首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の街(自治体・駅)について、「お住まいの街に今後も住み続けたいですか?」と聞いた結果をランキング化したのが、「住み続けたい」街(自治体・駅)ランキングだ。2021年に続き、今回が2回目の調査になる。(ただし、「住み続けたい」の回答方法を5段階から11段階に変更したため、前回の結果との比較はしていない。)
「住みたい街」は多くの人が憧れる街なので、ターミナル駅が上位にくる傾向があるが、「住み続けたい街」は住民の居住継続意向によるもの。人によって“住みやすさ”は異なるので、居住の意向もそれぞれとなるが、「街選びのモノサシを多様に提示したい」という。
気になるランキングだが、興味深い結果になった「住み続けたい駅」のランキングから見ていこう。驚いたのは、首都圏外に住んでいる人には全くなじみのない駅名、いや首都圏に住んでいても知らない人が多いかもしれない駅名も上位にランクインしたことだ。
1位は、藤沢市の鵠沼・江ノ島エリアの「湘南海岸公園」。同じエリアからは、4位「鵠沼」、7位「石上」、13位「鵠沼海岸」、16位「片瀬江ノ島」、20位「柳小路」などが上位にランクインし、人気の高さがうかがえる。
2位にはみなとみらい線の「馬車道」が入り、3位「日本大通り」、6位「みなとみらい」と合わせて、この沿線の強さがわかる結果になった。
ほかにも、銀座と築地の間にある「東銀座」が5位に入り、25位「人形町」、28位「水天宮前」、29位「月島」など、中央区の駅が入った。中央区のなかでも、日本橋や京橋など山手線に近いエリアではなく、かつて大川といわれた隅田川に近い駅が挙がった。阿部寛主演の「新参者」に登場した街が人形町や水天宮前だ。歌舞伎座のある東銀座やもんじゃ焼きで有名な月島など、江戸庶民に愛された街である。
余談になるが、かつて筆者の同僚が人形町に住んでいたとき、町内の青年会に入会し、地域のお祭りでは中心となって活躍して楽しんでいた。このエリアは、地域ごとにお祭りがあり、盛大に開催されている点も特徴だ。
さらに、10位「代々木八幡」、15位「代々木公園」、19位「原宿」、26位「代々木上原」、27位「北参道」など、代々木公園の周辺の駅も上位に入った。「代々木公園」の公園力がいかに強いかがうかがえる。代々木公園の特徴は、ピクニックもできる樹木や花の多い公園というだけでなく、「ドッグラン」や「サイクリングコース」(大人用と子供用)、「バードサンクチュアリ」、「イベント広場」など、多様な憩い方ができる点にある。さらに周辺には気軽に入れる飲食店も多く、多様な人が集まりやすいという。
上位グループが選ばれた理由を見ていこう。実は、「鵠沼・江ノ島エリア」と「馬車道・みなとみらいエリア」とでは、「街の魅力」に対する回答が少し異なる。
■ランキング1位 湘南海岸公園駅の魅力
まず、ランキング1位の湘南海岸公園駅の「街の魅力」で高いものを見ていこう。「自然が豊富」な街であることは間違いないが、「地域に顔見知りができやすい」、「街の住民がその街のことを好きそう」といった地域のコミュニティの強さが特徴だ。地域に溶け込みやすいイベントも多く、もともと漁師町であったことから地域で支えあう風土があるという。
■ランキング2位 馬車道駅の魅力
一方、ランキング2位の馬車道の「街の魅力」は、「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」や「文化・娯楽施設が充実している」、「魅力的な働く場や企業がある」、「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」など。インフラが充実しているのが特徴だ。SUUMO編集長の池本洋一さんによれば、馬車道では商店振興会主導で歴史景観を残す「ホンモノ思考」があり、シビックプライドが醸成されていること、再開発によるみなとみらいのオフィス、日本大通りのハマスタ、飲食店の多い野毛地域などが融合して多様な人を受け入れていることなどが、沿線エリアの魅力をつくり出しているのだという。
「住みたい街」と「住み続けたい街」では、共通する高い項目がある。「人からうらやましがられそう」、「街ににぎわいがある」、「雰囲気やセンスのいい店がある」、「文化・娯楽施設が充実」などだ。その街に付加価値があるという点では共通しているわけだ。しかし、「住みたい街」では、「大型の商業施設が充実」、「交通利便性が高い」などの項目が高いのに対して、「住み続けたい街」では、「住民が街のことを好き」、「人目を気にせず自由な生活ができる」など、街への愛着や街が住人の多様性を容認する雰囲気が重視される。
池本さんによれば、住み続けたい街になるには、その街の交通アクセスの良さが不可欠ではあるが、そのほかに共通する大きな要素があるという。第1に、地域に参加しやすいイベントや場所があったり、子育てしやすい環境があったりして、「街の住民がその街のことを好きそう」という要素だ。住民が街を好きであると、街の教育や防災などのインフラが整備される傾向もある。第2には、多様な人を容認する文化があり、「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」という要素が、大きく影響している。
「鵠沼・江ノ島エリア」は特に第1の要素が強く、「馬車道・みなとみらいエリア」は特に第2の要素が強いという代表だろう。こうした要素ができるには、それを醸成する仕掛けや持続させる仕組みがあるのだと、池本さんは指摘した。
最後に、「住み続けたい自治体」のランキング上位を紹介しておこう。
1位は「武蔵野市」。2位「目黒区」、4位「中央区」、5位「渋谷区」、8位「港区」、10位「文京区」と東京都の自治体では、23区が多数ランクインしている。3位「葉山町」、7位「逗子市」、11位「藤沢市」、12位「茅ヶ崎市」、14位「鎌倉市」と神奈川県の『湘南・三浦エリア』が上位にランクインしている。
埼玉県では13位「さいたま市浦和区」、15位「さいたま市大宮区」など、さいたま市中心エリアが上位に入り、千葉県では、9位「浦安市」、23位「千葉市美浜区」など湾岸を含むエリアが上位に入った。
さて、ランキングの結果を見て、あなたはどう思っただろう?人気エリアは住居費用が高いと思った人もいるかもしれない。池本さんによれば、手ごろな家賃(シングルで家賃8万円以内)で住み続けたい23区内の街もあり、「南阿佐ヶ谷・阿佐ヶ谷エリア」や「東急世田谷線エリア」などが挙げられるという(同日に発表した「SUUMO住民実感調査2022首都圏 都県(地域)×家賃水準別住み続けたい駅ランキング」に掲載)。
人それぞれで“住みやすさ”を感じる点は異なるので、納得のいく結果も意外な結果もあったかもしれない。集客力のある知名度の高い大きな街だけでなく、自分好みの暮らしができる特色のある街をぜひ探してほしい。