まずはおさらいから。路線価とは国が定めた1m2当たりの土地の価格のこと。一定範囲の道路に面した区画ごとに決められるので「路線価」と呼ばれている。その年の相続税や贈与税を計算する際の基準となる地価だ。
つまり路線価が上昇すると相続税や贈与税もアップし、下落すると税金もダウンする。特に2015年に相続税が増税されてからは課税の対象になるケースが増えており、それだけ路線価が気になる人も増えているだろう。
さて今年の路線価だが、全国平均(標準宅地の対前年変動率)では前年比0.7%アップと3年連続で上昇した。上昇率は前年の0.4%と比べて0.3ポイント拡大している。
都道府県別に見ると、東京都(前年比4.0%アップ)、大阪府(同1.4%アップ)、京都府(同2.2%アップ)、愛知県(同1.5%アップ)など、三大都市圏で高い上昇率となった。いずれも上昇率は前年より高い数字だ。
また北海道(同1.1%アップ)、宮城県(同3.7%アップ)、広島県(同1.5%アップ)、福岡県(同2.6%アップ)など、中核都市を抱える道県の上昇率が目立つほか、沖縄県は同5.0%アップと47都道府県で最も高い上昇率だった。
主要な個別地点で最も高かったのは33年連続日本一となった東京都中央区銀座5の「鳩居堂」前で、1m2当たりの価格は4432万円。前年比9.9%のアップとなり、バブル期を超えた前年に続き、過去最高を更新している。
個別地点で上昇率全国トップは北海道ニセコ地区の「道道ニセコ高原比羅夫線通り」で同88%の上昇。スキーリゾートとして世界的に人気が高まり、外国人などが高額なコンドミニアムを買うケースが目立つという。
全国2位の上昇率は京都市東山区の祇園四条駅周辺で同25.9%アップ。国内外からの観光客でにぎわい、商業施設の賃料などが高騰しているようだ。
都市部や観光地を中心に地価上昇の勢いが増している要因としては、やはり訪日外国人客の増加が挙げられる。2017年の年間訪日客数は2800万人を超えて過去最高だったが、今年はさらに上回るペースだ。訪日客が増えれば買い物施設や宿泊施設の需要が増え、条件の良い土地は商業ビルやホテル用地として取り合いになるため地価が吊り上がる。沖縄県の上昇率が高いのも同様の動きだ。
マンション需要の根強さも地価を押し上げている。東京都心部などでは物件価格の高騰でファミリータイプの物件供給が減少しているが、1億円を超える高額物件は売れ行きが好調だという。また郊外や地方都市でも駅の近くなど利便性の高いマンションは人気が高く、用地を確保するのが難しい状況となっている。
こうした地価の上昇傾向はいつまで続くのか。一説には東京五輪が開催される2020年前後にピークを迎え、そこからは下り坂になるとの見方もある。
だが、五輪はあくまで東京都心部に限定されたイベントに過ぎない。他のエリアにとって五輪の影響はさほど大きくないと考えられる。東京都心部についても、山手線新駅や渋谷駅、虎ノ門地区など五輪後も大規模な再開発が計画されている地区は少なくない。五輪の前後に東京の地価が一時的に弱含みになったとしても、それで地価上昇が止まるとは限らないだろう。
さらに重要なのは、日銀による大規模な金融緩和策が今後も続く見通しであることだ。アベノミクスが目標とする物価上昇率2%は達成の見通しが立たず、金融緩和策を手じまうための出口戦略は議論の糸口さえつかめない。日銀が国債を大量に買うことで超低金利が維持され、土地やマンションを購入しやすい状況が続く限り、地価の上昇基調も続くとの見方が多い。