「唐揚げ専門店がタピオカ跡地に乱立 出店急増、3つの理由」という記事を公開してからちょうど1年が経過。唐揚げ店は一転、閉店ラッシュに向かっている。長引くコロナ禍で巣ごもり需要は堅調なものの、店舗の乱立で過当競争気味になっているのが原因だ。ワタミが運営する「から揚げの天才」は、のり弁をはじめとするテークアウト弁当に進出することで、引き続き脱・居酒屋を目指す。
「大好きだったのになあ、さびしい」「デカから、おいしかったです」「今までありがとー!」……
2022年3月下旬、山手線五反田駅西口、国道1号線を渡って数分歩くと、テレビプロデューサーのテリー伊藤氏をかたどったキャラクター像が目に入った。揚げたての唐揚げとテリー伊藤氏監修の卵焼きをウリにした唐揚げ専門店「から揚げの天才」の五反田店だ。だが店頭に設置した大きなボードには、惜別メッセージが多数書き込まれていた。冒頭のコメントはその一部である。20年10月にオープンした五反田店は、22年3月31日をもって閉店した。
から揚げの天才は、18年11月の1号店、梅屋敷店(東京・大田)出店を皮切りに、20年に入って新型コロナウイルス感染拡大下の巣ごもり需要を見込んで出店を強化し、21年7月オープンの下板橋店(東京・板橋)で100店舗を出店。21年10~11月には112店舗に到達していた。
ところがそれ以降、出店ペースが鈍化。閉店店舗数が上回り、店舗数は純減に転じている。名古屋初出店だった21年7月オープンのアズパーク中川店は半年後の同年暮れに閉店し、21年5月オープンの大倉山店(横浜市)も22年2月に閉店するなど、1年もたないケースもあった。22年3月31日に五反田店と笹塚店(東京・渋谷)が閉店し、店舗数は22年4月1日時点で98店と、100店舗を割り込んでいる。
ちょうど1年前、「唐揚げ専門店がタピオカ跡地に乱立 出店急増、3つの理由」と題する記事を書いた。唐揚げ専門店の出店が相次いでいる様子を描いたものだが、その最終段で以下のように記している。
出店が相次ぐ唐揚げ専門店だが、コロナ禍はやがて収束を迎える。夜の街に人が戻ったとき、乱立気味の店舗は売り上げを維持できるのか。(中略)大量出店から大量閉店に至ったタピオカ店の二の舞は避けたいところ。コロナ禍明けに生き残り競争が幕を開けそうだ。
コロナ禍は21年4月時点で想像していたよりも長期にわたり、巣ごもり需要を満たす業態にとっては追い風だったはずだ。現在も、22年3月21日にまん延防止等重点措置が解除されるのと相前後して再び感染者数が下げ止まりから増加に転じつつある。ところが東京都だけで毎日1万人単位の感染者が出ていた22年1~2月のオミクロン禍で、すでにテークアウト唐揚げ店の淘汰が始まった。
富士経済(東京・中央)の調査によると、唐揚げ専門店の市場規模はコロナ禍前の19年が853億円だったのに対し、20年は1050億円、21年は1200億円と、2年で40.7%拡大。店舗数は19年の1700店から20年2300店、21年は3100店へ、82.4%増と激増している。狭い商圏に競合が乱立しているエリアの店舗や立地条件が悪い店舗から売れ行きが細っていくのは自明だ。
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