インダストリアルでモダンな外観から、住宅、ガレージ、ショップやカフェなどに活用されている「コンテナハウス」。普通の住宅を建てるよりもおしゃれで安価、手軽なイメージがあるかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか?コンテナハウスの値段、広さや間取り、内装・外装、性能など、メリット・デメリットや気になることをコンテナワークスの須田さんに取材しました。中古コンテナを購入して住宅用にすることは可能かなど、細かい疑問も解消します。
コンテナハウスは、コンテナを利用して作られる住宅や建物のこと。日本のコンテナハウスに主に使用されているのは居住用に作られたJIS規格コンテナですが、これは海風にさらされながら大量の荷物を運ぶ用途で作られている海洋輸送用コンテナを建築基準法に適合させたもの。海洋輸送用コンテナと同じく、耐久性があり積み重ねが可能です。一般的な木造建築に比べて建築速度が速く、安価で、移動も可能なことから、災害時の仮設住宅としても注目されています。また、アメリカンでインダストリアルな外観にもファンが多く、店舗、宿泊施設、自宅として選択されることも増えてきました。
「2015年頃からコンテナハウスの人気の高まりを感じています。初めは事業者の方の購入が多く、カフェなどの店舗、宿泊施設として活用されることがほとんどでした。最近では、一般の方が居住用に購入し、セカンドハウスや趣味用のはなれとして活用する例もよくあります」(コンテナワークス 須田さん)
こちらは、貸別荘にするために建てられた居住用のコンテナハウス。コンテナ制作の段階で防水加工などの工事も済ませてから輸送するため、設置工事は2日で完了。
世界中に荷物を輸送するため、さまざまな規格をクリアしたコンテナ。重量鉄骨でできた躯体はあらゆる環境で荷物を守るための耐久性や耐火性を備えており、世界中の貨物船や主要道路はコンテナを輸送することを想定して作られています。コンテナに住むということは、輸送業界が持つ「頑丈な箱に荷物を入れ効率的に移動する」基盤を活用できるということ。災害の多い日本での暮らしに相性が良いとも考えられます。
「居住用のコンテナハウスは複数台のコンテナを組み合わせるのが一般的ですが、バス・トイレ・洗面台の3点ユニットバスを1台のコンテナに集結させておき、そのコンテナだけトレーラーで移動することも可能。普段は大きなコンテナの中に住んで、災害時には必要最低限の設備のみ切り離すことができます」(須田さん)
コンテナハウスの外装・内装・設備などはどこまで自由なのでしょう。実際のところ、生活の場をコンテナハウスに移すことは可能なのでしょうか。
「”コンテナハウス”と言うと普通の住宅と勝手が違う感じがするかもしれませんが、基本的な設備は一般的な住宅と同様です。自宅として住んでいる方も、賃貸物件として貸し出している方もいます。外装と内装は、凹凸のある鉄製の壁面を活かすことも隠すこともできます」(須田さん)
鉄部用塗料なら何でも使用可能。コンテナらしいカラフルな塗装やロゴが映える。
一般的な住居と同様の内装が可能。用途や趣味に合わせて、鉄をむき出しにも、木製などに変更もできる。コンテナ同士をくっつけて内壁をくり抜くことで、間取りも自由。
一般的な住居と同様の設備が引き込める。(空調・水道・電気・ガス、キッチン、バス、トイレなど)
重量鉄骨でできているため大変丈夫。断熱工事もでき、湿気対策は機能性のある塗料などによって強化可能。省エネの観点では、太陽光発電システムや蓄電池も問題なく設置できる。
住宅性能は、購入者の求める程度によって異なり、地域によって必要な性能も違います。そこで、コンテナワークスの事例を教えてもらいました。
「耐震構造については物件によりますが、コンテナワークスのコンテナハウスは、震度6に耐えられる構造となっています。さらに、構造設計次第では耐震強度をさらに向上させることも可能です。また、省エネについて、コンテナハウスは屋根部分が平面に近いため、太陽光発電の設置が簡単というメリットもあります。
住宅性能については、コンテナハウスを購入する方の希望に合わせて事業者がカスタマイズします。コンテナハウスは新しい住宅スタイルで、木造などに比べると実例が少ないのが現状ですが、希望する性能の実例がないからといって、実現できないわけではありません。具体的な性能や気になる点については、ぜひコンテナハウスの事業者に相談してみてください」(須田さん)
コンテナハウスの住宅性能についてもっと詳しく
→断熱や結露など住宅性能
コンテナは長さによって区別するのが一般的で、20FT(フィート)(約6m)と40FT(約12m)に分かれます。幅はいずれも同じですが、高さのある「ハイキューブ」という形もあり、通常(約2.6m)よりも30cmほど天井が高くなっています。通常サイズと同様、居住用として使用可能。一般的なコンテナの外寸と内寸は以下の通りです。製造する会社によって若干の差異があります。
長さ | 幅 | 高さ | |
---|---|---|---|
20FT | 内寸 約5.90m 外寸 約6.06m |
内寸 約2.35m 外寸 約2.44m |
内寸 約2.39m 外寸 約2.59m |
40FT | 内寸 約12.03m 外寸 約12.19m |
長さ | 幅 | 高さ | |
---|---|---|---|
20FT | 内寸 約5.90m 外寸 約6.06m |
内寸 約2.35m 外寸 約2.44m |
内寸 約2.70m 外寸 約2.90m |
40FT | 内寸 約12.03m 外寸 約12.19m |
「居住用に購入されるのは、ほとんどが20FTコンテナです。1人の趣味部屋なら、1台でも充実した空間が作れます。最も人気が高いのは20FTコンテナ2台の組み合わせで、向かい合わせにくっつけて正方形に近い形にしたり、L字に配置することが多いです」(須田さん)
ハイキューブのコンテナなら、天井の高さは約2.7m。一般的な木造住宅の天井(約2.4m)より高く、開放感があります。写真ではギャラリーとして使用していますが、居住用にも使用可能です。
コンテナハウスは、20FTまたは40FTのコンテナを組み合わせて、さまざまな形や高さの建物を作ることができます。「コンテナ」という単位で、自分の理想の組み合わせを考えることも楽しみのひとつです。
「20FTのコンテナひとつで趣味の空間やサウナルームを作ったり、大小異なるいくつものコンテナを配置して家族全員が住める戸建てを作ったり、ブロックを組み合わせるような感覚で家づくりを楽しめます」(須田さん)
コンテナハウスは、どのコンテナをいくつ使うのか、どのように組み合わせ、何の設備を入れるのかなどで価格が変わってきます。例として、居住できる最小限の大きさ、外装・内装・設備を搭載したコンテナハウスの価格を紹介します。
項目 | 内容 | 価格 |
---|---|---|
基本価格 | コンテナ本体 (20FT 1台) |
130万円 ~ |
3点ユニットバス(バス・トイレ・洗面台)、内装、外装(単色)、窓、扉の施工、電気・ガス・水道の繋ぎ込み | 370万円 ~ | |
運送費 | 一式 | 10万円 ~ |
基礎工事 | 一式 | (土地による) |
最低限の生活をするためのコンテナハウスは、500万円程度で建てられます。ただしコンテナハウスを輸送するための輸送費、土地の基礎工事は別です。
これらの費用は個別の条件によって金額が大きく異なるため、コンテナハウス事業者に見積もりを出してもらいましょう。
「中古コンテナ」が数十万円で販売されていることがあります。中古コンテナを購入すれば、コンテナ本体にかかるお金を大幅に安くすることができるのでしょうか?
日本で購入できるコンテナは、主に「ISO海洋輸送用コンテナ」と「JIS規格コンテナ」の2種類。輸送の役目を終えて中古販売されているコンテナは、「ISO海洋輸送用コンテナ」です。
ISO海洋輸送用コンテナ
国際的に統一された規格で製造され、主に貨物輸送に使用されるもの。日本の建築基準法に適合していないため、そのままでは建築確認を通過することができません。
JIS規格コンテナ
JIS規格コンテナは、日本の建築基準法に合わせて製造されており、居住を前提に設計されています。
ISOコンテナに工事を施して建築基準法に適合させることも不可能ではありませんが、工事費用が新品のJIS規格コンテナを購入するより高くつくことも。
中古のISOコンテナは、長年雨風や海水に晒され、積み重ねによる圧力にも耐えてきたもの。コンテナによって劣化の具合が異なるため、建築基準法に適合するための工事がどの程度になるのかも、個体によって変わります。中古ISOコンテナを居住用に購入する場合は、建築基準法に適合する工事がされているのか、これから必要ならばどのくらいの費用と期間を要するのかを確認しましょう。
徐々に認知が高まり、人気が上昇しているコンテナハウス。いざ購入するとなると気になる疑問をぶつけてみました。
A 使えます。コンテナハウスと言っても、物件としては重量鉄骨造の戸建てという扱いです。ただし、コンテナハウスに対する住宅ローンの実績がない銀行は判断が慎重になることも。申請前にコンテナハウス事業者に相談することをおすすめします。
A 必要です。一般的な戸建てを取得した場合と同様です。
不動産登記についてもっと詳しく
→不動産登記って何? 基礎知識から不動産登記の目的・費用・必要書類・流れまですべて紹介!
A 2024年5月現在、個人が居住用に購入する場合の補助金はありません。
A 通常の一戸建てと同じく、不動産会社が役所調査や現地測量を行って調べます。
A 基礎工事が終わっていれば、コンテナが到着してから最短1ヶ月程度で住み始めることが可能です。
「コンテナハウスのメーカーによってやり方が異なりますが、コンテナを作成する工場である程度の工事や部品の製作を終わらせ、コンテナの中に詰め込み輸送することができます。建てたい土地に到着してから組み立てるまでは数日で完了します。その後、外装や内装を仕上げたり設備を引き込んだりする作業を行い、1カ月程度あれば住み始めることができます」(須田さん)
A 重量鉄骨造の住宅の法定耐用年数(減価償却の計算に使用するもの。実際の建物の寿命とは異なる)は34年。
「コンテナハウスが日本で居住用として使われるようになってから、まだ十数年程度しか経っていません。そのため、建て替えが必要なほど劣化したコンテナハウスがまだ存在しない状態です。今後何十年もかけて、日本におけるコンテナハウスの寿命がわかってくるでしょう」(須田さん)
A 基本的な点検は1年一度を目安に行います。建築を対応したコンテナハウスメーカーに相談するのが一般的です。点検内容は、主に外装の塗装とコーキング。何かにぶつかって塗装が剥がれていないか、窓やドアなど開口部や、コンテナ同士の連結部のコーキングが割れていないかなどを点検します。室内の設備は、メーカーが設定している耐用年数での点検になります。
実際のメンテナンスは、コーキングの打ち直しが5~10年に一度、配管の交換が20年に一度、外壁の塗装が10年に一度程度必要です。
A 断熱工事を施しているため、一般的な戸建てやマンションと比較して特別温度管理がしにくいということはありません。暑さ対策を強めたい場合は、大屋根で直射日光を遮るなどの方法があります。
「河口湖にあるコンテナ宿泊用施設「IRONNEST(アイアンネスト)」例では、夏の最高気温は30度程度、冬の最低気温は-10度を下回ることもありますが、エアコンや小さなヒーターをつけていれば快適に過ごせています。コンテナハウスには内壁などの遮るものが少なく、機密性が高いため、空調が速く効きやすいと感じます」(須田さん)
A 鉄は熱伝導率が高く吸湿性の低い素材であるため、木造の家と比べると結露が発生しやすく、カビ、サビが起こりやすいと言えます。対策として、外壁に断熱工事をして室内温度と内壁の温度差を小さくする、換気システムを強化する、結露やカビを防止する機能性塗料を塗るなどの方法があります。
A コンテナハウスの上側は緩やかなアーチ状になっているので、雨水が溜まることはありません。雪も同様に溶けて流れますが、特に雪の多い地域では、勾配屋根にして対策できます。また、雪対策として、玄関ポーチを高くする、風除室を設置するなど一般住宅と同様の対策も可能です。
コンテナの中に脱衣所、水風呂、サウナを完結させたサウナルーム。駐車場1台分のスペースに収まるよう、長さ3.6m・幅1.9m・高さ2.1m(外寸)のオリジナルサイズで製作。
普段は使わなくなった自宅の駐車場に設置し、別荘やセカンドハウスに滞在するときはサウナルームごと輸送することも可能です。
コンパクトな空間で癒やしの時間が叶います。
20FTのハイキューブコンテナをL字に接続し、掃き出し窓から裸足で外に出られるウッドデッキを設置。ウッドデッキの広さは3.5m×6m。家族でバーベキューなどをするのにちょうど良い空間になっています。
基礎工事をした土地の上に、工場で加工したコンテナを設置。内壁になる部分は残し、通路になる部分はすでに壁面がくり抜かれ窓のサッシやガラスを取り付けた3LDKの住まい。5台のコンテナを横に並べ、上に斜めにカットしたコンテナを載せ、勾配のあるロフトを作りました。
インパクトのある外観だけではなく、耐久性と移動性、安価で迅速な建設方法などさまざまな魅力を持つコンテナハウス。気になる方は実際のモデルハウスを見に行って、暮らしのアイディアを広げてみてはいかがでしょうか。
コンテナハウスは、コンテナの持つ耐久性と移動性を活かした重量鉄骨の住居
外装・内装の自由度は一般住宅と変わらず、設備も一般住宅と同様のものが引き込める。耐震性能、断熱性能、結露対策などは工事によって向上できる
20FTと40FTのコンテナを基本に、並べる、重ねる、切断する、溶接するなどさまざまな組み合わせが可能
居住するための最低限の工事・設備が整ったコンテナハウスは500万円程度
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泊まれるコンテナハウス コンテナワークスin山中湖