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やまくみさん正方形
山本 久美子
2022年11月2日 (水)

住宅購入時にみんなは何を重視する? 若年層は「IT重説」「電子署名」に高い利用意向

調査結果から分かる、住宅購入時にしっかり確認する様子。若年層ではIT化を希望する声も
(写真/PIXTA)
不動産流通経営協会(FRK)が公表した2022年度の「不動産流通業に関する消費者動向調査」によると、住宅を購入する際には、立地や建物を慎重に確認している人が多いことがわかった。高額な買い物となるだけに当然のことではあるが、どういった手順を経ているのだろう?調査結果を分析していこう。
【今週の住活トピック】
「第27回(2022年度)不動産流通業に関する消費者動向調査」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)

新築か中古かにこだわらなかった人が増加!

この調査は、FRKの会員会社の協力により、首都圏で2021年4月から2022年3月までに住宅を取得した人を対象にWEBアンケートを実施(有効回答1311件)したもの。新築住宅購入者は267件、中古(既存)住宅購入者は1044件だった。

まず筆者が注目したのは、「新築・既存にはこだわらなかった」と回答した人が増加していることだ。
●住宅購入にあたって探した住宅の種類で「新築・既存にはこだわらなかった」割合
新築住宅購入者:
2020年度:19.2%  2021年度:17.3%  2022年度:26.6%
中古住宅購入者:
2020年度:44.3%  2021年度:47.0%  2022年度:52.5%

新築住宅購入者では「新築住宅のみ」や「主に新築住宅」という人がまだ多いものの、中古住宅購入者ではこだわらなかった人が過半数に達した。これは、新築住宅(特に新築マンション)の販売が縮小する一方で、中古住宅市場が活性化していること、新築マンションの価格が上昇していることなどの影響もあるのだろう。

購入にあたって建物検査の利用が増えている!

中古住宅を購入する場合、建物の状態に不具合はないかが気になるものだ。一般消費者が見ただけではわからない点もあるので、専門家の確認もほしいところだ。今回の調査で、中古住宅購入者に対し、住宅購入にあたって建物検査を実施したかどうか聞くと、「何らかの建物検査を行った」人が52.2%となり、過半数を占めた。特に、中古一戸建て購入者については、実施した比率は72.1%とかなり高くなる。

出典:住宅購入にあたっての建物検査の実施状況(対象:中古住宅購入者)(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

出典:住宅購入にあたっての建物検査の実施状況(対象:中古住宅購入者)(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

さて、ここで言う「何らかの建物検査」について少し説明しよう。何らかのという表現となるのは、いろいろな形態があるからだ。

最も多いものが、中古住宅を仲介する不動産会社が売主から預かった中古住宅の「建物保証」をするケースだ。不動産会社自身がそれぞれの方法で住宅の大きな不具合がないことを保証するもので、建物に加えて「住宅設備保証」もするケース、住宅設備保証だけをするケースもあるが、建物保証にかかわるものが建物検査に該当する。

ほかにも、民間の検査機関が行っているホームインスペクション(原則売主が行うが、費用を買主が負担する場合もある)を行っている場合も該当する。また、検査と保険をセットした「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」に加入する場合も、検査を行うので建物検査に該当する。

これらのいずれかを行った中古住宅を購入した人が、52.2%いたということだ。

大半が事前に水害ハザードマップを確認している

新築・中古を問わず、近年災害が甚大化していることもあって、災害リスクを気にする人も多いことだろう。調査結果を見ても、全体で91.2%が自然災害のリスクについて「考慮した」(57.6%)あるいは「やや考慮した」(33.6%)と回答した。

目を引くのが、「水害に関するハザードマップ」を確認した人の多さだ。「地震に関するハザードマップ」を確認した人もほぼ6割と高いので、関心の高さがうかがえるが、水害の場合は9割を超える高さとなっている。

事前に確認したハザードマップの種類について(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

事前に確認したハザードマップの種類について(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

実は、2020年8月28日から契約前の重要事項説明の際に、水害ハザードマップを提示することなどが、宅地建物取引業法の改正で義務づけられている。水害ハザードマップを確認した比率が9割と高いのは、近年の台風や集中豪雨による水害を目の当たりにして、早めに自らハザードマップを確認した人もいるだろうが、仲介会社からの重要事項の説明によって確認したという人も多くいるからだろう。

20代・30代では契約に関するデジタル化の意向が高い

不動産会社が買主に対面で重要な事項を書面で説明したり、対面で契約書を交付したり、というのが従来のスタイルだった。今ならメールやWEB会議の普及によって、WEB会議で重要事項説明を聞いて(=「IT重説」)メールなどで書面を受け取ったり、「電子署名」を使って売買契約書の交付を受けたりといったことができる環境が整っている。

今回の調査で、「IT重説」および「電子署名」の利用意向を聞いたところ、いずれも20代・30代で利用意向が高いことが分かった。

今後住宅を購入する際のIT重説の利用意向(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

今後住宅を購入する際のIT重説の利用意向(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

売買契約締結における電子署名の利用意向(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

売買契約締結における電子署名の利用意向(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

「IT重説を利用したいと思う理由」では、「不動産会社に行く手間が省けるから」(86.1%)と「重要事項説明を実施する日程調整の幅が広がるから」(65.0%)が多く、「IT重説を利用しないと思う理由」では、「住宅購入に関わる大事なことなので対面での説明がよいと考えるから」(75.2%)が多かった。

また、「売買契約締結における電子署名を利用したいと思う理由」では、「保管に場所を取らないから」(79.2%)、「パソコンやスマートフォンなどでいつでもどこからでも契約締結できるから」(63.0%)、「印紙税が発生せず費用負担が減るから」(62.1%)が多く、「売買契約締結における電子署名を利用しないと思う理由」では、「住宅購入に関わる大事なことなので書面がよいと考えるから」(84.1%)が多かった。

デジタル関連法案などの施行によって、今は買主と不動産会社双方が合意するなどの条件が整えば、契約に関するIT化が実際に行えるようになっている。

近年は、中古住宅を購入してリノベーションをしてから住むスタイルも普及している。その際には、隠れた不具合がないか建物検査事業者やリフォーム事業者と確認したり、災害リスクの程度を調べたりして、それらの対策を施すことが大切だ。購入とリノベを一体的に進めるには、契約が効率よくできるIT化を活用するのもよいだろう。快適な住まいを手に入れるために、賢い消費者になってほしい。

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