あなたは自分自身の存在を認められていますか? 言い換えれば、自分に自信はありますか?
自分に自信がないと、人にどう思われているか気になってしまうもの。周囲の人への配慮は必要ですが、
「こう言ったらどう思われるかな」
「どんな目で見られるだろう」
と常に「他人軸」で考え続ければ疲れてしまいますし、なかなか安心感をもてません。自分を追い詰めることをやめ、自分を好きになるには、どうしたらいいのでしょうか?
この記事では、自分に自信をもてなくなっている理由と、自信をもてるようになる方法を解説します。最後まで読み、紹介した内容を実践すれば、少しずつ自信がもてるようになっていくはずです。
そもそも「自信」とは何か
そもそも「自信」とはなんなのでしょう? 小学館の「デジタル大辞泉」にはこうあります。
自分で自分の能力や価値などを信じること。自分の考え方や行動が正しいと信じて疑わないこと。
(引用元:コトバンク|自信)
「自信がない」とは、この反対だと言えるでしょう。つまり、次のような状態です。
自分で自分の能力や価値を信じられない。自分の考え方や行動の正しさを疑っている。
自分に自信がない人の特徴
「自分に自信がない」とはどのような状態か、大まかにわかりましたね。次は、もっと具体的に見てみましょう。
自分に自信がない人は、自信がある人とどう違うのでしょう? 自信がもてない人には、どのような特徴があるのでしょうか。
人間科学の博士号をもつ高井範子氏(大阪行岡医療大学特任教授)の論文「自信感形成要因および自信感の発達的変化──青年期から高齢期を対象として──」では、「自信感」を形成する要因が4つ挙げられています。
- 自己肯定感
- 人間関係構築力
- 有能感
- 立ち直り力
ここでいう自信感とは「自分のあり方に自信をもっている感覚、あるいは、自分に対して自信をもって生きていると感じられていること」です。「自信があると自覚している状態」とも言い換えられるでしょう。
自信感と自信はまったく同じではないものの、共通する部分は大きいと考えられます。「自信感形成の4要因」を念頭に置いて考えると、自分に自信がない人の特徴は、次のように挙げられるのではないでしょうか。
積極的に行動できない
自信感の形成要因として挙げられた「自己肯定感」とは、ありのままの自分をポジティブに受け入れられる感覚です。自信は「自分の考え方や行動が正しいと信じて疑わないこと」なので、自信と自己肯定感は少し異なりますね。
高井氏のアンケート調査では、「自己肯定感」に関する項目のひとつとして「私は何をやってもダメな人間だと感じている」がありました。この項目に同意した人ほど、自己肯定感が弱く、自信も弱いということになります。
「自分は何をやってもダメ」だと思っていると、「○○をやってみようかな」という挑戦心や意欲は湧きませんよね。「自分の発言に自信がないから」と、職場のミーティングで意見を言うことも難しいでしょう。
自分に自信がない人には、「積極的に行動できない」という特徴があると考えられます。
自分で決められない
自分に自信がない人は、自己肯定感も低いもの。心理カウンセラーの中島輝氏によると、自己肯定感が低い人の特徴には「周囲への依存度が強い」があるそうです(東洋経済オンライン|自己肯定感が低い人に表れる危ない5つの特徴)。
先ほど説明したように、自分に自信がない人は、なかなか行動できません。つまり、自分が何をすべきか考えたり決断したりすることが苦手なのです。
すると、どうなるでしょうか? 中島氏はこう説明しています。
人に決めてもらったことを実行するため、失敗しても上司や先輩のせいにするという、他責的な傾向が強まっていきます。依存的、他責的な態度が定着してしまうと、何かを決断しなければならない局面に向き合ったときに、足踏みを続けることになります。
(引用元:東洋経済オンライン|自己肯定感が低い人に表れる危ない5つの特徴 太字による強調は編集部が施した)
自分の決断に自信がもてないため、周囲の人に決めてもらうのです。それがクセになり、ますます自分で決められなくなっていきます。
自分では決められないから、ほかの人に決めてもらわないと困る……つまり、依存です。そして、自分だけで決断しなければならず、ほかの人に頼れない場面が来ると、手も足も出なくなってしまうのです。
自己肯定感が低い人の特徴は、「自己肯定感が低い人の4大特徴×原因4つ×高め方4選」でも詳しく解説しています。気になる方はこちらもお読みください。
人付き合いが楽しくない
高井氏は、自信感形成の要因として「人間関係構築力」も挙げています。人間関係をうまく築けている人は自信をもちやすい、ということです。
高井氏によるアンケート調査には、
- 「私はいろいろな人間関係をとても楽しいと感じている」
- 「人間関係がうまくいかないことが多い」
といった項目がありました。これらの項目への答え方に、自信感との関連が見られたそうです。
「自分に自信があると人間関係がうまくいく」のか、「人間関係がうまくいっているから自分に自信がもてる」のかは、はっきりと言えません。どちらも正しいとも考えられます。
いずれにせよ、自分に自信をもっている人は、人付き合いを楽しんでいる傾向があるのです。
自分を卑下する
高井氏は、自信感の形成要因として「有能感」も挙げました。
- 「私はいろいろな良い素質をもっている」
- 「私は自分の仕事(役割・勉強など)をうまくこなす力がある」
といった項目への答え方が、自信感と関係していたそうです。
有能感とは、「自分には能力がある」と感じている状態。自信とは「自分で自分の能力や価値などを信じること」なので、自信と有能感は強く関係しているとわかりますね。
有能感が低い人は、「自分には能力がない」と感じているわけですから、自己評価も低くなってしまいます。青年心理学などを専門とする三好昭子氏(日本女子体育大学准教授)の研究発表「青年の有能感と否定的アイデンティティに影響を与える要因―若年無業者と大学生との比較」によると、有能感の低い人は、
- 「役に立たない」
- 「価値のない存在」
と自分を否定的に表現する傾向があったそうです。自分に自信のない人は、自分に対して非常に低い評価を下していると言えます。
落ち込みやすい
高井氏の挙げた自信感形成要因には「立ち直り力」があります。
- 「私は少々つらいことがあっても乗り越えていく力がある」
- 「ささいなことでも落ち込み、なかなか立ち直れない」
といった回答項目と関係しているそうです。
自分に自信がある人は、嫌な出来事があっても乗り越えやすいのに対し、自分に自信のない人は嫌なことを引きずり、なかなか立ち直れないと考えられます。
困難な状態から立ち直れることは「レジリエンス」と呼ばれます。ウェルビーイングなどを研究する前野隆司氏(慶應義塾大学教授)らの論文「社会人における楽観性・自尊心とコミュニケーションスキルがレジリエンスに及ぼす影響」によると、レジリエンスの高さと自尊心(self-esteem)の高さは関係しているそうです。
高井氏の研究でも、自信感の尺度と「自尊感情(self-esteem)」の尺度は「非常に高い相関を示した」とされています。自分に自信のない人は、レジリエンスが低い傾向にあると考えられるでしょう。
ここまで、自信、自己肯定感、自尊心など、さまざまな用語が登場しましたね。それぞれの違いについて、詳しくは「自尊心と自己肯定感の違いとは? 意味をわかりやすく解説!」をお読みください。
自分に自信がない原因
「自分に自信がない」とはどのような状態か、かなり具体的にイメージできていると思います。あなたにも、いくつか思い当たる点があるのではないでしょうか。
では、自分に自信がもてなくなってしまったのはどうしてなのでしょう? 「自分に自信のある人」と何が違ったのでしょうか?
自信を取り戻すため、「自分に自信がない原因」を理解しておきましょう。
家庭環境
自分に自信がもてない原因のひとつには、幼少期の家庭環境が挙げられます。心理学者の根本橘夫氏は、自信や自尊心を含むという「自己価値感」について、こう記しました。
基底的な自己価値の感覚は、幼児期から形成され、児童期の初期には確立してしまうといわれています。
その形成条件は、愛情豊かで適切な養育環境です。(中略)
逆に、基底的な自己無価値の感覚は、愛情に欠けた適切でない養育において形成されます。(中略)
このような不適合な状況では、子どもは自分の感覚、欲求、意思、感情、行動に価値があるとは感じられず、自分そのものが無価値な存在だという感覚を形成してしまうのです。
(引用元:根本橘夫(2007),『なぜ自信が持てないのか 自己価値感の心理学』, PHP研究所. 太字による強調は編集部が施した)
よく知られているように、生まれ育った環境は人格形成を大きく左右します。子どもの頃、
- 嬉しい
- 悲しい
といった感情や、
- お腹が空いた
- トイレに行きたい
といった欲求を無視され、価値がないものとして扱われ続けると、「自分は価値のない人間だ」という感覚が根づいてしまうのです。
家庭環境が自信に及ぼす影響は、中学生・高校生になっても続きます。発達心理学などを研究する渡辺弥生氏(法政大学教授)は、親からの声かけに関する問題点をこう指摘しています。
子どもがテストで良い点を取るなど、なにか良いことがあれば「すごい」と褒めるけれど、そうでない場合は叱ってしまったり「もっと頑張らなきゃ」と言ったりする親御さんは多いのではないでしょうか。
これが繰り返される中で子どもは、良い点を取る自分は価値があるけれど、そうじゃなければ価値がない、というような不安を持ってしまうこともあるのです。
(引用元:不登校サポートナビ|【心理学者の相談室】子どもに自信をつけさせたい。どうすればいいの? 太字による強調は編集部が施した)
このように育てられた人は多いのではないでしょうか?
頑張って勉強しても、テストの点が上がらないことはあります。そんなとき、努力を認めてもらえず叱責されるばかりでは、「自分はテストの点数でしか価値を認めてもらえないのか……」と感じてしまいますよね。
このような感覚が根づくと、大人になっても「私は○○ができない。だから価値がない」という心理から抜け出すのが難しいのではないでしょうか。
失敗の経験
失敗した経験も、自信の喪失につながります。物事をうまくこなせなかったという認識が、「私の能力は低い」という感覚につながるのです。
心理学者のガイ・ウィンチ氏は、失敗経験のもたらす影響をこう語っています。
失敗すると自分が小さく見え、自信がなくなります。
大きな失敗をしたあとは、その失敗自体のみならず、「自分は何ひとつまともにできない」「どうせ一生ダメなんだ」と、自分のすべてを否定する考えばかりが浮かんできて、「無力感」や「無気力」にさいなまれます。
(引用元:東洋経済オンライン|失敗や挫折を乗り越える人の「具体的な方法」 太字による強調は編集部が施した)
たとえば、「ペンをなくした」というだけの小さな出来事なら、自信には影響しにくいでしょう。しかし、「ハンカチも見つからない」「必要なレシートを捨ててしまった」と続いたら?
「自分ってダメなやつだな……」と、自分の能力や価値を低く感じてしまうのではないでしょうか。そして、
- 財布をなくし、けっきょく見つからなかった
- 職場で扱っている個人情報を漏洩させてしまった
のように大きい失敗があると、1回で自信が低下しそうですよね。自分を責めたくなりますし、まわりから批判を受けるかもしれません。
自分に自信がもてなくなった背景には、過去の失敗経験があるのです。コミュニケーションで「失敗」を感じた経験が多いと、自分に自信がないと感じ、他人が怖いと思うようになるかもしれません。
高い理想
「私はダメだ」と自分に自信がもてない理由としては、「現実の自分」と「理想の自分」のズレも挙げられます。「本当はこうあるべきなのに、できていないから、自分はダメなんだ」と感じているのです。
精神科医の名越康文氏は、自信のなさについてこう語っています。
「自信が持てない人」に共通するのは、「キラキラした自分」や「成功している自分」への期待と、そうなることができない現実とのギャップです。
(引用元:東洋経済オンライン|努力しても「自信が持てない人」に欠けた視点)
「こうだったらいいな」と高い理想を掲げていたり、向上心が強かったりする人は、その基準に達していない現在の自分に自信をもちにくいのではないでしょうか。
他人との比較
理想の自分と現実の自分を比較すると自信が失われるように、自分と他人を比べてしまうことでも自信が低下する場合があります。他人との比較は、次の2種類です。
- 上方比較:自分より優れた相手と比べる
- 下方比較:自分より劣った相手と比べる
ふたつのうち「上方比較」は、自尊心を低下させることが知られています。社会心理学を専門とする礒部智加衣氏(千葉大学准教授)らの論文では、比較と自尊心の関係がこう説明されています。
人は自分よりも劣った他者との比較によって肯定的な感情を感じ、状態自尊心が高まる。逆に、自分よりも優れた他者との比較によって、否定的な感情・状態自尊心の低下を経験する。
(引用元:礒部智加衣・浦光博(2002),「内集団成員との上方比較後の感情・状態自尊心に,集団間上方比較と特性自尊心が及ぼす影響」, 実験社会心理学研究, 41巻, 2号, pp.98-110. 太字による強調は編集部が施した)
たとえば、テストで80点をとり、「よくできたな!」と誇らしい気持ちになっていたとします。しかし、「平均点は95点だった」という事実を知ればどうでしょう?
喜びの感情はしぼみ、「平均より15点も低かったなんて……」と落ち込むのではないでしょうか。平均点さえ知らなければ、このように否定的な感情を経験することはなかったはずです。
筆者自身、就職が決まって喜んだのも束の間、年齢別の平均年収を検索し、自分との差を知ってがく然とした経験があります。「私、年収が低いほうなんだ……」と、自分の仕事の価値が低いように感じたのです。
このように、他人と自分を比べることで自信が失われる場合があります。「世間」や「平均」を意識することが多い人は、自信をなくしやすいと言えるかもしれません。
自分に自信がないとき、どうすれば?
自分に自信をもてなくなってしまった理由がわかりました。原因を取り除き、自信を感じられるようになるには、どうしたらいいのでしょうか?
リフレーミング
自分に自信がないとき、ぜひやってほしいのが「リフレーミング」です。公認心理師の川島達史氏によると、「リフレーミングは自尊心を高める基本的な手法」だそう(ダイコミュ|自尊心が低い方へ,高める方法)。
リフレーミングとは、物事を解釈するときの「枠組み」を変えること。有名な例を挙げると、「コップに水が半分入っている」という事実はひとつですが、解釈は複数あります。
- 半分も入っている
- 半分しか入っていない
事実は変えられなくても、ポジティブに解釈して喜ぶか、ネガティブに解釈して落ち込むかは自分で選べるのです。前向きな考えを習慣化すれば、欠点だと思っていた自分の特徴を長所だと思い直すことができますし、失敗を「成功へのチャンス」だととらえられるようになるでしょう。
リフレーミングについては「心理学のリフレーミングとは? 効果&練習法をわかりやすく解説!」で詳しく解説しているので、自信をつけたい方はぜひご参照ください。
セルフ・コンパッション日記
自信がもてない理由のひとつは、「理想の自分」を目指し、「いまの自分」を否定しているから。自分に自信がない状況を改善したいなら、現在の自分を受け入れる必要があるのです。
自分を受け入れるために意識したいのが「セルフ・コンパッション(self-compassion)」。パーソナリティ心理学を研究する有光興記氏(関西学院大学教授)はこう言っています。
自分自身を負の側面も含めて『あるがまま』に受け入れるには,そのための心のありようが必要となる。それが,セルフ・コンパッションである。
(引用元:日本心理学会|セルフ・コンパッションと「あるがまま」 太字による強調は編集部が施した)
compassionとは、「共感」や「同情」。selfは「自分自身」を意味するので、セルフ・コンパッションとは「自分への共感」です。
他者に共感を示すとき、「よかったね」「大変だったね」などと言いますよね。「そんなことくらいで喜ぶなよ」「失敗したのは自分が悪いんでしょ」といった態度は共感ではありません。
自分に対し、後者のような言葉をかけていませんか?
- うまくいったけど、いちいち喜ぶべきじゃない
- うまくいかなくて悲しいけど、自分が悪いんだから仕方ない
と、厳しく接していないでしょうか。
自信を失う機会を減らすには、ありのままの自分を受け入れることが必要です。そのためには、セルフ・コンパッションを実践し、自分自身に共感することを習慣づけましょう。
自分に共感する方法としては、日記がおすすめです。
日記帳を用意する必要はありません。スケジュール帳を使っているなら、自由記入欄に3文ほど書くだけで十分です。
スケジュールをデジタルで管理しているなら、スケジュールアプリの自由記入欄を活用したり、日記アプリを使ったりしましょう。
日記には、その日あったことを簡単にまとめ、それに対する自分の感想を素直に表現しましょう。その際、自分の判断や行動を批判的にとらえず、優しく受け入れるのが大事です。
【セルフ・コンパッション的な日記】
7,000歩も歩いた。こんなに体を動かしたのはいつぶりだろう。たくさん運動して疲れたはずなのに帰宅後はてきぱきと家事を片づけられた。
【セルフ・コンパッション的ではない日記】
7,000歩歩いた。ちゃんとウォーキングをするのは久しぶり。最近はずっとサボってしまっていた。帰ってから家事をしたけれど、まだやることがたくさん残っている。
「7,000歩歩いた」と「家事をした」という事実は同じなのに、それに対する解釈が異なりますね。
「これしかできなかった」という批判的な視点ではなく、「こんなにできた」という肯定的な姿勢でとらえてみてください。このような日記を毎日書き続けることで、セルフ・コンパッションの考え方が身についていくはずです。
日記の書き方については、「【保存版】効果的な日記の書き方7選」でも詳しく紹介しています。
ちょっとした「新しいこと」に挑戦する
自分の選択に自信がもてない、自分の判断に自信がもてない……というあなたは、自分で決め、行動する経験を重ねてはいかがでしょうか? 自信をつけるため、普段とは違うことに挑戦してみましょう。
自分に自信がない人には、「自分で決められない」という特徴があるのでしたね。
心理カウンセラーの中島輝氏によると、自己肯定感は「6つの感」に支えられており、そのひとつに「自己決定感」があります。中島氏は、自己肯定感を「木」に例えたうえで、自己決定感をこう説明しました。
「自分で決定できるという感覚」で、「花」にあたります。主体的に自分で決めることで、花は開きます。
(引用元:東洋経済オンライン|「自己肯定感が低い人」に足りない6つの感情)
自分で考え、決めることで自己決定感が育ち、自己肯定感が伸び、自信がつくと考えられますね。
ただ、「待ち合わせ時間」や「今日の夕食」を友人や家族に決めてもらう習慣がついていると、いきなり変えることは難しいかもしれません。自分の意見に自信がないと、提案する勇気がなかなかもてませんよね。
そんなときは、自分ひとりでもできる、普段とは違う行動をとってみてはいかがでしょう。たとえば次のなかに、いままで行ったことがないか、何年も足を運んでいない場所はありませんか?
- ライブハウス
- 映画館
- ゲームセンター
- 水族館
- 遊園地
もしくは、これまで経験していないもの。
- 買ったことのない雑誌
- 読んだことのない作家
- 入ったことのない店
- 通ったことのない道
- 視聴したことのないYouTubeチャンネル
小さなことでかまわないので、最近やっていないことや、これまで経験していないことに挑戦してみましょう。挑戦してみた結果、楽しい経験や達成感が得られたら、「こうすればうまくいくんだな」という成功体験になります。
一方で、読んだ本がおもしろくなかったり、注文した料理の味が期待通りでなかったりして、不満を感じることもあるでしょう。ですが、それも貴重な経験です。
経験は、「次はこうしたほうがよさそうだ」と判断する材料になります。経験という情報があるからこそ、自分で決めることができるのです。
経験がないままだと、「自信がないから、ほかの人に決めてもらおう」ということになってしまいます。「自分の行動に自信がない……」というあなたは、まずは自分ひとりでできる、ちょっとした「新しいこと」に手をつけてみましょう。
資格試験を受ける
「自分の仕事に自信がない……」
「転職したいけど、採用される自信がない……」
そう考えているのは、「自信感形成要因」のひとつ、「有能感」が弱いからではないでしょうか。「自分は、業務をこなす能力が不十分なのでは」と感じているのです。
求人情報サイトの運営などを手がける株式会社ビズヒッツが2022年に実施した「仕事に自信を持てない理由に関する意識調査」では、「仕事に自信がある理由」と「仕事に自信を持てない理由」について、最も多い回答は次のとおりでした。
自信がある理由:資格・スキルがあるから
自信がない理由:資格・スキルがないから
つまり、「自分にはスキルがある」という自覚が、仕事における自信につながっているのです。そして、「スキルをもっている」ことをわかりやすく証明するのが、資格というわけ。
仕事について自分に自信がない人は、資格試験を受けてみるのがよさそうですね。いまの業務や業界に応じて、「マーケティング 資格」「IT 資格」と検索してみましょう。
詳しくは「何か資格をとりたいけど、何がいい? 選ぶ基準&おすすめ資格18選」で解説しています。
過去の自分を思い出す
自分より優れた人との比較で自信が低下する、という話をしましたね。「みんなに比べ、自分はこんなにダメだ……」と落ち込んだり、特定の人に嫉妬したり。
このような感情を避けるため、誰かと比較してしまいそうになったら、他人ではなく「過去の自分」と比べましょう。精神科医の樺沢紫苑氏は、「他人と比べる人は不幸になり、自分と比べる人は幸せになる」と断言しています(YouTube|人と比べてしまうあなたへ【精神科医・樺沢紫苑】#shorts)。
ほかの人と比べたら未熟に思える自分でも、昔と比べて成長していることがあるはずです。たとえば……
- 平均と比べて年収が低い……
→非正規の頃に比べたら100万円も増えた! - Aさんと違って役職につけてもらえない……
→重要な業務を任されることが増えた! - ほかの人と比べてSNSのフォロワーが少ない……
→前に比べたら、深い話をできる人が増えた!
「もっと頑張らなきゃ」と奮起するきっかけにもなるので、他人との比較が悪いと一概には言えません。しかし、自分に自信がないときは、嫉妬や落ち込みの原因になってしまうので、やめたほうがいいでしょう。
他人と比べそうになったら、急いで「他人」を「過去の自分」に置き換えてください。
自分に自信がないときに読む本
最後は、「自分に自信がないのが苦しい……」と悩んでいるあなたに、ぜひ読んでほしいおすすめの本を紹介します。
かつて筆者は、強いストレスから聴覚過敏になり、2年ほど心療内科に通っていました。早く心を楽にしたい一心で手に取ったのが、この『幸せは「がんばらない」が9割』です。
本書が対象にしているのは「マジメな人」です。前書きにはこうあります。
これまで自宅を出ると常に「がんばりやの自分」で過ごしてきた人は、今後、「がんばらない自分」を通常モードにしていく、と決意してください。
マジメな人は、「がんばる」ことを当たり前と思っているかもしれませんが、ほかの人は、がんばるのは「ココぞ!」というときだけです。
(引用元:植西聰(2021),『幸せは「がんばらない」が9割』, 工パブリック. 太字による強調は編集部が施した)
「人生では常に努力が必要である」
「いつも全力で頑張らなければいけない」
そんな価値観に別れを告げ、「頑張らない自分」を受け入れられるよう読者を手助けするのが、『幸せは「がんばらない」が9割』の狙いなのです。
見開き2ページが1セットになっており、右ページには見出しとイラストが、左ページにはアドバイスが書かれています。フルカラーで、全体的に優しい色が使われており、穏やかな気持ちで読み進められるでしょう。
第4章の「がんばりすぎなくたって大丈夫」には、自分に自信をもつためのアドバイスが詰まっています。
- アサーティブな話し方を学ぶ
- 小さな目標をひとつずつ達成する
- 「80点で十分」と考える など
できそうなものから実践していくことで、「いまの自分ではダメだ。頑張らないと」という考えから離れ、自分に自信がもてるようになっていくはずです。
筆者もこの本を読み始めた頃は、「頑張らないなんて、そんなことは許されない……」と感じていました。しかし、本書の内容を素直に受け入れるよう努め、アドバイスを実践し続けた結果、自信や自己肯定感がそれなりにもてるようになったと思っています。
自分に自信がないときに読む本として、『幸せは「がんばらない」が9割』は非常におすすめです。「自分にまったく自信がない」「自分に自信がないのを克服したい」と考えているなら、ぜひこの本を読んでみてください。
***
自分に自信をもてなくなっている理由と、解決のヒントをご紹介しました。
自信がもてるようになれば、人からどう思われるか気にすることが減るため、ストレスも減ります。「人にどう思われるか」ではなく「自分がどうしたいか」を基準に考えられるようになるでしょう。
この記事を最後まで読んだあなたには、「『根拠のない自信』とは? 無条件で自分を信じる人間が強いワケ」もおすすめです。続けて読んでみてください。
コトバンク|自信
高井範子(2011),「自信感形成要因および自信感の発達的変化──青年期から高齢期を対象として──」, 健康心理学研究, 24巻, 1号, pp.45-58.
東洋経済オンライン|自己肯定感が低い人に表れる危ない5つの特徴
三好昭子(2011),「青年の有能感と否定的アイデンティティに影響を与える要因―若年無業者と大学生との比較」, 日本青年心理学会大会発表論文集, 19号, pp.70-71.
魚地朋恵・前野隆司(2021),「社会人における楽観性・自尊心とコミュニケーションスキルがレジリエンスに及ぼす影響」, 行動医学研究, 26巻, 1号, pp.24-33.
根本橘夫(2007),『なぜ自信が持てないのか 自己価値感の心理学』, PHP研究所.
不登校サポートナビ|【心理学者の相談室】子どもに自信をつけさせたい。どうすればいいの?
東洋経済オンライン|努力しても「自信が持てない人」に欠けた視点
礒部智加衣・浦光博(2002),「内集団成員との上方比較後の感情・状態自尊心に,集団間上方比較と特性自尊心が及ぼす影響」, 実験社会心理学研究, 41巻, 2号, pp.98-110.
東洋経済オンライン|失敗や挫折を乗り越える人の「具体的な方法」
ダイコミュ|自尊心が低い方へ,高める方法
日本心理学会|セルフ・コンパッションと「あるがまま」
東洋経済オンライン|「自己肯定感が低い人」に足りない6つの感情
PR TIMES|【仕事に自信を持てない理由ランキング】働く男女500人アンケート調査
YouTube|人と比べてしまうあなたへ【精神科医・樺沢紫苑】#shorts
植西聰(2021),『幸せは「がんばらない」が9割』, 工パブリック.
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。