DIC川村記念美術館 - ある日 この道

DIC川村記念美術館

9時55分に東京駅発のバスで約70分、11時02分にDIC川村記念美術館に到着。

 

DIC川村記念美術館

「作品」「建築」「自然」の三要素が調和した美術館として、1990年5月に千葉県佐倉市の総合研究所敷地内にオープンした。

DIC株式会社が関連企業とともに収集してきた美術品を公開する施設で、設立者である川村勝巳は大日本インキ化学工業(DICの旧社名)創業家の2代目社長。

DIC川村記念美術館 | Kawamura Memorial DIC Museum of Art

2025年1月下旬より休館すると聞いて初めて来た。

当館の運営に関する対外公表及び それに伴う休館予定に係るお知らせ | DIC川村記念美術館

休館開始予定が2025年3月下旬からに延期されると10月1日に発表された。

当館の休館開始予定の延期に関するお知らせ | DIC川村記念美術館

 

主要作品37点の解説、庭園、付属施設についての紹介が聞ける無料の音声ガイドアプリがある。

主なコレクション

主なコレクション | DIC川村記念美術館

 

エントランスには、アリスティード・マイヨール《ヴィーナス》。

天井の照明が綺麗。

 

101展示室[印象派からエコール・ド・パリへ]

アンリ・ル・シダネル《薔薇と藤のある家》

 

カミーユピサロ《麦藁を積んだ荷馬車、モンフーコー

 8回開催された印象派展の全てに参加したのはピサロのみ。「ミレーの種まく人は人類のためにまき、ピサロの農民は彼らの日々の糧のために働く。」(ドガ

 

クロード・モネ《睡蓮》

 「モチーフで一番大切なのは、空の一部分が映り込むことによって刻一刻とその外観を変える鏡のような水面だ。」

 

ピエール・オーギュスト・ルノワール《水浴する女》、設立者・川村勝巳の一番のお気に入り。

ピエール・ボナール《化粧室の裸婦》

ジョルジュ・ブラックマンドリン

ジョルジュ・ブラック《小屋と舟》

コンスタンティンブランクーシ《眠れるミューズ II》

パブロ・ピカソ《肘掛椅子に座る女》、口を開けて眠る女性の姿。

パブロ・ピカソ《シルヴェット》

藤田 嗣治(レオナール・フジタ)《アンナ・ド・ノアイユの肖像》、背景が乳白色。金のドレスが映える。

マルク・シャガールダヴィデ王の夢》

マリー・ローランサン《ピクニック》

モーリス・ユトリロ《メクス村(ムルト=エ=モゼール県)》

 

102展示室[レンブラント・ファン・レイン]

レンブラント・ファン・レイン《広つば帽を被った男》

 この肖像画はモデルとなった男性の妻の肖像と一対であったことが分かっていて、妻の肖像《婦人の肖像(Portrait of a Lady)》はアメリカのクリーヴランド美術館に所蔵されている。

 

103展示室[シュルレアリスムとその展開]

マックス・エルンスト《入る、出る》

マックス・エルンスト《石化せる森》、立体感のある抹茶色の背景に赤い輪。日本的にも感じる。

ルネ・マグリット《感傷的な対話》

マン・レイ《だまし卵》、黒い便座に白い卵の絵。

パウル・ヴンダーリヒ《座長》、背もたれを顔と胴と見て、椅子を人に見立てている?

 

110展示室[自然と陰影 ドイツ出身のコレクション作家たち]

ヴォルス《コンポジション

ジャン・アルプ(ハンス・アルプ)《臍の上の二つの思想》

エルヴィン・ヘーリッヒ《厚紙彫刻》

 

クルト・シュヴィッタース《無題(切り取られた卵、色のついた半月、白樺の木の彫刻、開いた花、小石の彫刻)》

 第一次世界大戦後に集めた廃材で作品制作を行った。第二次世界大戦中には祖国のドイツからノルウェー、イギリスと逃れながら制作を続ける。その頃に制作した作品を後に石膏を用いて再制作した作品。

 

ハンス・シュタインブレンナー《無題》

 《抽象絵画》(アド・ラインハート)に似ている。

ハンス・シュタインブレンナー《人物》

マックス・ノイマン《無題》

 

104展示室[戦後のアメリカ美術]

ジャクソン・ポロック《緑、黒、黄褐色のコンポジション

 ジャクソン・ポロックは床に広げたカンバスの上に塗料を流し込んで画面を覆う手法を発見した。具体的なイメージを一切持たず、線は線としてのみ存在する。アートが対象を描き表すことから解放された。

 「抽象絵画というものは音楽を楽しむように味わえばいい。何かを探すべきではなく、受け身で見る。その絵画が差し出すものを受け取り、テーマが何かなどの先入観を持ち込まない。」

 ポロックは「あいつが全部やってしまったんだ」と叫びながら、ピカソの画集を床に叩きつけた。

 

サム・フランシス《無題》

 

アド・ラインハート《抽象絵画

 黒一色で覆われた正方形の画面をよく見ると、微妙な濃淡の差で九つに分割されている。

 物語や隠された意味は暗示されていない、シンプルな黒い絵画。ラインハートは抽象的なフォルムや色彩によって構築していくことすら否定し、画面上には色彩や筆さばきすら存在してはいけない。あらゆる要素を排除した、芸術以外の何物をも意識しない純粋な作品。1960年から亡くなるまでの7年間、同じ大きさ、同じ構図の、黒い作品のみ描き続けた。

 

サイ・トゥオンブリー《無題》(絵画)、1968年

サイ・トゥオンブリー《無題》(彫刻)、1990年

 

ジョゼフ・コーネル《無題(星ホテル) 》、《海ホテル(砂の泉) 》

 大きさの手作りの箱にお気に入りの品々をしまい込んだ作品で、独自の世界観を披露するショーケース。ジョゼフ・コーネルは「箱のアーティスト」として知られる。

ジョゼフ・コーネル《あわれな胸よ、ふるさとを……(ヘルダーリン)》

 

105展示室[エルズワース・ケリーの版画]

エルズワース・ケリー

 《ブリウド》と《モワサック》と《カーン》はセットのよう。同じ形が切り取られているのか貼られているのか、黒く塗られているのか。

 

106展示室[ロスコ・ルーム〈シーグラム壁画〉]

ロスコ・ルームは、2008年にはDIC株式会社の創業100周年記念事業の一環として増設された。

ロスコ・ルーム | DIC川村記念美術館

根本浩氏が設計したマーク・ロスコの《シーグラム壁画》専用展示室で、変形七角形の部屋の各壁に絵が一枚ずつ、中央にソファが一つ。オランジュリー美術館の睡蓮の部屋のよう。

1958~59年にニューヨークのシーグラムビルにオープンする高級レストランのために制作された。自分の作品だけで一室を飾るという仕事だったが、レストランの雰囲気が気に入らなかったロスコは一方的に契約を破棄。それでもシーグラム壁画だけを鑑賞できる部屋を切望し、後にロンドンのテート・モダンとDIC川村記念美術館にまとまって収蔵され、ともにロスコ・ルームと名付けられた部屋を設けている。ロスコは絵画ではなく場を作った。

絵画における色彩を探求する中に生まれた作品は、長年色に携わる事業を展開してきたDICが収集するのにふさわしい。

ロスコの作品のみで出来上がった空間は他に、ワシントンDCのフィリップス・コレクションにあるロスコ・ルーム、ヒューストンのロスコ・チャペルと世界に4カ所のみらしい。

 

2階へ

200室

企画展「西川勝人 静寂の響き」

作品リスト

https://kawamura-museum.dic.co.jp/application/files/1217/2610/0330/list_nishikawa.pdf

2つのキーワード「自然」「光」。「不自然」「人工的」の対義語として、「闇」「陰影」と併せて用いられることもある。

静物》、アクリルガラスを重ねて様々な色を表現。

《フィザリス》、クリスタルガラス製。

 

201展示室-A[追悼 桑山忠明 1932–2023 コレクションViewpoint

 

201展示室-B[追悼 フランク・ステラ 1936–2024 コレクションViewpoint

《トムリンソン・コート・パーク(第2ヴァージョン) 》

 フランク・ステラは描くというより絵画を設計して組み立てることで、ただあるがままに見ることを提案した。「あなたはそこに見えるものを見ている」。

《同心正方形》

《ヒラクラ III》

 

202室

企画展「西川勝人 静寂の響き」の続き。

《翼》、貝殻が貼られている。

《劇場》

《池のほとり》

《静寂の響き》、白と濃紺のアクリルガラスの組み合わせで、光と闇がテーマ。

 

203室

《ラビリンス断片》

高さ6メートル、縦横21.6メートルの大空間に、高さ1メートル、奥行き50センチの低い白い構造物を設置することで、空間全体を一つの作品としている。この構築物は、正方形の空間を、9つの区画に等分し、規則正しく置かれた異なる作品をみることで、空間全体を巡るよう設計されている。照明器具は使用せず、トップライトからの自然光のみであることも重要な要素の一つ。

「9個の空間は全て等価。ラビリンス体験とは、それぞれの部屋、空間で違う体験をすることではなく、同じ空間に居ながら、その全体のなかでめくるめくような体験。」

 

203室は白い壁の部屋が白い塀で区切られ、天井からは自然光。室内の作品もほとんどが白く、周囲の壁にかけられた《分水嶺》という空の写真のみが灰色。

一つ一つの区画を歩くことでラビリンスを散策している気分。作品の中を歩き回れる面白い体験。

作品リストの42《ラビリンス断片》が何度見渡しても見当たらなかったため、係の方に聞いて良かった。部屋自体が作品という意味とは思わなかった。(作品リストの裏側には記載されていたが)

 

中央の区画の《秋》は床に白い花弁が敷き詰められていて、ほんのり香りもする。

《眺望》から《秋》も見える。

《壁》は薄い円形の作品が倒れずに立っている。

 

「アートは自然に対立するものではなく、自然に同調するものでもなく、自然と共存、coexistするもの。」

 

屋外へ。

清水 九兵衞《朱甲面》

フランク・ステラ《リュネヴィル》

15時29分にDIC川村記念美術館のバスで約70分、16時42分に東京駅発に到着予定。

実際は16時56分に到着。