感に
かなりヤラレてしまいます。
特に11曲目の「PRAY」はこのアルバムの中でも白眉の出来で、7曲目
の「Sweet Tea (Aduke)」や5曲目のKizz Daniel & Seyi Vibezとの
共演曲「GWAGWALADA」と並んで、彼の現時点での代表曲と言える作品
のようです。
他にレゲエのPopcaanや、同じアフロビーツの2BabaやKizz Danielなど、
多彩な共演が魅力のアルバムとなっています。

1曲目は「My Life」です。
ドアのノックオンとBnxnに声を掛ける男性のエフェクトから、コツコツ
としたドラミングに、ユッタリとしたキーボードとギターのメロディ、
語るようなBnxnのシング・ジェイがイイ感じ。

Bnxn - My Life (Official Visualizer)


2曲目は「Best Of Me」です。
キーボードのベース音のメロディに、コツコツとしたドラミング、
ソフトなBnxnのシング・ジェイがイイ感じ。

Bnxn - Best Of Me (Official Visualizer)


3曲目はHeadie Oneとの共演曲「Maximum Damage」です。
ちょっと哀し気なキーボードのメロディに、コツコツとしたドラミング、
ソフトなBnxnのシング・ジェイ、Headie Oneの切り込んで来るような
ラップ・スタイルのトーストがイイ感じ。

Bnxn - Maximum Damage (Official Video) (feat. Headie One)


4曲目は「Mukulu」です。
コツコツとしたドラミングに、キーボードとホーン音の軽快なメロディ、
ノリの良いBnxnのちょっと鼻にかかったようなヴォーカルがイイ感じ。

Bnxn - Mukulu (Official Visualizer)


5曲目はKizz Daniel & Seyi Vibezとの共演曲「GWAGWALADA」です。
キーボードのリリカルなメロディから、Kizz Danielのトースト、
リズミカルなメロディに乗せた、Bnxnの伸びやかで軽快なヴォーカル、
Seyi Vibezのトースト…。

BNXN fka Buju, Kizz Daniel & Seyi Vibez - GWAGWALADA (Official Video)


6曲目は「Pidgin & English」です。
ギターのリリカルなメロディに乗せたヴォーカルに、後を追うように
入って来る良いBnxnのシング・ジェイ…。

Bnxn - Pidgin & English (Official Visualizer)


7曲目は「Sweet Tea (Aduke)」です。
抒情的な笛の音色に、コツコツとしたドラミング、キーボードのメロディ、
Bnxnの抜けるような力の抜けたヴォーカルがイイ感じ。

Bnxn - Sweet Tea (Aduke) (Official Audio)


8曲目はTavesとの共演曲「Realize」です。
ユッタリとした情感のあるキーボードのメロディに、伸びやかなTaves
のヴォーカル、Bnxnのユッタリとしたシング・ジェイがイイ感じ。

Bnxn - Realize (Official Visualizer) (feat. taves)


9曲目は「Party Don't Stop」です。
こもったようなキーボードのメロディに、歯切れの良いドラミング、
Bnxnの表情豊かなヴォーカルがイイ感じの曲です。

Bnxn - Party Don't Stop (Official Visualizer)


10曲目は「Right Energy」です。
ギターとキーボードのスローなオープニングから、歯切れの良い
ドラミング、Bnxnの語るようなシング・ジェイがイイ感じ。

Bnxn - Right Energy (Official Visualizer)


11曲目は「PRAY」です。
歯切れの良いドラミングに、漂うようなキーボードとヴァイオリンの
メロディ、語るようなBnxnのシング・ジェイがイイ感じ。

BNXN fka Buju - PRAY (Official Video)


12曲目は「Say My Name」です。
コツコツとしたドラミングに、キーボードのアーバンなメロディ、
語るようなBnxnの伸びやかなシング・ジェイがイイ感じ。

Bnxn - Say My Name (Official Video)


13曲目は「Toxic」です。
女性アナウンサーと思われる語りから、コツコツとしたドラミング、
浮遊感のあるキーボードのメロディ、ユッタリと語るようなBnxnの
スウィートなシング・ジェイがイイ感じ。

Toxic


14曲目は2Babaとの共演曲「Regret」です。
ギターのリリカルなメロディから、牧歌的な笛の音色と漂うような
キーボードのメロディ、ユックリと語りかけるようなBnxnのソフトな
シング・ジェイ、2Babaのトースト…。

Bnxn - Regret (Official Visualizer) (feat. 2Baba)


15曲目はPopcaanとの共演曲「Final Answer」です。
印象的なギターと漂うようなキーボードのメロディ、コツコツとした
ドラミング、スウィートなBnxnのシング・ジェイ、Popcaanのフローが
イイ感じ。

Bnxn - Final Answer (Official Visualizer) (feat. Popcaan)


ざっと追いかけて来ましたが、Bnxnの魅力が目一杯に詰め込まれた
アルバムで、その独特なグルーヴ感のあるヴォーカルはとても素晴らしく
傑出したものがあります。
普段レゲエばかり聴いている私でもおススメしたくなる、そんな好内容
のアルバムです。

このアルバムがあまりに良かったのでその後いろいろなアフロビーツの
曲を聴いてみたり、アルバムを集めてみたりしましたが、少なくとも
聴いたアーティストの中では、このBnxnとBurna Boyが頭ひとつ飛び抜け
た存在感のあるアーティストだと思いました。
YouTubeのアフロビーツのアーティストの映像などを見るとそのコンセプト
はほぼダンスホール・レゲエと言えるほど近いものがありますが、特に
BnxnとBurna Boyの動向にはこれからも目が離せません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


Ruger, Bnxn - POE (Official Video)


BNXN - Sweet Tea | ENERGY | Boiler Room: Lagos


BNXN & Mayorkun - Ohema | Coke Studio


Bnxn - Phenomena (Official Lyric Video)


○アーティスト: Bnxn
○アルバム: Sincerely, Benson
○レーベル: Empire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2023

○Bnxn 「Sincerely, Benson」曲目
1. My Life
2. Best Of Me
3. Maximum Damage - feat. Headie One
4. Mukulu
5. GWAGWALADA - feat. Kizz Daniel & Seyi Vibez
6. Pidgin & English
7. Sweet Tea (Aduke)
8. Realize - feat. Taves
9. Party Don't Stop
10. Right Energy
11. PRAY
12. Say My Name
13. Toxic
14. Regret - feat. 2Baba
15. Final Answer - feat. Popcaan