みんなの疑問
いただいたお問い合わせ、ご意見に対する回答をご紹介します。
※回答内容や回答者の所属等は、掲載当時のものになります。
お問い合わせ一覧
Q.ペットボトルは回収され「再利用」されていますが、なぜ回収後に洗浄して使う「再使用」ボトルができないのでしょうか。瓶製品はできて、ペットボトルができないはずがないと思うのですが、再使用されない理由は何ですか?
→資源循環領域 寺園上級主席研究員が回答しました。(2021年8月27日)
Q.最近、市街地や住宅地、室内外などさまざまな場所で、香料が臭いとの話を聞きます。柔軟剤や洗剤など、家庭用品から排出される香料やVOC(揮発性有機化合物)成分の大気での影響について教えてください。
→環境計測研究センターの複数の研究者に話を聞き、対話オフィスが回答しました。(2018年5月24日)
Q.福島第一原発事故により環境中に放出された放射性物質のうち、セシウムだけでなくストロンチウム90も人体への危険が大きいと聞きます。国立環境研究所ではストロンチウム90の調査を行っていないのでしょうか?
→A.福島支部 環境影響評価研究室 林室長が回答しました。(2018年2月26日)
Q.欧州のサーキュラーエコノミーについて教えてください。
資源効率を高めることで、私たちの暮らしへの直接なインセンティブはあるのでしょうか?
→A.循環型社会システム研究室 田崎室長が回答しました。(2018年1月23日)
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A.ペットボトルのリユース(再使用)については、2008~2009年くらいにかけて環境省で検討され、実証実験(※注)も行われました。
広く一般に流通させるシステム(オープンシステム)では高い回収率が見込めないことから、特定の流通ブランドや生協のような閉じたシステム(クローズドシステム)であれば可能性があるという考えもあったと思います。また、容器の統一規格も考える必要もありました。
結果としては、一定の輸送範囲内であれば環境負荷も小さく、導入が望ましいということにはなりましたが、「専用の洗浄設備や、十分な品質管理体制の構築、誤用を防ぐための措置が不可欠」とも指摘されました。
流通関係者は、タバコや農薬など、使用後に何が入ったかわからないものを洗浄して検査することに非常に神経を使います。ガラスびんでも同じ問題が懸念されますが、ペットボトルだとガラスびん以上に、何に使われるかわからないという見解です。
また、ペットボトルを再使用する場合、一定の傷がつく可能性があるため、消費者がそれに慣れて選択し、購入、返却を行うことも必要です。
このほかにも、回収を促すにはデポジットなどが望ましいですが、店舗での返金方法、保管場所の問題など、日本では対応が非常に難しくなっています。
以上のように、再使用は回収・洗浄・検査・再充填を行って、多少のリスクやコストがかかっても責任を持って流通させる人たちや、それに応える消費者がいなければなりません。
環境省の検討から10年以上経過しましたが、日本ではペットボトルの再使用は非常に難しく、マイボトルやリサイクルなどの方が進んでいるのが現状になっています。
(解説:資源循環領域 寺園上級主席研究員)
※注
・環境省「ペットボトルリユース実証実験結果の取りまとめ」はこちら(外部リンク)
・実験結果の取りまとめ資料はこちら(外部リンク/PDF ※まとめはP.9以降)
A.一般的には、香料として使用されている多くのVOC(揮発性有機化合物)は植物由来の天然VOCだそうです。天然VOCは多種類かつ大量に、大気に含まれていることが様々な調査で示されており、種類によっては自動車排ガスや事業所排出など、人為由来の人造VOCよりも多い、とのことです。
ただ、ある研究者は「ベンゼン、トルエンなどの人造VOCの毒性については長い研究の蓄積があるが、天然VOCに有害性があると認識されることは少ないか、または、健康に良いと受け止める傾向が強く、研究報告は少ない」と話しています。
また「大気中の天然VOCが、自然の植物から直接排出されたものか、家庭用品の香料に由来するものかを区別することはできないと思います」とも言います。
一方で、別の研究者からは、「香料に対する苦情には注目している」という意見が聞かれました。この研究者は、柔軟剤や洗剤の匂いがつらいと訴える香気アレルギーの方から「最近、街中に匂いがあふれていて生活にも困る」「自分で使うものは、まだ選べるが、他人からの匂いはどうにもできない」「何でもない人には分かってもらえない」という悩みを聞いた、と言います。
香料被害については、下記の参考資料(※注1)の紹介を受けましたので、ご覧下さい。
また、海外の研究事例を紹介してくれた研究者もいました。
この事例は、今年2月の科学雑誌サイエンス誌に掲載された、香料などに起因する大気汚染の論文(※注2)で、この論文では、香料を含む家庭用品に由来するVOCの放出量は都市域のVOC放出量の約半分とかなり大きい、と指摘しています。
この研究者は「自動車の排ガスなどがクリーンになってきて、家庭用品の重要性が相対的に増しているようだ」と話しています。
※注1
・環境省「におい・かおりについて」はこちら(外部リンク)
・静岡県調査「ちょっと気になる柔軟剤の香り成分」はこちら(外部リンク/PDF)
※注2 紹介している論文はこちら(外部リンク/英語)
A.ストロンチウム90の広域モニタリング調査は、環境省(※注1)、文科省(※注2)が実施し、ストロンチウム90による環境汚染のおおよその実態は把握されており、放射性セシウムに比べその存在量は非常に少ないことが判明しています。
一方で、我々の災害環境研究プログラム(※注3)では、主に避難指示解除区域を対象に、地域住民の生活環境おいて、どの程度のリスクがあるのか(リスク評価)、そのリスクを避けるためにはどうすればいいのか(リスク管理)に役立つデータの取得を目的としています。
その観点からは、対象区域におけるストロンチウム90は、影響は極めて小さいと考えられます。
また、そもそもストロンチウム90の存在量が少ないため、飛散したストロンチウム90がどこに移動しているのかを把握(挙動評価)するための測定には、多大な時間とコストが必要です(※注4)。
これらのことを踏まえ、暮らしや健康への影響が、ストロンチウム90よりも、明らかに大きい放射性セシウムの測定・調査に、研究スタッフや財源などを優先的に割り当てることが望ましいと判断しています。
ただ、広く環境中に存在するストロンチウム90の移動と再集積、生物への移行を明らかにすることが当研究所含め研究機関の役割であることは理解しています。
そのため、ストロンチウム90についてより効果的に分析する体制づくりは重要であると考えています。
これまでにも迅速な分析手法の開発と、水、土壌、生物試料での分析への適用を実施(※注5)しました。現在も測定方法の簡易化の研究等は継続(※注6)しています。
(解説:福島支部 研究グループ長/環境影響評価研究室 林室長)
※注1 環境省調査はこちら(外部リンク)
上記ページの最後に、「水生生物」のカテゴリーがあります。1~3か月ごとにわかれている調査結果の中からご希望の期間をクリックしていただき、「調査概要及び結果」欄にある「調査結果一覧」のPDFをご参考ください。PDFの資料では、水域と底質それぞれについて、データ表の一番右端の列にストロンチウム90の測定結果が記載されています。一例として、平成28年度12月調査結果(外部リンク/PDF)を添付しましたのでご確認ください。放射性セシウムに比べて非常に濃度が低いことが判断できます。
※注2 文科省調査はこちら(外部リンク/PDF)
上記ページの3枚目にある次の記述をご覧ください。「セシウム134、137の50年間積算実効線量に比べて、プルトニウムや放射性ストロンチウムの50年間積算実効線量は非常に小さいことから、今後の被ばく線量評価や除染対策においては、セシウム134、137の沈着量に着目していくことが適切であると考える」
※注3 災害環境研究プログラムについてはこちら(外部リンク/PDF)
上記ページ内「災害研究プログラム」の「PG1:環境回復研究」で、放射性物質により汚染された地域の環境回復を目的にしています。
※注4 ストロンチウム90の測定には、現在、公定法(文部科学省法)と迅速法(固相抽出ディスク法)の2通りが用いられています。放射性ストロンチウムはβ線のみ放出するのでそのβ線を測定するのですが、γ線と違って固有のエネルギーを持たないため、試料からまずストロンチウムのみを抽出する前処理が必要となります。前処理については、公定法では20段階以上の化学処理を要します。さらに、より精度良く測定するためイットリウム90へ壊変させるために、前処理後測定まで2週間は静置しておく必要があり、全体として測定までに2から3週間の時間を要します。
※注5 国立環境研究所「災害環境研究成果報告書」より。詳細はこちら(外部リンク/PDF※230ページ参照)
※注6 国立環境研究所「PG1(放射能汚染廃棄物) 環境回復研究プログラム」より。詳細はこちら(外部リンク)
A.エネルギーに比べると、資源の消費削減のインセンティブが低いのはご指摘の通りです。
日本の一部の企業からも、資源への取り組みが進まない理由として、同じような理由が挙げられているようです。
ただ、欧州の「サーキュラーエコノミー」においては、ごみのリサイクルを無理に進めて、リサイクル品をなんとか使ってもらうというのではなく、いかに経済的価値のあるリサイクル素材・リサイクル品を創り出すかという発想がポイントになります。
天然資源よりも、循環資源を使うことに経済性がでるような状況を目指すため、そこに到達してしまえば、インセンティブの議論が不要になるとも言えます。
またサーキュラーエコノミーでは、経済性だけでなく、リサイクル素材は品質が悪い(粗悪品)といった認識を払拭できるように、品質基準を作るといった取り組みもされています。
サーキュラーエコノミーでは、雇用効果や経済性を強調しすぎるため、本当にそこまで実現できるのかについての議論はありますが、日本のこれまでの方向性とは違う側面が入っているので、今後の動向や日本への影響は注目どころになりそうです。
サーキュラーエコノミーは、日本では「循環経済」と訳されていることが多いので、関連事項を調べる際には検索語として、この用語も使用されてみるとよいと思います。
(解説:資源循環・廃棄物研究センター 循環型社会システム研究室 田崎室長)