江西省宜春市宜豊県の橋西郷習峰村で、ママさん40人が集まって起業をし、地域の特産品を拼多多(ピンドードー)などで販売し、年間2000万元(約3.2億円)の売上をあげているというママさん会社が話題になっていると央広網が報じた。
農村で始まるママさん起業
このママさんECチームのリーダーは、彭敏芳(ポン・ミンファン)さん。12年前、看護学校を卒業した彭敏芳さんは、多くの卒業生がそうするように、広東省の都市に出て仕事を求めた。そこで、ある医師と知り合い結婚をした。夫となった医師は、無医村だった習峰村で診療所を開設し、彭敏芳さんもその診療所を手伝った。
それから1年、彭敏芳はECを起業することを思いついた。「都会で働いている時、周りの人が農村の特産品をほしがっていました。でも、当時は、売っているところがなく、手に入れるのが難しかったのです。もし、特産品を村の外に出荷する方法があれば、大きな市場があると思っていました」。
▲彭敏芳さんは農村のママを集めて起業し、辣椒醤などの村の特産品を拼多多で販売をしている。年商は3億円を超えた。
村の特産品を拼多多で販売し年商は3億円+
最初は、家の中で特産品を作り、包装をし、EC向けに出荷するという小規模なものだったが、次第に大きくなり、今では専用の工場を作り、扱う品目も、辣椒醤、豆腐乳、蜂蜜、米酒、干しタケノコなどと増えてきた。
工場では生産、加工、包装、出荷までを一貫して行い、現在ではライブコマースも行っている。年商は2000万元を超え、そのうち半分以上が拼多多によるものだ。
▲農村に残っているママさんたちは、夫の稼ぎだけに頼り、自分のお金を持っていなかった。それが働くことにより、自分のお金を持つことができるようになった。これが農村の女性の意識に大きな変化を与えている。
農村ママを経済的に自立させる農村起業
彭敏芳さんが起業をするとき、農村には人手が余っていることに気がついた。現在の農村では、高齢者が農作業を行い、現役世代の男性は都市に働きにいく。女性は家にいて、子育てをし、仕事もないし、収入もない状態に置かれている。彭敏芳さんは、この留守を守るママさんたちを活用しようと考えた。習峰村だけでなく、近隣の村にまで声をかけてみると、働きたいというママさんが多く集まった。
彭敏芳さんの会社で働くママさんは、平均して月3000元(約4.8万円)の収入を得ている。「以前の農村のママさんたちは、夫が都会で稼ぐお金で生活するしかなく余計なお金は持っていませんでした。夫に、稼ぎが少ないと文句を言うことも多かったのです。それが今では、自分でお金を稼ぐようになりました。お金を稼ぐことの大変さもわかるようになり、夫婦の関係も以前とは違ったものになったと思います」。
彭敏芳さんは、この会社をまだまだ拡大していこうと考えている。それはお金儲けだけでなく、農村の女性の意識改革にもなっているからだ。「重要なのは、家庭を守る女性にもできることはあるということを知ってもらうことです。家事と仕事は両立できるということを知ってほしい」。
▲仕事中の彭敏芳さん(左)。最近では、大学を出た若者が故郷に帰り、特産物の販売を事業化する例も増えている。
地方政府も後押しをするママさん起業
県政府も後押しをしてくれた。彭敏芳さんが起業したばかりの頃は、自宅で辣椒醤を作り、出荷をするという小規模なものだった。しかし、素人の集まりであったため、包装がしっかりしていない、異物が混入するなど、クレームばかりだった。衛生管理がしっかりとできる工場が必要だと考えた彭敏芳さんが県政府に掛け合うと、1000万元(約1.6億円)の投資をしてくれた。これにより工場が設立でき、彭敏芳さんの仕事は軌道に乗った。
さらに拼多多の出現が大きかった。「辣妹子」(ラーメイズ)というブランドを作り、辣椒醤がよく売れた。これにより、農村の企業としては、かつてない速度の成長をした。
このような農村起業は、辣妹子だけではない。EC、特に地方特産品の販売に力を入れている拼多多では、無数の農村企業が特産品を販売している。辣妹子のようにママさんの会社や、高齢者が集まった会社が多いが、最近では、大学を卒業した若者が、わざわざ故郷の農村に帰って、EC企業を起業する例も増えている。
農村の収入を上げる政策はずっと昔から行われてきたが、大きな効果があったとは言えない。しかし、ECの登場により、この10年で、農村でも収入が得られる道が増えている。
▲彭敏芳さんが創業した「辣妹子」。拼多多ではよく知られたブランドになっている。