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籠島 康弘
籠島 康弘
2022年6月23日 (木)

タクシー相乗り、ついに解禁! 気になる料金や乗車方法など最新事情を聞いた

タクシー相乗りが解禁! モビリティの何がかわる?
(写真提供/NearMe)
国土交通省はタクシーの「相乗りサービス」制度を2021年11月から導入した。その仕組みやメリットとは? 今後「相乗りサービス」はどこに住んでいても使えるようになるのだろうか? 先陣を切って参入し、実際に同サービスを2022年2月24日から開始した、タクシーの相乗りサービスを手がけるNearMe(ニアミー)の髙原幸一郎社長と、事業開発担当の真弓聖悟さんに話を伺い、今後の展開を探った。

アプリなどを使い同乗者をマッチングするサービス

国土交通省が2021年11月から導入したタクシーの「相乗りサービス」制度とは、配車アプリなどを使い、目的地が近い利用者同士をマッチングして、タクシーに相乗りできるようにする制度。従来は客同士が事前に相談して相乗りするケースはあっても、システムとして運用されるのは初めてとなる。国としては、このサービスによってタクシー事業者の生産性向上を図るのが狙いだ。

(写真提供/NearMe)

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(画像提供/NearMe)

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原則として乗車距離に応じて利用者ごとに料金が案分される(下図参照)。そのため利用者としては割安にタクシーを利用できる。これまでタクシーの相乗りといえば、多くは同じ方面を利用する知り合い同士での利用に限られていたうえ、先に降りる人が最後まで乗る人に「なんとなく案分」して支払っていたが、このサービスを利用すれば明朗会計できるというわけだ。

(画像提供/国土交通省)

(画像提供/国土交通省)

さらに「自宅から勤務先など、相乗りタクシーによるドアツードアが普及すれば、朝晩などの需要の多いときに配車ができない状況を減らすことができ、相乗りをすることで環境負荷の削減になります。また電車やバスなど公共交通機関の混雑の解消にもつながりますし、東日本大震災の時のように災害等で公共交通機関が止まってしまった場合、『自由に移動できる車』をシェアすることで、たくさんの人が恩恵を受けやすくなります」とNearMe(ニアミー)の髙原社長。

同社はタクシーの相乗りサービス解禁を受けて、いち早く2022年2月24日から「nearMe.Town(ニアミータウン)」を開始した。サービスエリアは東京都の中央区・千代田区・港区・江東区の4区だ。同社は従来から自宅やホテルと空港をドアツードアで送迎する「nearMe.Airport(ニアミーエアポート)」サービスなどを展開している交通関連サービス事業者だ。
タクシーの相乗りサービス「ニアミータウン」を利用するには、まず専用アプリやウェブサイトからの会員登録が必要だ。その後アプリやウェブサイト上で利用したい日時と乗降場所を設定する。すると24時間以内に配車可否のメールが届くので、あとはそれを見て利用する。支払は登録しておいたクレジットカードで乗車後に決済されるので、誰一人タクシー内で財布を出す必要はない。

(写真提供/NearMe)

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(画像提供/NearMe)

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電車やバスよりも同乗者を特定しやすいので安心

実際どんな人が利用しているのだろう。同社の真弓さんによれば「ニアミータウンの利用者の約40%は通勤や通学に利用される方です。また買い物や子どもの塾への送迎など、昼間の利用も意外と多いようです」という。

利用者からは「一人でタクシーを使うより安く使えて便利」という声だけでなく、「通勤時のストレスが緩和された」「乗り替えをしなくていいから便利」「コロナ禍で混雑を避けたいが、これなら安心」といった声が上がっているそうだ。

(写真提供/NearMe)

(写真提供/NearMe)

一方で「どれくらいの金額や時間で利用できるのかわからない」「相乗りはなんだか不安」といった声もあるという。これに対して同社では「申し込み画面に『このくらいの距離なら料金はこれくらい』といった事例を挙げるなど、利用イメージが湧きやすいよう随時改善しています」(真弓さん)。さらにサイトには問い合わせ用のチャットも用意されている。

また、見知らぬ人とのタクシーの相乗りは、確かに不安に思う人も多いかもしれない。しかし「会員登録は2段階認証ですし、いつ誰がどこで乗ったか把握できます。電車やバスも、広い意味で『相乗り』ですが、それらよりも追跡しやすいサービスです」(真弓さん)。決済とつながっていることからも、素性のわからない人が利用することがなく、万が一の際でも、相手を特定することが容易というわけだ。

「実際ニアミータウンより先に、私たちは約2年前から空港と自宅やホテルを結ぶ同様の相乗りサービス『ニアミーエアポート』を運用していますが、これまでにトラブルは起きていません」(真弓さん)

公共交通機関のほかに「割安に乗れるタクシー」が加わった

タクシーの相乗りサービス制度がもたらす恩恵を考えるためにも、既存の交通機関との相違点をもう少し細かく見てみよう。まず従来のタクシーとの違いは先述の通り「安く利用できる」という点だ。一方複数人で利用するため、一人で乗るよりも多少到着時間は読みにくくなる。ただし「ニアミータウン」のAIが、何人かいる利用者の中から最適なマッチングと、それによる最適なルートを提示するので、それほど心配する必要はないだろう。

また電車やバスといった公共交通機関よりも時間や乗降場所の融通が効き、混雑した車内とも無縁であることは言うまでもない。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

一方で最近流行の「ラストワンマイル」の乗り物、例えばシェアリングの自転車や電動キックボードなどと比べると、長距離を移動できるという違いがある。現状「ニアミータウン」の利用者は5km前後の移動にこのサービスを使うことが多いという。電動キックボード等で移動するにはハードな距離だし、特に雨の日はタクシーのほうが楽だ。そもそも「ラストワンマイル」とは駅や停留所からの「あとワンマイル」なのだから。

「今はサービスエリアが4区のみですが、今後エリアが拡大すればもっと利用距離が延びる可能性はあります」(真弓さん)

ちなみに以前紹介したシェアリングのタクシー利用サービス「mobi」も、特定エリアの半径2km以内が基本のラストワンマイルサービスだ。そのため同じタクシーでも、自宅と勤務先のドアツードアで利用できる「ニアミータウン」とは自然と利用目的が異なる。

またカーシェアリングと違い、車を取りに行ったり、行き先で駐車場を探したり、そもそも自分で運転する必要がないのもタクシーの相乗りサービスの特徴だ。

つまり「タクシーの相乗りサービス」は我々利用者にとって、文字どおりタクシーの利便性をそのまま享受でき、多少時間は読みにくくなる可能性はあるが、利用料金が安くなるというサービス。ラストワンマイルの乗り物とは距離がまったく違うため、公共交通機関とは違う新たな移動の選択肢が増えた、あるいはタクシーの新しい利用方法が生まれた、と捉えるとわかりやすいだろう。

(写真提供/NearMe)

(写真提供/NearMe)

新しい街づくりに欠かせない!?タクシー相乗り

先述の通り、現在は中央区・千代田区・港区・江東区の4区でサービスが展開されている「ニアミータウン」だが、今後は「なるべく早い時期に東京都の23区にサービスエリアを広げていき、将来的には全国各地で展開したいと考えています」(髙原社長)という。

「ただし人口密度が低く、シェアする人が少ないエリアでは現状のビジネスモデルでは成り立ちません。過疎地での高齢者の通院など、顕在化している社会問題をこのサービスを使って解決したいと考えていますが、そういったエリアでは行政とタッグを組むなど、プラスアルファの施策を考える必要があります」(髙原社長)

一方で「これから生まれる新しい街」には、最初から「ニアミータウン」が利用できる可能性があるかもしれないという。現在「ニアミータウン」は三井不動産とShareTomorrowが提供しているモビリティサービス「&MOVE」と連携しているが、実はこうした不動産ディベロッパーとのタッグが、「移動が便利な新しい街づくり」にひと役買いそうなのだ。

(写真提供/NearMe)

(写真提供/NearMe)

三井不動産とShareTomorrowの「&MOVE」は三井不動産が手がけたホテルやマンション、商業施設等の利用者に提供されているもので、例えば自宅マンションから商業施設へ行く際に、これまで専用アプリを使ってタクシーやカーシェアリング、シェアリングサイクルといった「移動手段」を提供していたのだが、その選択肢の1つに「ニアミータウン」が加えられた。

ここから見えてきたのが、駅から多少離れているマンションでも、タクシー相乗りサービスがあれば移動の不安が解消されるというメリットだ。例えば「眺望はいいけれど駅から少し離れたエリア」にも、マンションが建てられる可能性があるというわけだ。そうなると『徒歩何分』という従来のマンションの価値の1つが希薄になる。

しかも大規模なマンションほどシェアする人が増える、つまり人口密度が高くなるので、タクシー相乗りサービスはその利便性を発揮しやすい。また大規模なマンションができれば、近くにレストランやスーパーをはじめ、様々な商業施設もできるだろうし、そうなればちょっとした街が1つ出来上がる。そんな「これから生まれる新しい街」づくりに、タクシー相乗りサービスがひと役買う可能性があるというわけだ。

タクシーの新しい乗り方は、単に利用料金を安く抑えられるというメリットがあるだけでなく、新しい街を作る可能性も秘めている。今後どんな場所に「移動が便利な新しい街」が生まれるのか、注目してみたい。

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