こんにちは、PdMの稲垣です。「SmartHRのPdM」連載企画の第2弾、今回はSmartHR本体のPdM兼POである塚本真紀子さんのインタビュー記事をお届けします。
PdMとして、組織の一員として、母として。様々な角度からの塚本さんの思いとともに、一緒に働くチームメンバーからの声もご紹介します。
塚本真紀子
エンジニア、経理、デザイナー、ディレクターを経てPdMとなり、2019年1月に3人目のPdMとしてSmartHRに入社。
現在はSmartHR本体のPdM兼POを担う。
どんな規模の企業にも「人事データベース」として役立つSmartHRになりたい
稲垣:まず、今担当しているプロダクトを少し紹介していただけますか?
塚本:SmartHRは、人事データベースの役割を持つ「SmartHR本体」と、そのデータを活用するアプリケーション群である「プラスアプリ」で構成されていて、私は本体のPdM兼POをしています。本体には、入退社をはじめとする手続き機能や電子申請、申請・承認機能など、人事データベースに必要な様々な機能が備わっています。単体での機能はもちろん、プラスアプリが人事データを活用するためのデータベースの役割も持つ、SmartHRの肝となるプロダクトです。
稲垣:SmartHRの肝を育てているんですね。今SmartHR本体が向き合っている課題は何でしょうか?
塚本:企業の規模を問わず、中小企業からエンタープライズ企業まで幅広く人事データベースとして使ってもらえるようなプロダクトになることです。現在はエンタープライズ企業の場合、他システムを人事データベースにし、SmartHRは従業員からの情報収集に特化して使うケースも少なくないですよね。でもやっぱり、「SmartHR1つで人事データベースとして機能し、どんな人事労務業務も扱える」ことを目指しています。そのためにはデータを正しく収集し、正確に管理することが必要不可欠ですが、現状のSmartHRではまだ力不足な点が多々あります。機能ごとの使いやすさの改善はもちろん、データ管理の観点でも機能拡充をしていきたいと考えています。
人事データベースに絶対に必要な「正しく、正確にデータを管理できる」という安心感を持ち、エンタープライズ企業にも胸を張って「人事データベースとして使ってほしい」と言えるようなプロダクトにしていきたいですね。
噛めば噛むほど味わい深い、既存プロダクトのPdM業
稲垣:新規プロダクトの開発に関わりたい、と思うことはありますか?
塚本:ワクワク感で言えば、新規の方が大きいかもしれません。でも今はそれは全く関係ない。「SmartHRを正しい状態にしていきたい」という気持ちが大きくて、そのために既存のプロダクトに手を入れることが必要ならそれをやっていきたい、という考えでやっています。
まあ正直実装のことを考えると、機能同士の絡みが複雑でめっちゃ大変だよね、っていう気持ちにもなりますけど(笑)。自分が企画した機能を実際に使ってくれたユーザーさんからの声で、価値を届けられたんだなと思えたときは、本当に嬉しいです。
一度「プラスアプリ(新規プロダクト)やりたかったりする?」と芹澤さん(CTO)に聞かれたこともあるけど、むしろ今は「SmartHR本体を守りたい」気持ちの方が強いかもしれないですね。
稲垣:圧倒的な母性を感じます…!
塚本:新規プロダクトを立ち上げる方が、やったことの結果が数字的にもわかりやすいと思うんです。それに対して、根幹のプロダクトの機能改善ってすぐに結果がわかることの方が少ない。そういう意味で、最初の頃は少し羨ましいと思っていたかもしれません。でも、プロダクトや向き合うべき人事労務業務に入り込むにつれて、このわけのわからないものとどう付き合っていくかを楽しく思えるようになった気がします。噛めば噛むほど味が出てくるのが既存プロダクトとの付き合いだなって思っています。
何が起こっても、この組織なら大丈夫。組織の一員として成長したい
稲垣:塚本さんは、SmartHRに入る以前の経歴がとても幅広いですよね。自社プロダクトの開発に初めて関わったのはいつ頃ですか?
塚本:前々職で、チャレンジプロジェクト的な自社プロダクトに携わったのが最初の経験です。ごく少人数だったため、ディレクターというよりはコーディング・デザイン・運用など幅広く関わっていました。当時はまだ子どもが小さかったので通勤しやすいことが会社選びの第一優先で、その中でできること、という観点で選んだんですよね。でも、「これからは自社プロダクトしかやらないぞ!」と思うくらい面白くてやりがいがありました。
稲垣:それは大きなきっかけでしたね。自社プロダクトの中でもいろんな選択肢がある中で、SmartHRに転職したのはなぜだったんでしょう。
塚本:経営陣の考え方がとても好きで、「ここなら何か問題が起きても頑張りたいと思える組織だ」と思ったんです。事業って、うまくいくこともあればいかないこともある。でも、組織が好きなら、事業が少しうまくいかなくてもここから頑張ろうって思えると思うんです。例えば「よくわからないうちに決まっていた」とか「良いと思えないことを理由もわからないままにやらなければならない」みたいに納得感がない状況だと、正直病みます(笑)。「みんなで成果を出すためには透明性が必要だ」という考え方がとても重要だと思っていて、自分が大切にしたいことを会社も大切にしてくれていることが嬉しいと思いました。
稲垣:主語は「私」ではなく「みんな」なんですね。
塚本:そうかもしれません。昔は自分がいかに成長できるかを考えていたけど、1人でできることってたかが知れていますよね。良いサービスを世に出していくためにはいろんな人が関わる必要がある、と思えば思うほど、組織の一員として成長したいしみんなで成長する必要があるという思いが強くなってきました。人が増え続けて難しさが増していっても、みんなの納得感はやっぱり大事にしたいんです。PdMは業務上、わりと早い段階で情報を得ることが多いポジションなので、ちゃんと全部、開発に携わるみんなに伝えていきたいと思っています。
「全員超優秀でついていけない?」入社前後のイメージ変化
稲垣:SmartHRでPdMとして働いてみて、率直にどうですか?
塚本:すごく楽しいな〜と思っています。優秀な人がたくさんいる環境で学びが多いし、会社全体がプロダクトを大切にしていて嬉しいですね。
稲垣:「優秀」って、どんな点で思っていますか?
塚本:1つではないですが、よく感じるのは問題の本質をとらえる力が高く、解決策までの道のりがシンプルなところですかね。
あとは優秀かどうかという観点とは少し違いますが、尊敬できる人がとても多いです。自分が尊敬できる人と働けるのってすごい幸せだなって思っているし、楽しいですね。お互いを尊敬し合って仕事ができるって、理想だとは思うけどなかなか実現できているところが多くはない中で、そういう環境にいられるのは嬉しいなと思っています。
稲垣:それが先ほどの「チームで成長する」にも繋がっているのかもしれませんね。
塚本:そうですね。面接官をさせて頂いた際に「入社後ギャップはあったか」という質問を応募者の方から受けたことがあったんですが、「全員が全員超優秀でついていけないんじゃないかと思っていたけど、良い意味でそんなことなかった」と答えたことがあります。1人ひとりの力はもちろん大事だけど、会社自体がそれ以上に、チームとして・組織として成長することを重視していることに安心しました。
稲垣:組織での成長を実現できている背景には何があると思いますか?
塚本:経営陣が優秀で、バリューやミッションの浸透力が高いのが大きな要因だなと思っています。宮田さんはバリューを受け取りやすく伝えるのがとても上手だし、メンバーもちゃんとそれに共感できている。カルチャーマッチする人がちゃんと集まっているなと感じます。
ユーザーに向き合い、チームとともに最適解を見つける力
ここまで塚本さんのチーム・プロダクトへの思いを聞いてきましたが、逆にチームからはどう見えているんでしょうか。一緒に働くメンバーの声を聞いてみましょう。塚本さんって、どんな人ですか?
- 「主語や判断基準がお客様であることが非常に多いと思います!素敵!」- PMM
- 「強み・素敵なところは一緒に仕事をする人のことを細かく考えて神対応してくださるところです!」 - PMM
- 「納得のいく仕様になるまで詰め切ったときにガッツがある人だなと思いました。複雑な仕様にとことん立ち向かう姿勢は尊敬しています。」 - デザイナー
- 「責任感の強さ、コミット力の高さが素晴らしい」 - エンジニア
- 「問題点をズバッと言っていただけることがとても素敵だと思います。」 - QA
- 「理想型を考慮しつつ、その断面での最適解を常に考えている方だと感じた」 - エンジニア
- 「開発のことに理解が深く、無茶なチケットを作りません。」 - エンジニア
- 「まだ半年ほどの関わりですが、塚本さんから「NO」という言葉を聞いたことがないことが強みであり驚嘆してしまう面です。全くお断りすることがないという意味ではなく、他者の意見や提案に対して真っ向否定やネガティブな印象をあたえず検討や説明する姿勢が随所に見られるという意味です。それを多くのタスクがある中でやってのけているということを素直に尊敬します。」 - エンジニア
稲垣:常に主語がユーザーで話される姿勢、私も普段からとても学びになっています。
塚本:すごい、みんながこんな風に思ってくれているのはとても嬉しいですね。宝物にします。落ち込んだときはこれを見よう。
稲垣:「無茶なチケットを作らない」も印象的ですね。エンジニアの経歴も持つからこそなんでしょうか。
塚本:自分がコードを書く立場だったときに、ディレクターに対して「おいおい」と思うようなことはやっぱりあったので(笑)、その観点は今でも活きているのかもしれないですね。プログラミングって0と1の世界じゃないですか。だから「かもしれない」など曖昧なことは言わず、絶対に断定する、ということは大事にしています。仕様を揉むときはみんなでやりますが、最終的に決めるのはPdMの仕事だと思っているので。
PdM・PO兼任から、PO専任へ。新たなチャレンジへの期待
稲垣:今後チャレンジしたいことはありますか?
塚本:POとしての幅を広げていきたいと思っています。この数ヶ月くらい、実はいろんな人に「POって何でしょう?」って聞いてみたりしていて。個人的に思っているのは、企画をやると決めて動き出すんじゃなくて、もっと早いタイミング、たとえばユーザーの声を拾ったり、より上流に足を踏み入れたいなと思っています。
元々LeSS(※注)を始めるときに、スクラムマスターの知識があるエンジニアから「POとPdMは絶対兼務しない方がいい」と言われていたんです。でもPOの業務もそこまで大きいわけじゃないし、PdM業をやらなくなるのがすごく悲しくて、どうしても諦められなかった。やっぱり仕様を考えるのって楽しいじゃないですか。でも最近は、POって自分の中では未知の恐さもあるけどやってみたいな、って思うようになってきました。
(※注…LeSS:大規模スクラムのフレームワーク。SmartHRの大規模スクラムについては、大規模スクラムで見えてきたマルチPdM体制の面白さと難しさをご覧ください。)
稲垣:変化の背景には何があるんでしょう?
塚本:ひとつきっかけになったのは、年明けに導入したLeSSがある程度安定して動けるようになってきたことだと思います。始めたばかりの頃は、とにかく崩壊させないことを目標にしていたけど、ある程度落ち着いたことで考える余裕が生まれてきたのかもしれません。
稲垣:PdMの人数が増えたこともあるかもしれませんね。
塚本:そうですね、それもあると思います。まあ、今はこうやって話してるけど、いざPOに専念したらやっぱり寂しくなって勝手にチケット取ってたりするかもしれません(笑)! PdM業をしていても、企画が詰まって実装フェーズに入ると、ユーザーに会うことが減るじゃないですか。そんなときに他のPdMがインタビューとかしているのを見ると「あ〜、めっちゃ羨ましい!」って思ったりしてますし。
稲垣:それはめっちゃわかります…!
塚本:今はより上流へ、と考えてはいるものの、それがPMMとの関わりも含めてどんなやり方が良いのか、とか、PdMも複数名いる中でPOがやるべきこととは、などはまったく未定なので、その「自分次第」という試行錯誤も含めて楽しみですね。
「仕事は楽しい」と言える親であれる喜び
稲垣:最後に、2児の母でもいらっしゃいますが、「家庭と仕事の両立」という観点でSmartHRを見てどうですか?
塚本:子供が大きくなってきたので、以前ほど「両立=どっちもちゃんとやらなきゃ感」という意識はないかもしれません。昔は1週間分のメニューを土日に考えて買い出しも行って、平日には毎日必ず翌日の夕飯をつくって…ってしてたんですよね。子どもの寝かしつけをしてると自分も一緒に寝ちゃうんだけど、それで翌日ご飯の準備できてない状態になるのがすごく嫌で、何よりも優先して真面目に家事をやっていたんです。今は、家庭について最低限のことはもちろんやるけど、状況次第でかなり柔軟にやることを減らせるようになりました。余裕がない日は夕食も買って帰ればいいか、とか。
とはいえ、子供にいつ何が起きるかはわからないので、何かあったときには家庭を優先して大丈夫という会社のスタンスがあるので安心感があり救われています。
仕事を楽しんでいる姿が見せられているなら、それも良いかなと思っていて。
子どもが学校の友だちから「親が仕事行きたくないって言ってたんだよね…」って聞いて帰ってきて、「ママはどうなの?」って聞かれたりしたんですけど、「めっちゃ楽しいよ!」って普通に言えるんですよね。仕事は苦しいものじゃなくて楽しいものって思って成長してくれるといいなと思っています。
最後に
いかがでしたか?ユーザーとプロダクトへの愛情、POとしてチームに向き合う強さを心から感じるインタビュー、伝わっていたら幸いです。
SmartHRが向き合う「人事労務」領域にはまだ巨大で複雑な課題が盛り沢山です。 既存のプロダクトの改善はもちろん、まだ多くの新たなプロダクトを必要とするこの領域に、一緒に向き合い続ける仲間を探しています。 興味をお持ちいただけた方は、ぜひご応募ください。
次回は今まさに佳境を迎えている「年末調整プロダクト」のPdMをご紹介する予定です。お楽しみに!