3月になって杭州市で謎の無人カートが公道を走行しているところが目撃され、ネットで大きな話題となっている。これは、菜鳥物流が開発した無人配送車の公道試験だったと新智駕が報じた。
杭州市で目撃された謎の無人カート
3月頃から、杭州市で、無人の小さな車が公道を走行しているところが目撃をされ、写真や動画撮影され、ネットで大きな話題になっていた。これは菜鳥物流の無人走行カートではないかと言われていたが、3月24日に深圳で催された技術フォーラムの席上で、菜鳥物流で「菜鳥小G」の父と呼ばれる陳俊波氏が、菜鳥物流の無人カートであることを認めた。さらに、菜鳥物流は年内にも無人カートの量産を始めることを明らかにした。
▲杭州市で目撃され、ネットで話題になった無人カート。速度は歩行者並みだが、ちゃんと信号を感知して、赤信号では止まる。
衝突を避け、自律的に走行する無人カート
この無人カートには「菜鳥ET実験室」という文字が記載され、速度はゆっくりで歩行者程度であるが、車道を走行し、ちゃんと信号を見分け、赤信号では自動停止する。多くの人が気にもせず接近しないが、前にバイクなどがいた場合は、速度を落とし、停止する。もちろん、誰かがリモコン操作するわけではなく、人工知能が自律的に操縦をしている。
▲ネットで拡散した動画。夕暮れの杭州市をゆっくりと進む菜鳥小G。途中で、自動車が被せるように割り込んで右折するが、ちゃんと停止をして衝突を避けている。
すでにアリババ社内で使われている無人カート
菜鳥ET実験室は、2015年末に創設され、現在までに「菜鳥小G」「菜鳥小G II」「菜鳥小G Plus」のほか、名称未定を含め、4種類の無人カートを開発している。
2016年9月に開発された「菜鳥小G」は、現在でもアリババの本社内で荷物を運搬する目的で利用されている。2017年9月に開発された「「菜鳥小G II」も、アリババ本社内で使われているが、自動でエレベーターに乗り降りし、ビル内も走行することができるようになっている。
2017年11月に開発された菜鳥小G Plusは、公道走行をする目的のもので、浙江大学キャンパスで試験走行が行われ、現在、アリババ本社と菜鳥物流本社の間を公道走行し、荷物や郵便の受け渡しを行っている。今回、目撃されたのは、この菜鳥小G Plusで、年内にさらに次世代版を開発し、これを量産することになるという。
高精度地図とセンサーで環境を把握
菜鳥小Gは、複数のセンサーを組み合わせて周囲の環境を把握している。レーザー、超音波、カメラ、GPS、加速度センサーを組み合わせて使っているという。このセンシングデータと高精度の地図を重ね合わせ、環境の中から静止しているもの(信号、中央分離帯など)と動くもの(車、バイク、人など)を識別し、動くものについては、人工知能を使い、常に動きを予測し、自分の行動を決定している。
盗難防止策も施されている
このサイズのカートが公道を走ると、盗まれてしまうのではないかと危険性がある。また、停車中に後方から自動車が衝突する危険性もある。菜鳥小Gの後方には監視カメラと異常振動センサーが備えられていて、盗難、衝突などの事態が起こると、すぐにセンターにアラートを発し、GPSによる位置情報を送信し続けるようになっている。
▲菜鳥物流が発表した将来の計画。菜鳥小Gの開発は終了し、次はトラック、トレーラーなどの大型貨物車の無人運転に挑戦するという。菜鳥小Gで開発技術を応用すれば、基本は同じなので、開発は難しくないという。
次はトラックの無人運転に挑戦をする
今年、菜鳥小Gを量産することで、開発ステージは終了し、運行、運営ステージに移行する。開発チームは、菜鳥小Gで開発した技術を応用し、トラックの無人運転に挑戦をしていくという。サイズが急に大きくなるため、難しいようにも思えるが、菜鳥物流によると、基本的な原理は同じであるため、開発期間はさほど必要ないとしている。
中国の無人運転車の開発は、百度がリードしているが、百度のアポロは、人を乗せる無人運転車を目指している。一方で、その他の企業(アリババ系の菜鳥物流や上海汽車などの自動車メーカー)は、貨物を乗せる無人運転車を目指している。事故リスクを考えると、実用化は貨物用の無人運転車の方が早い。中国は、年内にも無人自動車が公道を走る国になる。