冬は空気が乾燥するのに加え、暖房器具を使用するため、ほかの季節に比べて火事の発生
件数が多くなります。火事を防ぐために行政がどのような取り組みをしているのか、また火事が広がらないための住宅について紹介します。
平成24年に制度を制定し、災害時の延焼火災や被害を減らすため、東京都と区が一体になって取り組んでいる「木密地域不燃化10年プロジェクト」があります。これは311の東日本大震災を踏まえ、今後災害が起これば大きな被害が出るとされる、首都圏の古い建築基準で建てられた木造住宅が密集した地域の改善に向けた新しい対策です。
「木密地域不燃化10年プロジェクト」のポイントは2つです。
1、延焼を防ぐための不燃化
これは建築物の不燃化の促進です。都内で古い建築基準で建てられた木造建物が密集する整備地域を定め、その区域内で建て替える場合には、燃えにくい準耐火・耐火建築物でないと建て替えられないとする規制です。それぞれの区内におおむね3カ所の地域を設定し不燃化を推進しています。この整備地域のなかでも先行実施12地区が指定され、今年4月より不燃化のための施策や整備プログラムが認定される予定です。
2、延焼防止のための道路整備
火災が起こった場合、市街地の延焼を遮断するためには空間が必要です。そこで東京都では主要な都市計画道路を拡幅する整備計画を推進しています。例えば幅員10mの道路を20mに広げるといったように、防災上、効果の高い主要な道路の整備です。この整備を加速するため、平成25年度以降「特定整備路線」を順次指定。指定された区間では、関係権利者などに対し、生活再建などのための特別支援策も期間を限定して実施される予定です。同プロジェクトでは、不燃化、道路整備ともに約7000ヘクタールの整備地域を対象に、今後10年の間に火が燃え広がらない街の実現をめざしています。
行政の燃えない街づくりの計画は始まったばかり。首都直下地震への切迫性はありますが、生活に直結している住民たちの意識啓発などにも時間が必要でしょう。
燃え広がらない街づくりの基本となる火事に強い「不燃化の建物住宅」についてハウスメーカーに聞いてみました。
建物が密集する都市部で防火地域にも建築可能な建物のひとつにヘーベルハウスがあります。旭化成ホームズが販売している建物で、耐火構造部材ALCコンクリートを採用しているのが特徴です。
このALCコンクリートは表面を945度まで上昇させ続けても、裏面の温度は200度以下にしか達しないことが確認されているとのこと。これはALCコンクリートの部材が気泡のある軽石状の構造であるため、熱の逃げ道が確保され熱が伝わりにくくなるからだそうです。
ヘーベルハウスのALCコンクリートの壁自体が燃えないことで、外壁はもちろん床、壁、天井すべてに用いることで外からの火災の延焼を防ぎます。また内部から失火した場合も、内装下地に不燃性石膏ボードを採用しているため、隣室への燃え移りも抑止されるとのことです。
一方、大成建設ハウジングが販売している建物「パルコン」は、構造部材に耐火性能に優れたコンクリートパネルを用いており、1000度の火にさらされて2時間以上経過し、コンクリートパネルが1000度になっても耐力が低下しないことが確認されているそうです。
延焼の場合、2階の軒下の通気口から内部に火が侵入して延焼の原因となることが多いのですが、鉄筋コンクリート住宅パルコンであればしっかり延焼をくい止めることができるそうです。また外壁だけでなく内側の壁も同じ耐火仕様で、さらに炎が天井裏を伝わらないファイアーストップ構造となっているため、内外からの出火に強い建物になっているそうです。
また住友林業では、防火地域に建てられる耐火構造の木の家「マイフォレスト-耐火」を販売しています。この建物は、例えば外壁には窯業系サイディング、ALCパネル、グラスウール断熱材といった耐火性能に優れた部材を用いることで、木造軸組工法の木の家として耐火構造の住宅を提供しています。またツーバイフォー工法での耐火構造商品も用意しています。
都市部の防火地域に住んでいても、「木の質感の中で気持ちよく暮らしたい」というニーズを可能にした建物といえます。「マイフォレスト-耐火」は2005年から発売されており、エリアも東京エリアから神奈川、大阪、京都、愛知などにも建築実績は拡大しているとのことです。
今回取材した3社に限らず、ハウスメーカーの技術は進化しており、住宅性能は日々向上しています。冬場の火災だけでなく、首都直下地震などいつ起こるか分からない大災害から家族の命や財産をどう守るか。行政の不燃化への取り組みと連動して個人でも日ごろから知識を得て、火災に対する備えをしておくことが大切と思われます。