中国で流行する広場舞。リタイアした世代が中心となり、派手な衣装で大音量の音楽に乗せて踊るチームダンスだ。全国大会も開催されるほど流行している。しかし、その大音量の音楽が騒音トラブルとなっている。上海市では指向性のあるパラメトリックスピーカーを導入することで、この騒音トラブルを減らすことに成功したと新民晩報が報じた。
騒音トラブルが相次ぐ広場ダンス
中国の朝。公園に行くと、朝の静寂な空気の中で、太極拳の演舞をするお年寄りがいる…。そんなイメージを持っている人もいるかもしれないが、現実は違う。ここ10年ほどで大流行しているのが広場舞(広場ダンス)と呼ばれるもので、リタイアした世代が大音量で音楽を流し、派手な衣装を着て、集団で踊る。全国的なコンテンストも盛んに行われるため、上位入賞を目指す本格的なグループも多い。朝の静寂などは吹き飛び、朝っぱらから、あちこちから騒音が流れてくるというのが中国の公園の朝だ。
この広場舞は朝だけではない。夕方から深夜まで続く。また、多くのグループが広場舞をするために場所が見つからず、街中のちょっとしたスペースでも行われるため、騒音に対する苦情が以前から多く、近隣住民と広場舞のグループの間でトラブルが起きることもしばしば起きている。
騒音を軽減するスマート広場舞システムを導入した上海市
上海市閔行区の古美路周辺では、このような苦情の多い場所が5カ所あるが、その中でもトラブルが多いのが古美人口文化公園だ。地区政府は、ここに「スマート広場舞システム」を導入した。試験運用して1ヶ月、この場所で騒音に対する苦情はゼロになった。
パラメトリックスピーカーを使い騒音を軽減
スマート広場システムとは、いわゆる指向性スピーカーやパラメトリックスピーカーと呼ばれるものが基本になっている。正面方向30度の角度には音が聞こえるが、この範囲を外れると音が急速に減衰をして聞こえなくなるというもの。
指向性スピーカーは、人間の耳には聞こえず、直進性が高い超音波を利用している。40KHzの音は周波数が高すぎて、人間の耳には聞こえないが、40KHzと41KHzの音を同時に発射をすると、差である1KHzの音が生まれ、人間の耳に聞こえるようになるという原理を元にしている。
1月に15件あった苦情がゼロになる
実際には監視員が現地に配置され、朝8時から10時まで、夜7時から9時までの間利用され、50mも離れれば、音楽はほとんど聞こえなくなるという。それ以外の時間は、騒音を測定し、基準を超えている場合は解散を命じられる。
この場所では以前は1月に15件前後の苦情が出ていたが、スマート広場システムを導入して以来、苦情はゼロになった。ネットでは、「うちの近所にも導入してくれ」というコメントが相次いでいる。