メタバース空間の中で猫と遊ぶ。毛ざわりや舌のざらざら感まで再現する触覚フィードバックシステム - 中華IT最新事情

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メタバース空間の中で猫と遊ぶ。毛ざわりや舌のざらざら感まで再現する触覚フィードバックシステム

メタバース空間の中で猫と遊び、その手触り感を再現する触覚フィードバックシステムをテンセントRobotics Xラボと香港城市大学が共同で開発した。メタバースの中で猫と遊び、その毛ざわりや舌のざらざら感まで感じられるようになると量子位が報じた。

 

メタバースの中で猫に触れることができるテクノロジー

VRメタバースの中で何がしたいか。多くの人が猫と戯れたいと思っている。騰訊(タンシュン、テンセント)のRobotics Xラボと香港城市大学が共同で、仮想の触覚を再現するシステムを開発した。このシステムを使うと、猫をなでることで毛ざわりを感じることができ、猫に指をなめてもらうと、舌のザラザラ感まで感じることができるという。

▲研究チームはメタバース空間の中で猫と遊ぶことを目標に定めた。頭をなでると毛ざわりが、舐めてもらうと舌のざらざら感が感じされるようにすることが目標だ。

 

触覚フィードバックシステムの2つの考え方

このような触覚フィードバックシステムは、さまざまな研究機関、企業が研究開発を行っている。その研究は、2つの方向性にまとめることができる。ひとつは機械刺激で、もうひとつは電気刺激だ。

機械刺激は単純で、皮膚に接触させた無数のピンをアクチュエーターにより動かすことで触覚を再現するもの。シンプルな仕組みで触覚を再現しやすいが、アクチュエーターの体積が大きくなるため、ピンの密度を高めることができず、どうしても触覚再現が粗くなりがちだという課題がある。

電気刺激は精度の高い触覚再現が可能になるが、電圧の制御をうまく行わないと、利用者が痛みを感じたり、場合によっては健康被害を与える可能性がある。

Robotics Xラボと香港城市大学は、電気刺激の手法を採用し、これを改善する道を選んだ。

▲触覚フィードバックのシステム。触覚ドットは少ないが、複数のドットを同時に刺激することで、ドット数以上の解像度を得ることができる。

 

周波数を下げると、刺激は強く感じる

研究チームが改善をしたのは次の2つだ。

多くの電気刺激による触覚再現が直流電流を用いるのに対して、研究チームは交流電流を採用した。交流電流は一定のリズムで電流の流れる方向が反転をする。10Hzの交流電流は1秒間に10回反転をし、皮膚に対して刺激を与え続ける。研究チームは、周波数を下げる(刺激頻度が少なくなる)ほど、刺激の大きさが強く感じられるようになることを発見した。刺激の頻度が少なくなると、ひとつひとつの刺激は、実際よりも強く感じる。この周波数を変化させることで、刺激の強さを変えることができるという観察が突破口となった。

これにより、180度の位相を持った(反転した)2つの交流電流を組み合わせることで、さまざまな触覚を再現できるようになった。周波数の低い交流電流刺激は岩石や紙なのどのザラザラした質感を再現することができ、周波数の高い交流電流刺激はガラス面などのつるつるした質感を再現できる。

最終的に、最低13ボルト、最高28ボルトの刺激装置を開発し、15ボルトから25ボルトの間で、2つの交流電流を組み合わせることで、さまざまな触感を再現できるようになった。

 

刺激点の解像度をあげる

もうひとつの改善が、触覚の解像度を高めたことだ。ドット状に配置した刺激点のうち、複数の刺激点を同時に駆動させることで、人はドットの中間にある点が刺激をされたと感じることができる。

これにより、物理的な刺激点以上の超解像度が得られることになり、最終的に76ドット/平方cmの解像度を得ることができ、これは人間の皮膚の触覚の解像度にきわめて近い。

この2つのブレイクスルーにより、従来の手法では再現できなかったリアルな触覚を再現することに成功している。

▲スーパー解像度の仕組み。複数のドットを刺激することで、あたかもその中間のドットが刺激されたように感じる。これで76ドット/平方cmの刺激解像度を再現することに成功した。

 

触覚フィードバックによる情報伝達が可能に

解像度が高まったことにより、情報伝達デバイスとしての活用にも可能性が生まれている。次の実験は、左指に触覚再現デバイスを装着した被験者に、触覚の移動により文字を伝えるという実験で、87%の正解率を得ることができた。

また、触覚が奪われてしまう消防士用の厚手の手袋をしていても触覚を得ることができる。触覚再現デバイスを装着して、その上から手袋をして、ターゲットの直径1mm、高さ0.44mmの突起を指で探り当てるという実験では、被験者は触覚再現センサーのガイドにより、正確に突起を探り当てることができた。

▲触覚フィードバックを通じて、文字の画を伝えることで、どの文字が指示されたがわかる。実験では87%の正解率を得た。

 

リモートや手袋必須の作業に用途

この技術の用途は無限にある。リモートで製造や操作などをするときは、VRゴーグル立体視をし、触覚をフィードバックすることで、精密な操作が可能になる。また、宇宙服、防護服、手袋などをつけて作業をしなけれならない場面で、外面につけたセンサーで触覚情報を読み取り、それを人間の皮膚に伝えることで、触覚に頼った作業が可能になる。

また、わかりやすいところでは、ECで買い物をするときに、衣類などの質感を再現できる可能性もある。メタバースのリアリティーを大きく前進させるテクノロジーとして注目をされている。

▲用途のひとつは、メタバース空間でのEC。実際の洋服の手触りを試すことができる。