中国の下沈市場=地方市場まで浸透している外資系飲食チェーンは、KFCが唯一の存在だ。マクドナルドも地方中核都市までの展開にとどまっている。そのKFCが9.9元でエスプレッソコーヒーの提供を始めている。コーヒーの地方浸透にとって大きなインパクトがあると餐飲老板内参が報じた。
コーヒーがヒット商品になったKFC
ケンタッキーフライドチキン(KFC)が、コーヒーの領域で大きな存在感を持ち始めている。KFCは店舗に、コーヒー、ソフトクリーム、スナック、エッグタルトなどを販売するテイクアウト専門窓口「KFC TO GO」を設置した。ほぼ全店舗に当たる8500カ所以上になる。
ここで販売されるコーヒーは、SOE(Single Origin Espresso)。単一品種の豆を使ったエスプレッソだ。一般的には、品質を揃え、価格を抑えるため複数の品種の豆がブレンドされる。単一品種の豆を使うというのは、大量の豆を調達しなければならないファストフードチェーンでは異例のことだ。
しかも、このエスプレッソが9.9元(約190円)という低価格で提供される。スターバックスは30元以上であり、コンビニコーヒーとほぼ同価格だ。
このK Coffeeは、2021年には1.7億杯を販売した。
中国のKFCの3つの「すごい」
KFCは、日本と同じ、フライドチキンを中心にした西洋式ファストフードチェーンだが、中国では次ような3つの特色がある。
1)中華メニューに対応
チキンとハンバーガーだけでなく、積極的に麺、飯といった中華メニューを開発し、提供している。その地方の郷土料理メニューを期間限定で販売することも常時行っている。そもそもフライドチキンが、味付けは異なるものの、中華の料理技法に通じるものがある。西洋ファストフードでありながら、中国人の口に合うメニューを提供している。家族で行って、親は中華麺を、子どもはハンバーガーをと、それぞれが好きなものを食べられる飲食店になっている。
2)下沈市場にも浸透
このような中国化を進めたため、大都市だけでなく、地方都市にまで店舗展開をしている。約9000店舗展開している外資飲食チェーンはKFCのみだ。マクドナルドは4500店舗であり、大都市と地方中核都市に留まっている。
3)プロモーションが非常にうまい
KFCは広告宣伝費をテレビ、ラジオ、雑誌などの旧メディアに投入するのを抑え、早い段階からオンラインプロモーションにシフトをしてきた。そのため、ほぼ毎年、社会現象になる話題を提供するようになっている。
ポケモンとコラボした玩具が社会現象に
2022年5月、KFCはポケモンとコラボをして、子どもの日の記念グッズとして、コダックの玩具を発売した。音楽に合わせて、コダックが手を上げ下げしながら踊るというものだが、この手にメモを貼り付け、「残業・拒否」「恋人・募集中」などの自分の主張をコダックにさせている映像を撮影し、SNSで公開するということが流行をした。
▲KFCが発売したコダック玩具の流行は海外メディアも注目する社会現象となった。
SNSの動向にも敏感に対応
また、KFCでは2018年から「クレイジーサースデイ」というキャンペーンを続けている。毎週木曜日に大幅割引をするキャンペーンだ。この「クレイジーな木曜日」は、若い世代に定着をし、2020年頃から毎週木曜日にKFCを織り込んだダジャレや小話、ショートストーリーをSNSに投稿することが流行し始めた。これは次第に「瘋四文学」と呼ばれるようになった。
このような現象が起きていることを察知したKFCは、すぐにライブコマースで「瘋四文学盛典」を開催した。人気のある作品を紹介し、その週の”文豪”を決める番組だ。瘋四文学はサブカル文化のひとつとなり、SNSで大量に拡散される。KFCの宣伝効果も決して小さくない。
同じように、K Coffeeでも、パンダをあしらったカップやアニメキャラクターのスポンジボブとコラボしたパイナップルアイスコーヒーがSNSの大きな話題となっている。
激化するコーヒー領域で存在感を示すKFC
中国のコーヒー市場の企業の6割以上が5年以内の創業で、2021年には関連企業が2.6万社となり、2022年だけで1.9万社が新たに創業された。コーヒー市場は急成長をし、大都市ではすでに飽和をし、各カフェとも下沈市場の攻略が大きなテーマになってきている。その中で、すでにファストフード本体で下沈市場に浸透をしているKFCが、9.9元という低価格でK Coffeeを展開したことは大きなインパクトがある。