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「新宿絵本日記」

秋の夜長のおやすみ絵本。 2017年9月14日

ずっと夏の絵本一色だった絵本ナビオフィスの絵本棚。
今日は、ガラッと雰囲気が変わっています。
深い色の表紙が並び、しっとりとした空気を醸し出しています。
並べてくれた人に聞く前に考えます。
(これが毎回のちょっとした楽しみ)

 

「今月のテーマはなんでしょう?」

 

…今回は、なんとなくすぐにわかりますよね。
間違いなく「夜の絵本」ばかり。

 

で、今は秋。秋の夜長です。
長い眠りにつく前に、ベッドサイドに置いておきたい絵本なのかな。
それとも、夜の世界に迷い込んでもらうための絵本なのかも。
美しさと、静けさ。それに、ちょっと不気味な世界も混ざっています。

 

秋の夜長は始まったばかり。
1冊ずつ手に取り、それぞれの「夜の世界」を堪能するとしましょう。

秋の夜長にぴったりな絵本は…?

静かに気持ちよく眠りの世界へ…

おやすみおやすみ

おやすみおやすみ

クマは ながい ながい ふゆのあいだ
くらい すあなで ぐっすり ねむります。

サカナは みずくさの なか、
めを ぱっちり くちを ぱっくり あけて ねむります。

シャーロット・ゾロトウの整然とした、でも優しくあたたかな語り口。
それは寝る前に読んでもらう「おやすみ絵本」にはまさにぴったり。耳に心地がいいのです。
この絵本には、色々な動物たちのねむる様子が描かれています。
ウマは立ったまま、シラサギは片足で、カメはこうらにもぐって。さまざまな形で寝入ります。
イモムシやクモだって眠ります。どんな場所で寝ているのかわかりますか?
大好きなイヌやネコは、みんなよく知っていますね。
もちろん私たちもふとんにすっぽりくるまって。

こんなにも違うおやすみタイム。
それらを全部包み込んでいるのが、洗練された素敵なデザイン!
本全体が落ち着いたグレーにそまり、まるで星空のように言葉が浮き上がります。
そして印象的な構図と美しい色彩で描かれた動物たち、みんなとってもおだやかで幸せそうな表情に見えます。
おやすみ おやすみ、よい ゆめを。

枕元に置いておきたい宝物絵本として、自信を持っておすすめできる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

どこかでだれかがねむくなる

どこかでだれかがねむくなる

夕暮れ時、ハチはバラの寝床へ急ぎ、ビーバーは小枝でベッドを作ります。夜になり、魚もミミズも眠り、母さんが女の子に「目を閉じて」と言います。静かなベッドタイム絵本

よるのきかんしゃ、ゆめのきしゃ

よるのきかんしゃ、ゆめのきしゃ

夜空に汽笛を響かせて、蒸気機関車がやってきました。駅に着くと、乗務員の動物たちは大忙し。貨車にいろいろな荷物を積み込むのです。冷蔵庫にはアイスクリーム、タンク車には絵具、他にも砂場の砂や、自転車、おもちゃ、レーシングカー……荷物を全部積み終えると、仕事はおしまい。動物たちは車両で横になり、そっと目を閉じます……。

ひとりでおとまりしたよるに

ひとりでおとまりしたよるに

はじめて、おばあちゃんのうちに一人でおとまりに行ったエイミー。夜になってちょっぴりさびしくなると、もってきた「たからもの」をとりだしました。それは、自分の部屋にしいてあった小さなマット。エイミーがのると、マットはふわっとうきあがり、おかあさんのいる家にむかって飛びはじめ…? 英国を代表する児童文学作家ピアスと絵本作家クレイグが、共通の孫のために作った、小さな成長を描く暖かな絵本。徳間書店の子どもの本20周年記念作品。

長い長い夜の時間、何かが起きる…!?

かようびのよる

かようびのよる

これは実際にあったことです。
火曜日のよる8時頃。
静まりかえった池の水面に月の光を浴びて浮かび上がるのは・・・
蓮の葉に乗ったカエルたち!?
一体何が起きているのでしょう。
気がついたら夜空にはカエルがたくさん飛んでいて、どうやら町へ向かっているらしいのです。
みんな同じ方向を向いて、窓の横を通り過ぎ、強い風に吹き飛ばされている干しっぱなしのシーツに巻き込まれ、
大きな屋敷で居眠りをしているおばあさんの横でテレビを楽しみ、犬に追いかけられ。やがて明け方がやって来ると・・・。

言葉で書くと、とても有り得ないような出来事ですが、
実に事細かにリアルな描写で描かれていて、目が釘付けになってしまうのです。
美しく奇妙な景色、不思議な浮遊感、そしてほとんど文章がないのに感じる大きなストーリー性。
まるで映画を見ているような感覚にしてくれます。自由自在なカメラワークが気持ちいい!
アメリカのとある町、とある火曜日に何が起こっているのか、町の人はこの出来事をどう捉えているのか。
来週の火曜日には、また違う何かが起こるのか?
デヴィッド・ウィーズナーの作品の魅力は、なんといっても読む人の想像力が刺激されていくところですよね。

コールデコット賞、絵本にっぽん賞特別賞受賞、日米両国で高い評価を受けている『かようびのよる』。
一度読んだら忘れられない1冊となることは間違いありません。
あ、もうひとつ。カエルたちのユーモラスな表情も意外と愛らしいので、こちらもお見逃しなく。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

ネコヅメのよる

ネコヅメのよる

ある日、猫は気付きます。
「あれ? もしかしてそろそろ…」
その夜。
「まちがいない、今夜だ」
猫は家をそうっと抜け出し出かけていきます。

終わらない夜

終わらない夜

カナダの画家ロブ・ゴンサルヴェスがえがく、眠りとめざめのあいだの時間。
想像力にみちたイラストレーションが、見るものを奇妙な世界にさそいこむ。

つきよのかいじゅう

つきよのかいじゅう

湖のそばにテントを張り、10年間かいじゅうが出てくるのを待ち続けた男がいます。ある月夜、ついにかいじゅうは出てきました。しかし、それは湖に住む・・・。笑いと美しい絵で心が開放される絵本。

美しく静かに過ぎていく夜の時間

よるのむこう

よるのむこう

静かに始まるあおい世界。
それは真夜中に走る列車の中であり、読者にとっての旅の始まりでもあります。
光のつぶがひとつ、ふたつ現れたかと思うと、通りすぎていく真夜中の街。
更に今度は寝静まっている家々の横を通りぬけ、古いレンガの橋を渡ると、
そこは懐かしいくにの入り口に…。

ああ、なんて美しい。
深くあおい風景に浮かびあがっているのは、まるで夜の世界からにじみ出てきたような、
柔らかくきらめいている様々な光の色。
ページをめくりながら、じっと見つめながら、何度でもため息が出てしまいます。

この絵本のテーマは帰郷。
長い夜の時間をぬけてたどりついた故郷で迎えてくれるのは、風景だけではありません。
言葉は少なくても、詩情豊かに語りかけてくれる物たち。
それらのあたたかなぬくもりを思い浮かべながら迎える朝、そこにはずっと思い続けていた変わらない空気が待っているのです。

nakabanさんの絵の、どこかを特定できないような風景、何色か決め付けられないような色彩がとても好きです。
誰かを思う時、どこかの場所を思い浮かべる瞬間、この絵本を開いて気持ちを重ね合わせてみたくなります。
そして、そんな時間を共有したい人に贈りたくもなりますね。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

あおのじかん

あおのじかん

太陽がしずみ、あたりがまっくらになるまでのひととき、空の青色はだんだんと深まっていきます。水色から濃紺へうつりゆく空のしたでは、アオカケスやコバルトガエル、ナガスクジラなど、さまざまな青い生き物たちが夜をむかえる準備中です。ながめていると心がしんとおだやかになる、とくべつな「時」を味わう美しい絵本。

よあけ

よあけ

静まり返った夜明け前の湖のほとり。と一瞬さざ波が立ち、すべてが動きだす。コールデコット賞受賞作家が、時の推移と音の世界を絵で再現した美しい絵本。

ながいながいよる

ながいながいよる

星がさえわたる冬の夜.しずかな森で動物たちが,ながい夜が明けるのを待っています.太陽はどこへ消えたのでしょう.カラスやヘラジカやキツネが,思い思いの方法で太陽を呼びもどそうとしますが…….ルウィンによる写実的で迫力のある絵が見事.しんとした雪の冷たさが伝わってくるようです.ゴールデンカイト賞受賞作.

夜の世界のちょっぴり不思議な住人たち

ひかりうりのぴかこさん

ひかりうりのぴかこさん

おや、深い深い海の底、
ぼんやりと見える明るい光に誘われていってみると・・・・。
大きな巻貝の中にお店をかまえた「ちょうちんあんこう」の「ぴかこ」さんがいました。
ぴかこさんのお店では、深海では見たことのない花のぼうしや
葉っぱのかばん、なんともめずらしいものがたくさん並んでいます。
素敵な品揃えにお客さんも大満足。
でも、謎は深まるばかりです。
だって、ぴかこさんの売ってるものは、
海の中では手に入らないものばかりなんですもの。
一体、ぴかこさんはどうやって手に入れてるのかしら。
ぴかこさんはお店を閉めるといくところがあるみたい。
それも決まって月のでない夜。
海面にむかって上へ上へ、泳いでいきます。
どうやら海の外でなにか秘密のお仕事をしているようなのです。

なんとも変わった、なんとも不思議でやさしいお話です。
ぴかこさんが照らす光の先にあるやわらかな笑顔と時間。
ヒトデ柄のエプロンを身に着けたぴかこさんが愛くるしく、
その光に照らされた登場人物もみなとてもいい表情をしているのです。
なによりも、作者の松山円香さんが表現する繊細な美しい暗闇と光の世界に酔いしれます。
静かな夜に届くぴかこさんが放つあたたかい光。
おやすみ前に読む素敵な一冊がまた増えました。

(富田直美  絵本ナビ編集部)

おつきさまはまあるくなくっちゃ!

おつきさまはまあるくなくっちゃ!

ほそーい三日月を見あげて、おばあさんは驚いた。「お月さまは、まあるくなくっちゃ!」おばあさんが心をこめてつくる、ほっかほかの手料理。それを、おいしそうに食べるお月さま。さいごには、特大のデザートまで!さぁて、お月さまはまあるくなれたかな?ふたりがかこむ温かい食卓に、心が満腹になる絵本です。

コウモリのルーファスくん

コウモリのルーファスくんは、じぶんの黒い衣装にうんざりしています。
あるとき、うまいぐあいにだれかが「えのぐばこ」をおきわすれて
くれていたので、ルーファスは、耳を赤く、つめは青く、あしは
むらさきいろに、じぶんをきれいにぬりかえました。そして
ごきげんで、日の光のなかへとびだしていったのですが……。

ホウホウフクロウ

ホウホウフクロウ

昨年逝去された井上洋介さんが遺した最後の絵本です。洋介さんの絵本といえば、やはりナンセンス絵本がその真骨頂といえるでしょう。その洋介さんが最後に辿り着いたのは、ナンセンスをはるかに超越した、静謐な水墨画の絵本でした。闇夜に飛び回るフクロウやミミズクたちは、見る者を圧倒する迫力もあり、のびのびと大らかでもあり。それは、常に斬新な発想で絵本を作り続けてきた洋介さんのお姿、そのものなのかもしれません。

おぼろ月のおさんぽ 「銀色」

おぼろ月のおさんぽ 「銀色」

そうっと のぞいた お月さま
ぎんのくつで 夜のおでかけ。
春の月が動いて、あたりを順番に銀色に照らしてゆく。
その幻想的なイメージを、カロリーナ・ラベイが「猫のさんぽ」に託して、子どもたちを夢の世界に誘います。

いかがでしたでしょうか?

ひとくちに「夜」といっても、星の数ほど様々な夜の世界があるのでしょうね。

表紙を眺めているだけでも、なんだかドキドキしてきましたよ…。

 

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

 

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