「勝間式超ロジカル料理」書評 旧弊改め「自宅での幸せ」説く|好書好日
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「勝間式超ロジカル料理」書評 旧弊改め「自宅での幸せ」説く

評者: 坂井豊貴 / 朝⽇新聞掲載:2020年04月25日
勝間式超ロジカル料理 ラクしておいしく、太らない! 著者:勝間 和代 出版社:アチーブメント出版 ジャンル:食・料理

ISBN: 9784866430652
発売⽇: 2020/03/03
サイズ: 21cm/190p

勝間式超ロジカル料理 ラクして おいしく、太らない [著]勝間和代

 新型コロナの影響で、自宅にいる時間が大幅に増えた。打ち合わせや会議は、オンラインが当たり前になってしまった。全ての業務が可能なわけではないが、いまや相当のことがオンラインでできる。技術革新とはすごいものである。
 本書が教えるのは、そうした技術革新が調理家電にも起こっていることだ。たとえば自動調理の無水鍋。これは私も使っているが、食材を入れてスイッチを押すだけで、プロ級のカレーが自動的にできる。自動的というのは、途中で何もしなくてよいということ。機械が温度を管理するので、味や触感を最適化できる。人間は火加減を見なくてよいので、自分の時間が増える。そのような調理家電が、すでに世にいくつも登場しているのだ。洗濯でいうと、洗濯板から洗濯機への進化が起こったようなものだ。
 もともと著者は経済のコンサルタントである。調理の効率化にこだわるのは、「多くの人たちがいつまでも古い調理法にとらわれているために幸福度が上がらないから」だ。著者が求めるのは、あくまで生活を幸福にすること。そのために旧弊から脱却することだ。だからコラムでは自宅で快適に過ごすための工夫や、便利なアイテムについても語っている。たとえばスマートスピーカーの導入や、運動のための「おうちジム」アイテムなどである。
 結果としてこの本は、自宅で多くの時間を過ごす「コロナ時代」の手引書のようになっている。書かれたのはコロナ騒動以前のはずだが、驚くほど「いま」読まれるべき時代性を獲得しているのだ。仕事中心ではなく、自宅で穏やかな暮らしを送る著者の姿は、いまの時代を生きるひとつのロールモデルとなろう。
 それでもこれが料理本であるのは間違いない。私が一番気に入っているレシピは「トマトと鶏肉の無水オーブンスープ」。スプーンで温かいトマトを潰して口に入れると、とても幸せな気持ちになる。
    ◇
かつま・かずよ 1968年生まれ。経済評論家。中央大学ビジネススクール客員教授。著書に『断る力』など。