五箇さんに聞く!「“外来種”は悪者?」 | 国立環境研究所
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五箇さんに聞く!「“外来種”は悪者?」
-“外来種問題”から学ぶ、自然との向き合い方-

はじめに

 テレビ番組『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』の人気を受け、“外来種”、そして“外来種問題”への注目が高まっています。

 SNS上では番組が放送される度に、「在来種を守るために外来種の駆除は仕方ない」、「外来種も被害者。悪いのは捨てる人間」など、さまざまな立場や角度からの意見が投稿され、議論になっています。

 最近では、番組内で捕獲された魚が専門家によるきちんとした扱いを受けておらず、大量死していたことがニュースになるなど、外来種だけの問題にとどまらず、命ある生物全体の話としてより広く多くの方に知られるようになりました。

 では、そもそも“外来種”とは何で、私たちは何を議論しているのか?そして、この問題をどのようにとらえたらいいのか。

 テレビでもおなじみ、保全生態学者としてさまざまな分野で活躍する国立環境研究所(以下、国環研)の生物・生態系環境研究センター 五箇公一室長に話を聞き、対話オフィスが記事をまとめました。

 外来種問題から私たちが学ぶべきこと、そして自然との向き合い方について考えていきたいと思います。

五箇さんの写真

今回話をきいた生物センターの五箇室長。後ろには五箇さん直筆のイラストがずらり。

 目次 

“外来種”って何のこと?

 言葉やイメージが先行しがちな“外来種”ですが、これは動物だけを指すものではありません。

 五箇さんによると、「外来種とは、人間の手によってもともと生息していた場所から別の場所に移送された生き物」とのこと。もちろん、この生き物には、動物、昆虫、植物などすべての分類群が含まれます。

 そしてこの外来種には、もともと日本にいた在来種の日本国内での移送(本州に生息していた生物が、人の手により生息していなかった北海道に持ち込まれたなど)も対象となります(“国内由来の外来種”)。

 しかし環境省が定める“外来生物法”では、日本の外から持ち込まれた外国産種の生物に対象が絞られており、さらに明治時代以降にやってきたものを中心に対応しています。

 明治時代より前にもさまざまな生物が日本に入ってきましたが、ではなぜ、規定では明治時代以降なのでしょうか?

 昔は、人間も含め生物は自力で移動していたため、たとえ生物が人間とともにやって来たとしても、長時間の移動に耐えれるようなものしか辿り着くことができませんでした。

 また、その当時は到着した土地側の自然環境もかなり残っていたため、外から生物がやって来ても在来の生態系に入り込む余地がなく、その土地にはびこるだけの力はなかったそうです。

 しかし、私たちが化石燃料を手に入れたことで、移動や運搬などに使われる時間や速度が変化し、これまでの“人間という生物”としての枠を大きく超えた移動・移送能力を手に入れました。

 一度に多くの外来種が、簡単に速く移動できるようになり、入ってこられる側の生態系はそのための適応が追い付かず、また自然破壊が進み生態系が弱体化してしまったことで、外来種の侵入が進んでしまったのです。

 「そうした外来種増加が顕著になったのは、日本では明治時代以降から。外来種問題は、いつだって人ありきの問題」と五箇さんは話します。

殻ぶき屋根の小屋の写真

“外来種”=すべて悪者?

 では、日本の外から入ってきた生き物、“外来種”はすべてが悪者なのでしょうか?

 外来生物法により、法律で駆除対象に指定されている外来種は、“特定外来生物”と呼ばれます。よく知られているマングースやアライグマなど、畑を荒らしたり、人間に有害な毒や病気をもたらしたり、本来の生態系や人間に害をなすと断定されたもので、現在は148種が指定されています。

 入ってきては消えてを繰り返す外来種ですが、だいたい今わかっているものがおおよそ2千種類といわれる中、決して、すべての外来種が悪者というわけではありません。

 例えば、いわゆるクローバーで知られる『シロツメクサ』

 ハイキングコースなど人の手が入った山の中や、住宅街の道端、公園、空き地など、さまざまな場所で見かけますが、このシロツメクサは外来種です。

 でも、あまりにも昔から私たちの身近にあり、見慣れているこの植物を「外来種だから」と悪く言う人はそんなにいないですよね。

シロツメクサの写真

 その他にも、長いこと日本の亀だと思われていた『クサガメ』は、江戸よりも前の時代に中国から持ち込まれた亀らしく、前出の外来生物法における定義には当てはまりませんが、広い意味で外来種ということがわかりました。

 今になって、在来種であるイシガメと雑種を作ってしまうため「駆除しなければいけないのでは?」と問題になっていますが、それまでは在来種として扱われていた生き物でもあります。

クサガメの写真

 日本古来の在来種を守るということには大切な意味があるため、五箇さんも「交雑などの問題は、ただ単に雑種ができるという話ではなく、それにより元いた在来種がいなくなってしまう可能性があるということ。地域固有の遺伝子を持った固有種が失われるということは、長い間かけてきたその進化の歴史がなくなってしまうことを意味する」と話します。

 しかし「在来種の生態系を次世代に残すべきという自然観を主張するのであれば、それはひとつの正義であり、外来種だって生き物、その命をむやみやたらに殺すのはどうかと言う人がいれば、それもひとつの正義になる。生物という命の問題である限り、何が悪いとか正しいとか簡単に判断できる話ではない」と、その難しさを指摘します。

 また最近では、この春(2018年現在)から『アカボシゴマダラ』という蝶々が特定外来生物の指定を受け、駆除対象になりました。理由は、「日本の蝶々に悪影響を及ぼす可能性があるから」。

アカボシゴマダラの写真

 でもアカボシゴマダラの場合は、まだそういった影響を及ぼしたというデータも出ていない中、「昆虫学者による強烈なプッシュで決まってしまった」と五箇さんは話します。

 「モンシロチョウも日本が起源ではないけど(アブラナ科作物が日本に持ち込まれた時にやってきたなどの諸説あり)、春の風物詩のように愛されている。アカボシゴマダラもすごく綺麗な蝶々で、これからモンシロチョウのように風物詩になる可能性だって否定はできない。

 先ほどの交雑の話もそうだが、外来種問題というのは、価値観やアイデンティティーによって受け止め方が全然変わってしまうもの。人によって良い存在もあれば悪い存在もあって、人々の価値観とその多様性に合わせてさまざまな判断がされる」。

 地球温暖化の視点から見ればこんな考え方も。森林伐採などで山林を切り崩せば、そこにある緑、自然は失われ、問題となっている二酸化炭素の吸収源が少なくなります。

 極端ではありますが、そこに外来性の植物が入ってきて生息することになれば、二酸化炭素吸収源としての自然の機能は回復します。それが日本由来のものがいいのか、外来種だと悪いのか、その答えに唯一無二の“正解”というものはありません。

森林の写真

大切なのは、“外来種”というくくりではない

 人間への脅威を問題とした場合、原因となる生物は外来種に限ったことではないと五箇さんは指摘します。

 特に懸念しているのが、熊、イノシシ、鹿などの害獣問題です。畑を荒らすだけでなく、最近では人を襲って死亡事故が起こるなど、大きな社会問題にもなっています。

 その他にも、環境の変化により現代になって問題視されるようになった動物もいます。

 『ハクビシン』は江戸時代あたりから日本に生息し、法律の定義では外来生物には当てはまりません。

 当時はキツネやタヌキなどの競合種がいたため、あまり目立ってはいなかったのですが、今では都市化が進み、キツネ、タヌキが姿を消してしまった分、ハクビシンが増えてしまい問題になっているそう。

ハクビシンの写真

 都市環境に適応したハクビシンは、空き地など人間社会に近いところを住処にして繁殖し、農作物を食べたり、住居侵入による糞尿被害などをもたらすことにより、私たちに害を及ぼす存在になってしまいました。

 五箇さんは、こういった“外来生物”以外の生物の問題について、次のように指摘します。「今となっては明らかに“有害な外来種”と言えるのに、法律上は何もすることができない。

 時代とともに外来種も変わってきており、それこそシロツメクサがいつ人間に牙をむくかわからない。さらに外来種に限らず、熊、イノシシ、鹿など在来の鳥獣による被害の問題もある。

 もはや生物界と人間の関わりという部分で引き起こされる問題とは、外来種も在来種も区別なく、“生物多様性”(※注1)そのものが“人間”という社会に牙をむいている状況。我々にとって有害となる存在を管理、コントロールできなくなっていること自体が、今の人間社会にとって深刻なリスクになっている」。

 生物の数が増えすぎるなど、そのバランスが崩れることで生態系や人間社会に悪影響を及ぼすのであれば、外来種、在来種に関係なく、そのための管理が必要であり、外来種も生態系管理の一環としてとらえる必要があるのです。

※注1 生物多様性とは?
さまざまな生態系に、さまざまな種が、さまざまな遺伝子を有して生きていること(枝廣淳子著『私たちにたいせつな生物多様性のはなし』より)。人間も、生物多様性の一部。

誰がこの環境を作ったのか?

 では、外来種がはびこり、野生動物が社会に害をなす今の環境を作ったのは誰なのでしょうか?それは紛れもなく、私たち人間です。

 これまでの話にあったように、外来種というものは人がいなければ持ち込まれることもなく、生態系を崩すほどはびこることもできませんでした。

 「そもそも生態系というものは、椅子取り合戦のように種が生息場所=席を埋め尽くしているため、本来なら外からは新たな種がなかなか入り込めないもの」と五箇さんも話します。

 日本にいる外来種の侵入経路はさまざまですが、例えば今問題になっている『アライグマ』は、ペット用に連れて来られたものが飼育の難しさから遺棄されたり、動物園から脱走して野生化したという経緯があります。

アライグマの写真

 外来種問題でよく挙げられる『マングース』も、ハブやネズミの駆除を目的に、人の手によって日本にやってきました。

マングースの写真

特定外来生物に指定されているのは、「ジャワマングース」と「フイリマングース」。

 その他にも、同じく生態学的に有害な外来生物とされる『ウシガエル』『アメリカザリガニ』は、明治・大正時代に食用や養殖用餌のため日本に持ち込まれたもので、戦中・戦後には貴重な食糧源にもなっていました。

 その後、食生活が豊かになり人々がそれらを食べなくなると、そのまま放置され、結果、日本の生態系を脅かす存在となってしまいました。

ウシガエルとアメリカザリガニの写真

 外来種問題には、時代とともに変わる人間の生活スタイルや価値観の変化が常に影響しており、そうした生き物の境遇はいつだって私たち人間の都合によって左右されているのです。

 そしてもう一つ、自然環境そのものの変化もこの問題に大きく関係しています。

 私たちにとって身近な、今の日本の自然とその多様性は人が作り出したものであり、本来ならば何もせず放っておいた場合には、強い木だけが最終的に遷移(※注2)して極相林(※注3)に覆われた状態になると考えられます。

 鬱蒼(うっそう)とした真っ暗な森の世界では、草花が育たず、住んでいられるのは大型鳥獣類だけになります。

 現代のように、これだけさまざまな小動物や草花が住めるようになったのは、私たちの祖先が森林を切り開いて土地を開拓したからであり、ため池、田んぼなどを作ったことでいろいろな小動物が住みつくようになって、結果的に生物多様性が豊かになりました。

 そのおかげで生態系サービス(※注4)や機能が循環的にまわり、私たちはこの小さな島国で1万年以上も変わらず生き続けてきたのです。それこそ、「日本人自身が日本の生物多様性を築き、共生してきたという歴史」と五箇さんは話します。

作物畑の写真

 一方で、「今ある生物多様性というのは、日本人が自ら生きていくために作り出したものだと考えると、人間はナチュラルな本来の自然では生きていけないということ。自分たちに住みやすい環境を作るのと同時に、自分たちに恩恵を与えてくれる生き物が配備されていることで人間は生きている」とも。

 番組『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』のため池をはじめ、外来種がいるエリアは、森を切り開いて畑や住宅地にしたところなど人為的な環境が多く、結局、外来種にそういった場所を与えているのは人間自身であり、そこに在来種だけいてほしいと言っても、そういう劣悪な環境では在来種はもたないという問題もあります。

 「環境の劣化により、人間にとっても生物にとっても、今は非常に住みにくい環境になりつつある。外来種を入れるのも人間、はびこらせる環境を作っているのも人間という意味で、外来種問題は単に外来種を駆除してお終いというものではない。

 単に外来種が増えて大変ということでもなく、“外来種”というものがここまではびこるようになった、今の世の中が何なのか?というのを考えないと意味がない」と、五箇さんはこの問題の根本を指摘します。

※注2 遷移とは?
何もない状態の土地から森林ができるまでに、その過程に合った植物が時間の経過とともに入れ替わり立ち替わりながら生息すること。
※注3 極相林とは?
植物が遷移を経て、最終的な状態(大きな変化のない安定した状態)に達した森林のこと。
※注4 生態系サービスとは?
生物・生態系に由来し、そこから得られる人類の利益になる機能(サービス)のこと。例えば、衣食住の材料、きれいな空気など、自然から得られるさまざまな恩恵のこと。

私たちの暮らしの変化による影響

 こういった問題の背景には、「我々人間の“自然”に対する向き合い方が変わってきていることが、大きく影響している」と五箇さんは話します。

 昔はあった、“自然”に対する畏怖や敬愛の念というものは失われつつあり、これまで人間の都合で好き勝手に自然に手を加えてきました。

 これは、私たちがあまりにも無防備に自然に立ち入りすぎたことを意味するのと同時に、私たち自身が、自然にいる生物を人間社会に招き入れてしまったということでもあります。

 五箇さんは、「熊、イノシシ、鹿もそうだが、外来種の問題を含め、人間が野生生物の脅威にさらされるようになったのは、我々が山林の管理を怠り、里山というものを放棄したことによって、人間社会と自然との境界線が曖昧になってしまったことにある。

 まずは、きちんと生き物たちとの間に境界線を作り、そのゾーニング(区分をわけること)をした上で、生き物たちの恵みを自分たちで管理するような社会を作ることが大切。生き物たちとあいまみれて仲良く暮らすことが、生物多様性ではない」とも話します。

山間にある田畑の写真

 またこの問題には、私たちのライフスタイルの変化も関係しています。

 江戸時代の鎖国に始まり、資源の消費、輸出入を制限していた時代から、明治の文明開化、戦争などを経て日本の国際化が進み、現在では68港湾の国際港が日本にはあります。今では天然素材を含む、さまざまなものを国外からの輸入に頼っている状態です。

 輸入量が増えるということは、外から大量に日本にものを入れているということであり、それにともなって、虫や動物も入ってくる機会が増えているということでもあります。

 輸入する際に港でそれを食い止めるにしても、いちいち検疫をしたら時間はかかるし、万が一、何か問題のある生物を発見し荷物の引き取りを拒否した場合には、相手側からも日本の輸出品買い取りを拒否されるといった貿易摩擦が起こる原因にもなりえます。

 昔の里山時代の暮らしから大きく変容し、資源循環型だったライフスタイルから消費型へと変わってしまった現代。外来種問題は、ここに直結した話でもあるのです。

 「今の我々のライフスタイルこそ外来種を招いている暮らしであり、そのリスクや危険性に結びつけて考えないといけない。国内できちんと資源循環ができる、我々の需要を我々が供給する社会作りを展開することができれば、外来生物侵入リスクの低減にもつながる」と、五箇さんは指摘します。

港のコンテナの写真

これから、私たちが目指すべき方向とは?

 では、具体的な対策として、私たちに何ができるのでしょうか?

 五箇さんは、「まずは自分が住んでいる地域に関心を持ち、自分たちの身の回りの理想的な生態系や環境とは何かを、地域単位で考えることが大切」と話します。

 「20年ぐらい外来種問題を取り扱っているが、結局、生物多様性のベースとなるローカリティ、地域の固有性というものをどう守るのかこそが重要なポイントであり、ようするに地域の人たちが自分たちの暮らす場所の自然とどう向き合ってどう決めていくかが、外来生物問題を解決するためのプロセスだということに気づいた。

 主体性は、地域にゆだねられるべきだ。例えば、池の水が汚れているからきれいにしようという判断がされた中で、そこに外来種がたくさん生息していたことがわかったとする。

 その地域の住人が外来種がだめだと思うなら排除するといった、常に地域の人の意思決定が働くようにすることが大切。もし駆除されたら困るという意見でまとまれば、その意思決定はまた尊重されなくてはならないだろうし。

 もともと地域の環境や自然というのは、そうやって守られてきた。そしてそれが、昔の里山時代のローカルなコミュニティを形作ってきた。学者がああしろこうしろと決めるものではなく、また国がああしろこうしろと指図する話でもなく、地域の人たちでどうしたらいいか考えることが大事」。

 また五箇さんは、自分の住む地域を第一で考えられるようになること(地方主義)は、結果的に地域の活性化につながり、それが自然環境を守ることになるとも話します。

 例えば、地方で問題になっている過疎化や高齢化。これは人が住まなくなり、その土地が管理されなくなることを意味します。

 もともと管理されていた土地から人の手が離れるということは、その地域の生物多様性の劣化に影響し、結果的に、有害獣が山から下りてきたり、外来生物が侵入しやすい環境を作っていることでもあるのです。

 地域のローカリズムを取り戻すことができ、それがまず第一次産業(農業、林業など)をきちんと管理する方向に進めば、自然環境を守ることにつながります。

 そして、産業基盤ができあがれば、地域の中で物質が循環することにより経済も豊かになり、さらに人が住みやすい環境へと整えることができるのです。

段々畑の写真

 この循環がうまくいけば、最終的な形として都市集中型の社会構造から地方分権へと体制を変えることができると、五箇さんは構想します。

 「第一次産業をしっかりさせるということは、自然を大事にすることにつながる。そして地元の産業が元気になれば、就労人口も増えてくる。地域が活性化すれば人も戻ってくるし、そうすることで自然、そして生物多様性が戻ってくる」。

 第一次産業の活性化は、地産地消という形でその地域に暮らす住民の資源や食を補うことになり、外からの輸入に頼ることのないかつての資源循環型の社会へとつながっていくのです。

 さらに五箇さんは、「そういう社会になれば、外来種問題なんて消えてなくなる。日本国内で資源をまわすことが出来るんだから。輸入量が減って、なおかつ自然が豊かになれば、外来種が入り込む隙間もどんどん減っていく。これは、アジア全体の生物多様性を守るうえでも重要なこと。

 これだけ国内林を放置しておきながら、日本は外材を輸入して使っている。これは熱帯林の環境破壊にも直結している問題。日本がもし今の資源消費型から資源循環型に社会を転じることができれば、アジア全体において生物多様性を保全する上でも重要なカギを握ることになる」と、地域の活性化はグローバルな問題の解決にも関連していると話します。

森林の写真

おわりに

 “外来種問題”が話題になると、最初に出てくる生き物の命についての話。

 でも色々と話を聞いてみると、この問題にはそれだけではない要素がたくさん含まれており、自然環境を巡るさまざまな問題とも複雑につながっていることがわかります。

 もちろん、生物の話である以上、命について考えることはとても大切なことです。

 五箇さんも、「なぜ外来種を駆除するのか?その理由をきちんと考える必要がある。ただ法律で決まっているからという理由だけで駆除をするのは、絶対によくない」と、とあるインタビュー(日本自然保護協会会報『自然保護No.542』の「今、改めて知りたい外来種問題」より)で答えています。

 命を扱う問題に正解はなく、立場や考え方により、正義は人それぞれ異なります。そういったことよりも、まずは私たちができることとして、自分の住んでいる地域に目を向け、どうしていきたいか意見を交換し、地域全体で関心を持って考えることから始めてみてもいいのかもしれません。

 今回の記事でご紹介したように、今私たちの周りではさまざまな環境問題が起こっており、“外来種問題”もそのひとつと言えます。

 “外来種”に対する疑問から始まった五箇さんへのインタビューですが、それに限らず、私たちが暮らす社会と自然との関係について、今一度、目を向けるきっかけになりました。人間も動物も自然も、すべての生物が暮らしやすい未来に向けて、多くの方が考える機会になればと思います。(終)


[掲載日:2018年6月25日]
取材協力:国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 生態リスク評価・対策研究室 五箇公一室長
取材、構成、文:前田 和(対話オフィス)

参考関連リンク

●環境省「特定外来生物等一覧」(外部リンク)
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html

●国立環境研究所「侵入生物データベース」
・シロツメクサ
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80160.html
・クサガメ
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/30030.html
・アカボシゴマダラ
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/60400.html
・アライグマ
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10150.html
・マングース
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/80160.html
・ウシガエル
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/40020.html
・アメリカザリガニ
https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/70320.html

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