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1年11ヶ月ぶりとなるアルバムは、いつにも増してCoccoの歌声の美しさが耳を惹く。1月にリリースされた“飛花落花”では壮大なストリングスサウンドと疾走感溢れるビートに乗る、力強くドラマチックな歌唱に引き込まれたが、今作1曲目の“クジラのステージ”では透明感のある歌声が《終りがやってくるの?/終ってもいい日が来るの?》と歌い、“OKINAWAN BLUE”では英詞と日本語詞、そして琉球語も交えた憂いを含んだ歌声で沖縄の痛みや不条理を浮かび上がらせる。Coccoの歌は悲しみや痛みを隠さず表現するからこそ聴く者の心を癒す力を持つのだと、今作で強く実感する。《みんな幸わせに/なれたらいいのに》と願ったあとに《なんてファンタジー》と覆さざるを得ない悲しい現実を綴る“ファンタジー”からしてまさにそうだった。そして“春荒らし”の胸を抉るような悲しみも、“哀想歌”や“Sweet silence”の切実な喪失感も、どこか鎮魂の響きが滲む。繊細で力強い、ピュアなCoccoの歌声が光のようにあたたかい。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年4月号より抜粋)
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