ビスケットとは イギリスでのビスケットの認識を色んな角度から調べてみた
別の記事でイギリスのビスケット&クッキーのレビューというのをやっていますが、そもそもイギリス人にとってビスケットとは何なのか。
ふと気になったので色んな角度から調べてみましたら結構奥が深かったです。
イギリスにおけるビスケットの定義
まず、辞書でイギリス英語におけるBiscuitの意味を見てみます。
Cambridge dictionary:
A small, flat cake that is dry and usually sweet
小さくて、乾燥した平らなケーキ、通常甘いもの
Oxford dictionary:
A small baked unleavened cake, typically crisp, flat, and sweet
小さくて、発酵させずに焼いたケーキ、たいていサクサクしていて平らで甘いもの
うん、この定義は私がイメージするビスケットに当てはまっていますが、日本人にとってはクッキーの定義とも合致しますね。
森永ビスケットのHPでは、「菓子業界では糖分や油分が多め(合計が40%以上)の、手作り風のものを、クッキーと呼んでもよいという決まりがあり、区別して使われることもあります。」とのこと。だから日本語ではクッキーもビスケットと呼んでOKです。一方ですべてのビスケットはクッキーとは必ずしも呼べません。
なぜこのようなややこしい決まりができたかというと、昭和の当時、日本では一般的にクッキーの方がビスケットより高級品だと思われていた為、安物のビスケットをクッキーと呼ぶと消費者を誤解させる恐れがあるとして、消費者保護の為にクッキーと呼べるものの決まりを作ったそうですよ。
ビスケットの語源
ビスケットはラテン語を語源に持ちます。
ラテン語で"2度の"という意味を持つbisに、”調理する”という意味を持つcoctusが合わさったbis coctus。
元々ビスケットは小麦粉を水と練ったパンみたいなもので、1回目の焼成の後、続いてオーブンでゆっくり焼いて乾燥させるという2段構えの製造工程だったため、2度焼かれたもの=bis coctusと呼ばれたそうです。2回焼くことで乾燥させ、保存に向いた食品にするのが目的で、船乗り達が携帯した食べ物だそうです。今でいうラスクみたいな物と想像できます。
それが後にフランスでbis-quiと呼ばれるようになり、のちに英語ではbiscuitと呼ばれるようになります。
ビスケットの歴史
起源は小麦粉と水を練って2回焼いただけでしたが、数世紀に渡って卵やジンジャーなどのスパイス、砂糖が入り、そして焼き菓子作りの技術が上がっていくことで、保存食としてだけでなく、14世紀の頃には食後に消化を助けるもの(Digestive)として食されていたようです。
19世紀位になると中流・上流階級の人々の間では食後のデザートしてアイスやフルーツ等と一緒に供されるようになり、この頃にフランスのPetit four(小さな焼き菓子の盛り合わせ)が生まれたそうです。ビスケットといってもメレンゲ菓子やマカロンのような焼き菓子が主流で、ワインと一緒に楽しむ事が目的だったようです。Petit fourは今でもフランスのレストラン等でメニューに載っています。
そんなころイギリスでもビスケットが紅茶と一緒に食べられるようになりビクトリア女王もお気に入りだったとか。
当時のビスケットレシピを作ってみたい方はこちら↓↓
19世紀後半になると産業革命を経て大量生産ができるようになり、有名なビスケット会社が誕生し始めます。NICEビスケットのHuntley & Palmersが誕生したのもこの頃だし、チョコレートを使ったダイジェスティブビスケットが生まれたのもこの頃。
甘いビスケットの他にはJacob'sに代表されるクラッカーが誕生したのもこの頃です。
長い歴史を経て、現在の手軽なスナックとしてイギリスの生活に浸透したビスケット。甘いものからしょっぱい系、柔らかいものからサクっと歯ごたえの良いもの。ナッツ、フルーツ入り、、等々バラエティー豊かなビスケットが愛されています。
※歴史についてはこちらを参照しました。詳しく読みたい方はどうぞ↓↓
税制的側面から見たビスケット
さてさて、ビスケットの現在に目を向けて、イギリスの税制的にはビスケットがどう扱われているのか見てみましょう。
元々税制的側面が気になったのは、なぜJaffa cakesがビスケットにカテゴライズされているのかという事でした。
イギリスのTVで1年に1回は目にするビスケットのランキングがあるのですが、その中でJaffa cakesがランクイン。Jaffa cakesはオレンジ風味の柔らかいスポンジの片側にチョコレートが掛かった焼き菓子でして「え、これビスケット?」と思ったのがきっかけ。
気になるビスケットは3.4.2で細かく分類されています。
⇒Biscuits covered or partly covered in chocolate or some other products similar in taste and appearance to chocolate are standard rated.
ビスケットの中でも全体や一部分がチョコレートでコーティングされたビスケット、味や見た目がチョコレートに似たものは20%となってしまいます。
見た目チョコってのがポイントみたいですね。参考まで、板チョコやチョコレート菓子はVAT20%です。
この分類に従うと、Jaffa cakesは片側がチョコでコーティングされているビスケットだから20%だね?と思いますが、驚くことに、Jaffa cakesは3.4.2の中で明確にZero ratedと商品名名指しで記されており、昔VATをめぐって論争があったことが連想されます。
ちなみに、、ビスケットのコーティングがチョコではなくキャラメルなら0%で済むし、Bourbonビスケットのようにチョコレートをビスケット2枚でサンドしており、外側にチョコレートがついていないものはVAT0%です。
UK政府のサイトではJaffa cakesがビスケットに分類かつチョコが掛かっているのに20%にならない理由が判らなかったので他の記事など調べてみました。
やはり、1991年にVATの分類を巡った裁判がMactivie’sとイギリス司法の間であったようです。この時のMactiviesの主張は「Jaffa cakesはビスケットじゃない、Cakeだ!」というもの。ケーキはzero ratedなので、Mactivies的にはケーキと認識されたい訳です。
そもそもなんでJaffa cakesがビスケットとカテゴライズされたかというと、そのサイズ感(Jaffa cakesは指でつまんでパクっと食べられるサイズが一般的で、そのサイズ感はビスケットと類似)。そしてスーパーではケーキではなくビスケットの棚に陳列されていたため、ビスケット同等の物と判断されたようです。Jaffa cakesという「ケーキ」が冠についていても、実態はビスケットでしょうよ、というのが司法判断でした。
それに猛反発したのがMactiviesで、この食べ物の基本となるスポンジ部分の材料がどちらかというとケーキの生地に近い事、又、食感はビスケットというよりは、ケーキのふかふか食感であること等を理由にケーキだと主張したわけです。
更には巨大Jaffa cakesのレシピを出したりして、サイズにとらわれない事もアピール。
これらMactiviesの主張が通って無事Jaffa cakesのVATはZero ratedと決定されました。
でも現UK政府発行のVAT分類表では3.4.2 ビスケットの中に分類されていますから、司法的にはビスケットだけど、Jaffa cakesの欄を特別に作って無税にしてあげよう、、という不思議な落としどころだったのかなと思われます。
イギリスにはクッキーは存在しないのか
ところで、日本のサイトでビスケットについて調べると、イギリスから来たお菓子と説明されています。そして更には、イギリスにはクッキーは無いとする記事も見つかります。
ただし、イギリスにはクッキーという言葉が存在しないため、焼き菓子全体をビスケットという呼称で統一しています。(yoku moku)
私はそんなことはないでしょうよ。と思いまして、イギリスにクッキーという言葉はあるのか否か以下の場所で調べてみました。
- オンラインスーパーの商品検索画面
- オンラインレシピの検索画面
- イギリス人の会話
1. 行きつけスーパーのオンラインサイトで商品検索したら出てきましたよ。ちゃんとMade in UKのクッキーが!
2. BBCは英国のNHK的立ち位置の放送局ですが、こちらの放送局のWeb pageには様々なレシピが掲載されています。こちらでCookieと検索すると、ちゃんと出ました!イギリス人もクッキーを作ります。
3. これについてはしばらく人と会っていないのでちょっと確認できませんが、今までクッキーを貰ったシチュエーションでどうだったかな~。。これは今後そのシチュエーションに出会ったら確認したいと思います。
現状イギリスにはクッキーという言葉も食べ物も存在していることが確認できました。まぁグローバル化の今、外国から入ってきたものが浸透したのかもしれませんしね。Yoku mokuがどの時代の話をしているのか判りませんので……
イギリス人が一番好きなビスケット
イギリスでは5月29日がNational Biscuits Dayだったらしいです。
この時に発表されたイギリス人の好きなビスケットランキングでみごとランクインしたのはMactivie’sのDigestves Milk Chocolateでした。
Mactivies自体は日本でも有名ですね。目新しさは無いですが、ざくざく食感が美味しい世界中で愛されるビスケットですね。
以上、イギリスにおけるビスケットとは何なのか、色んな角度から調べてみました。
奥深~い歴史もあり、結構調べていて面白かったです。
イギリスにお越しの際は色んなビスケットを試してみてくださいね。
イギリスで購入できるビスケットのレビューはこちら↓↓
Shikka