内モンゴル自治区の炭鉱で、自動運転トラックの導入が進んでいる。気候環境が厳しい場所での運転業務は、危険であり、負担も大きく、高度な運転技術を必要とする。誰でもできる仕事ではないため、人手不足が直撃している。最終的には5G通信を活用した無人運転を目指していると、 国家電投集団内モンゴルエネルギーが報じた。
厳しい労働環境の炭鉱トラックドライバー
国家電投集団の内モンゴルエネルギーは、内モンゴル自治区に5カ所の露天掘炭鉱を所有し、年間8100万トンの石炭を生産している。しかし、北方の海抜高度の高い場所にあるため、その気候環境は厳しい。低温だけでなく、太陽の輻射も強く、さらに騒音、粉塵にさらされる。そのため、トラックの運転手は長時間作業を続けることができない。
現在、5台の100トン級トラックを使って、石炭を運搬しているが、1台のトラックに4人の運転手が交代で対応をする。さらに、3シフト24時間での稼働を行なっているため、合計60人の運転手が必要となる。
炭鉱内の通路は高低差があり、180度のカーブを何度も折り返さなければならない。高度な運転技術が必要とされ、気を抜けば大事故につながりかねない。さらに、人手不足が深刻となり、現在の運転手たちは長期休暇が取りづらい状態になっている。
人手不足、作業効率などを大きく改善する自動運転
そこで内モンゴルエネルギーでは、自動運転技術を導入した。移動、積み込みなどほぼすべての作業が自動化をされたため、運転手は運転席に座り監視をするだけになった。作業負担は大きく減り、従来の半分の人数でトラックを運用できるようになる。さらに、高い運転技術は必要としないため、人材募集も広く行うことができるようになり、人手不足の解決も期待されている。
また、大きいのが運転手の交代だ。従来、運転手を交代するには、トラックをいったん詰所に戻さなければならなかった。最大作業時間の規制があるため、それを超えないうちに詰所に戻る必要がある。現場から詰所に戻り、運転手を交代して、再び現場に戻って作業の続きを始めるというやり方であったため、1時間近いロスが生まれる。これにより稼働率が大きく下がっていた。
これが自動運転になると、運転手の作業負担が大きく減るため、作業時間の最大限度時間がなくなり、作業の切れ目に合わせて運転手の交代ができるようになった。
5Gリモート監視による無人運転を目指す
この自動運転技術が導入されたのは、2020年10月。北方重工、踏歌智行との共同開発によるもので、最終的な目標は5G通信設備を炭鉱に設置をし、運転手が乗務をしない無人運転だ。
協力会社の白音華煤業は、12台の60トン級トラックを5Gのリモート監視による無人運転を実現している。100トン級トラックについても、現在の自動運転の運用状況を見て、無人運転に移行する計画だ。環境は厳しくても、一般の人が入ってこないため、自動運転技術にとっては理想的な環境となっている。無人運転は、港湾、鉱山、農場といった場所からすでに普及が始まっている。