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中国の世帯月収はいくらぐらいなのか。定期的に広がるフェイク情報

中国の世帯収入はいくらぐらいなのか。この件に関して、ネットではたびたびフェイク情報が広がる。その原因は、国家統計局が世帯収入のデータを発表していないことにあると財経十一人が報じた。

 

北京市の世帯収入は126万円/月?

昨年から、長江経済帯城市専題会という組織が発表した「中国世帯収入中央値報告」というリストがネットに出回っている。都市ごとの世帯収入の中央値を上位から50都市をランキング形式にしたものだ。

しかし、その数字があまりに大きいことが話題になった。第1位の北京市の一ヶ月の世帯収入中央値は6万5548元(約126.9万円)となっており、あまりにも実感とかけ離れた数値になっているため、多くの人からデータがおかしいのではないかと指摘が相次いだ。

月収と年収の間違いではないかと考えた人もいたようだが、年収と考えるとあまりに小さすぎる。長江経済帯城市専題会という組織の実態も不明なため、最終的にはフェイクニュースのひとつとして、さまざまなメディアが指摘をするようになった。

▲長江経済帯城市専題会という実在しない組織が発表したとされる世帯収入のデータがネットに出回っている。北京市で世帯月収が約127万円という高いもので、多くの人が驚いている。

 

フォーブズの名前を語ったフェイク情報

このような中国の世帯収入を大きく見せるフェイクニュースは定期的に出回る。2021年にはフォーブズ中国が制作したかのようなランキングがネットに出回った。こちらでは、上海の世帯年収が82.5万元(約1600万円)というもので、やはり多くの人の生活実感よりも大幅に高いものになっている。

フォーブズ中国(https://www.forbeschina.com/)は、この件を受けて、このリストはフォーブズが制作したものではないということを告知している。

▲フォーブズ中国が推定したという触れ込みのフェイクデータも出回っている。フォーブズ中国が公式にこのデータを制作していないと公表している。

 

単身世帯から大家族まである中国の世帯

このようなフェイクニュースが出回る理由のひとつは、国家統計局が世帯収入の統計を出していないことが大きい。国家統計局が世帯収入の統計を出さない理由は容易に想像がつく。都市部では核家族化が進み、単身家庭(独身者)も多くなっている。一方、地方や農村では親子三代がいっしょに暮らす大家族も多く、世帯人数が大きな開きがある。その中で、世帯収入を計算することはあまり意味がない。それよりは個人の収入統計の方がさまざまなことに利用ができる。そういった理由ではないかと専門家は指摘をしている。

 

統計から推定した世帯月収は35万円

では、多少無理があっても、中国の世帯収入を計算してみるとどのくらいになるのだろうか。計算方法は簡単で、個人の収入を平均世帯人数でかけてやれば、おおよその世帯収入が計算できる。

2021年に行われた大規模な国勢調査である「人口普査」では、平均世帯人数は2.62人だった。

各都市ごとに住民の平均年収の統計は発表されているため、これを整理すれば平均世帯年収のランキングをつくることは難しくない。

1位になるのは上海市で、2021年は8万2429元(約160万円)となった。これは年収であるため、12で割れば月収となる。すると、上海では6869元(約13.3万円)となる。

平均世帯数は2.62人であるので、6869×2.62=1万7997元(約34.8万円)となる。

▲財経十一人が公的統計から推定をした世帯収入の平均値。上海で約35万円となった。

 

中央値はさらに低くなる

ただし、この数値は平均値であるため、中央値よりも大きくなることに注意をする必要がある。収入のように少数の高額所得者と多数の低所得者という偏った分布の場合、平均値の方が中央値もよりも高くなる。

そのため、公的統計から計算した世帯の平均月収=1万7997元よりも、本当の中央値は低くならなければおかしい。問題の長江経済帯城市専題会の上海市の世帯月収中央値=6万3682元というのはまったくあり得ない数値なのだ。

しかし、物価を考えれば、世帯月収35万円というのは決して悪い数字ではない。中国の暮らしぶりが豊かになってきたことが統計からもわかる。