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小沢あや
2024年4月15日 (月)

温泉付きリゾートマンションを98万円で購入、200万円でリノベ&DIY! 築75年をレトロかわいいセカンドハウスに大変身 小説家・高殿円さん 伊豆

98万円で買った温泉付きリゾートマンションを約200万円でリノベーション・DIY。小説家・高殿円の夢のセカンドハウス
(撮影:曽我美芽)
『トッカン』シリーズ(早川書房)などの代表作がある小説家の高殿円さん。最近、伊豆(静岡県)の築75年のリゾートマンションの1室を98万円で購入しました。この体験を、2024年4月に発行した同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』に綴っています。

もともと和室3Kだった部屋を、約200万円かけて40平米1Rへとリノベーションし、DIYにも挑戦しました。築古リゾートマンションのリノベで注意した点やDIYのコツを伺います。

産業廃棄物の処理が必要な部分は、業者へ依頼

高殿さんの部屋は、購入した当時、襖で2部屋に区切られた和室だったそう。高殿さんはまずはどこまで工事可能か、同じマンション内でAirbnb(民泊)を借りてシミュレーションすることから始めました。

「古い壁や建材によってはアスベストが混ざっていたり、壁の中に配管が通っていたりすると工事を断られてしまうこともありますから、まず壁や天井をどこまで壊せるのか確認しました」

小説家の高殿円さん

小説家の高殿円さん

産業廃棄物の処理が必要な和室の天井落としや、土壁部分の取り壊しは、業者へ依頼。張るのが難しい総柄の壁紙の処理も、職人さんに頼みました。

「壁紙と床を替えるだけでも、部屋の雰囲気は変わります。私は一点投資型で、ポイントとなる場所にお金をかけて、ほかは安く仕上げるタイプ。今回は壁紙にポイントを置きました」

鳥が舞う印象的な壁紙はドイツのデザイナーが手掛けた作品。上海でプリントアウトして輸入したもので、日本国内で使用したのは高殿さんが初だったそう。部屋の中のフォーカルポイントになっています。

作業の様子を見て、ほかの壁紙の張り替えも工数的に同じ職人へ頼んだほうがいいと判断し、ほかの箇所の処理も合わせて依頼。全部で約40万円ほどかけて壁紙を替えました。

鳥が舞う壁紙が目を惹く。壁紙は10万円以上した奮発ポイント

鳥が舞う壁紙が目を惹く。壁紙は10万円以上した奮発ポイント

床には飲食店などでも使われる硬くて傷がつきにくいサンゲツ(メーカー)の黒いフロアタイルを使用。

「もともと床板は張り替えるつもりだったのですが、部屋の畳を上げたら、木の素材が良くって。そのまま使っても大丈夫だと判断しました。リゾートマンションはもともと超高級マンションですから、築75年経っても使えるほど良い材質のものが使われているのでは、と施工をお願いした職人さんから教えていただきました。張り替え代が浮いた分、フロアタイルにお金をかけました」

キッチンは、木製だったものをすべて取り除き、業務用のステンレスシンクを取り付けました。

「ステンレスって磨けば何年でもピカピカに使えるのでいいですよね。中古品を約2万円で取り付けました。業務用なので、普段の手入れも楽です」

キッチンのガス回りには、名古屋でつくられた燃えにくい素材のステーションタイルを業者に張ってもらいました

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水回りは現状維持のまま、部分DIYに挑戦

水回りは配置を動かすとお金がかかるので、今回は現状維持。お風呂やトイレはDIYして、気に入って使えるように工夫しています。

お風呂場の天井部分などの塗装壁は、表面が湿気にやられ、かびやすい部分。漆喰風に見える水性シリコン素材の「STYLE MORUMORU」を自分で塗って仕上げました。

「STYLE MORUMORUを20kgぐらい買って、友人を呼んで天井などを塗装しました。最初はていねいに塗っていたんですけど、思ったよりも時間がかかったので途中から急いで塗り終えました。無事に漆喰風になってほっとしています」

「STYLE MORUMORU」を塗ったお風呂場の天井

「STYLE MORUMORU」を塗ったお風呂場の天井

お風呂の床は、自分でタイル塗装。浴室全体の色合いを締める紺色を選びました。

「濡れる場所をタイル塗装するのは難しいんですが、『失敗してもいいや』と気楽に挑戦しました。修復方法を知っていれば、多少剥がれても直せます。もちろんプロに頼むほうがキレイですが、先々ちょっとしたことでも費用がかかりますから、長く住むなら少しでも自分で覚えることにメリットを感じました」

シックな色合いの浴室の床

シックな色合いの浴室の床

昭和風のお風呂ですが、蛇口を取り替えるなどちょっとした工夫を施して、気に入って使えるようにしています

昭和風のお風呂ですが、蛇口を取り替えるなどちょっとした工夫を施して、気に入って使えるようにしています

トイレの扉のガラス部分は、いわゆるレトロガラス。マンション建築当時に使われたものをそのまま活用することにしました。

「細工があるガラスは当時使われていた型がなくなり、現在は製造することができません。せっかくなのでそのまま活かすことにして、縁(フチ)の部分はアイアンペイントを塗りました」

現在は手に入らない細工ガラスの扉

現在は手に入らない細工ガラスの扉

高殿さんがDIYに使った用具の一部

高殿さんがDIYに使った用具の一部

収納場所は少なめに

部屋の内装で高殿さんがこだわったのは、クローゼットを設けないこと。天井からアイアンのパイプを吊るし、衣服をかけて陳列しています。

「収納スペースを設けないことで、部屋自体を広く使えます。私はもともと掃除好きで、神戸の自宅にも家具をあまり置いてないんです。収納場所があると、あっという間に物が増えちゃうんですよね。」

天井に近い場所に洋服やタオルやシーツなどを収納する棚を自作。広島県の廿日市市で木製品を製造する「WOODPRO」から足場材を取り寄せてつくりました。

「足場材って建物を作る時に利用されるのでペンキで汚れていたりするんですけど、ガサッとした質感が好みで利用しました」

同じ足場材を使って、ベッドヘッドの制作も行いました。

「ベッド自体はアイリスオーヤマで購入した安価なものですが、動いて壁紙と擦れてしまうので、足場材を使ってベッドヘッドをつくりました」

足場材を使ってつくられた棚とベッドヘッド

足場材を使ってつくられた棚とベッドヘッド

ベッド下も収納場所として活用します

ベッド下も収納場所として活用します

食器棚も同じ要領で、足場材を使って制作し、見せる収納。来客が多いため、ワイングラスなどが増えて、天井から吊るす収納方法も取り入れたそう。

「工夫したのは水切りカゴの配置場所。水が滴っても困らないように、洗濯機の上に置きました。収納場所が少ないなかで、どう楽しんで生活するか、チャレンジの場となっています」

調味料なども並ぶ食器棚

調味料なども並ぶ食器棚

洗濯機に置かれた水切りカゴ

洗濯機に置かれた水切りカゴ

高殿さんは神戸との2拠点生活を送るため、月の半分以上はセカンドハウスを空けています。空き巣対策としても、家具類は最低限に揃え、家電や小物もジモティーやYahoo!オークション、メルカリなどで安く購入したそう。

資材高騰直前に滑り込めたこともあり、今回のリノベーションとDIYでかかった総額は約200万円。

「DIYはコストを削減できる分、失敗もしますから、それも含めて楽しめるどうか、自分の性格を見極めて挑戦することが大切だと思います」

Airbnbに宿泊してリノベーション後の自室を想像するのは、なかなか考え付かない妙案です。セカンドハウス利用が多いリゾートマンションだからこそできる技ですが、2拠点生活に憧れたら試してみる価値がありそうです。

小説家の高殿円さん

●取材協力
高殿円さん

小説家。漫画の原作や脚本なども担う。2000年、『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞。2013年、『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。2024年4月には同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』を刊行。X(旧Twitter)

<撮影:曽我美芽 / 構成:結井ゆき江 / 取材・編集小沢あや(ピース株式会社)>

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