子どもの声は騒音か否かーー。近ごろ、こんな議論が交わされているが、実はその音問題は、窓に原因があるのかもしれない。では、窓と音問題の関連とは? リフォームや窓の交換でどこまで騒音問題は解決できるのか、YKK APの担当者に聞いてきた。
「子どもの声がうるさい」。近隣住民からこうしたクレームが寄せられたことから、保育園や幼稚園では園庭で遊ぶ時間を制限しているというニュース、記憶に残っている人も多いはず。確かに子どもの遊ぶ声をはじめとして、生活音はセンシティブな問題でもある。では、この音問題、窓とどう関連してくるのだろうか。さっそく、YKK APの商品企画部 窓住宅商品企画グループ 窓第四商品室長の伊藤稔さんに話を伺った。
「窓の性能は、サッシとガラスの組み合わせで決まります。20〜30年前、一般的だったのは、アルミフレームと単板ガラス。単板ガラスはその名前の通り、1枚ガラスです。一般的な3mm厚ガラスの場合、その特性として遮音性は低く、騒音で悩まれることは起こりえると思います」と話す。また、古いサッシには開閉しやすくするためのすき間があり、音が通り抜けやすい構造になってしまっているのだとか。見た目にして1mm以下だが、これが遮音性能に大きく影響するという。では、現在、普及している複層ガラスと比べた場合、どのくらいの差があるのだろうか。
「状況や音域によって差がでますが、以前の単板ガラスサッシと現在の複層ガラスを使った樹脂製窓では5〜10db程度、小さくなるといわれています。一般的に音は10db小さくなると、人間の耳には半減したように聞こえるといいますから、窓を変えるだけで、音の聞こえ方はガラリと変わるんですよ」と解説してくれた。
ただ、音には遮りにくい周波数があり、低い音域のもの(例えば室外機のモーター音など)は遮音しにくい音なのだとか。一方で、高い音域(ピアノの音や子どもの声など)は、遮りやすく、ガラスの厚さを増した複層ガラスで聞こえにくくなるのだという。
だが、複層ガラスが万能かといえば、そうでもないという。
「ガラスは特定周波数で振動・共鳴してしまい、遮音性能が低くなってしまう音域帯があるのです。全体には遮音できるものの、一部遮りにくい音がある、といったほうが正解でしょうか。ですから音の種類によっては単板ガラスでも遮音しやすい音があるんです」(伊藤さん)。こうした複層ガラスの弱点を克服するには、やはり防音特殊フィルムを挟んだガラスがもっとも効果的とのこと。だが、単板ガラス+内窓でも遮音効果は期待できるという。
「窓は見た目にはあまり変わりはありませんが、断熱や遮熱といった性能は年々向上しています。また、遮音も大切な性能のひとつと考え、研究や開発に取り組んできました」と伊藤さん。20〜30年前に建てられた窓にも施工しやすいリフォーム用の内窓などであれば、一戸建てやマンション問わず、1時間程度でリフォームでき、遮音性能を高めることができるという。
「幹線道路や高速道路沿いにお住まいの方が騒音問題で悩まれて、リフォームするケースも多いですね。価格帯はサイズにもよりますが、高さ2m×幅1.8mで5万円程度から。工事費は別途必要になります」と伊藤さん。
賃貸住まいであれば、なかなかこうしたリフォーム工事は難しくなる。であれば、住まい選びの際に、窓にも注目してみてほしい。基本は、ガラスは薄いよりも厚みがあるほど遮音効果が高く、複層ガラス、なかでも防音ガラスであれば、音に悩まされる可能性は低くなるはずだ。ちなみに複層ガラスは、「省エネ建材」などのシールが貼ってあることが多いので、目印にして見分けたい。
現在、省エネ住宅ポイント制度が始まっているが、内窓リフォームはこの省エネ住宅ポイント制度の対象となっている。音問題で悩んでいるのであれば、こうした制度を利用するのもいい手だと思う。生活音で悩む人にはそれぞれ事情がある。それでも建材を変えることで、トラブル解消のきっかけになるのであれば、住む人もまわりで過ごす人もきっと幸せになれるはずだ。