「作業分解」で仕事が変わる WBS式 効率化メソッド - STUDY HACKER(スタディーハッカー)|社会人の勉強法&英語学習

「作業分解」で仕事が変わる WBS式 効率化メソッド

デスクに山積みされた資料

「常に仕事が山積み。効率よく終わらせるには、どうすればいいんだろう……」
「いろいろな仕事を同時並行していて、集中できずにミスをしてしまう」

このような仕事の効率化に関するお悩みは、タスク管理で解決できる可能性があります。今回は、タスク管理の方法のひとつとして「WBSWork Breakdown Structure:作業分解構造図)」をご紹介しましょう。

タスク管理が下手な人がやるべきこと

タスク管理と聞くと、やるべきことのリストアップや優先順位を考えるといったイメージがあるかもしれません。しかし、まずは「いま」やることを決めて、ひとつのタスクに集中することが大切です。

心理学ジャーナリストの佐々木正悟氏は、タスク管理のポイントとして「考えられる範囲のなかで『いま現時点でやるべきこと』を明らかにして、それに全力を尽くすこと」を挙げています。いまやることが決まっていなければ「『いまはなにをするのがいいのか?』『次はなにをするんだっけ?』といった迷いが生じる」かもしれないからです。*1

たしかに、1週間分のタスクをスケジュールに組み込んだとしても、「いまから何をしよう?」と迷っていては時間のロスにつながってしまいますね。タスク管理に苦手意識のある人は、先々のタスクまで管理しようと欲張らずに、1日分の仕事をコントロールする意識をもつといいでしょう。

また、目の前の仕事だけに集中することの重要性は、『SINGLE TASK 一点集中術』の著者、デボラ・ザック氏も認めています。ザック氏によれば「本来、『一度に複数の作業をしようとする』こと自体が『気が散っている』ことを意味」しています。その理由は、以下のとおり。

マルチタスクをこなそうとすると、瞬時に集中する対象を切り替えるよう脳が強要される。すると遅れが生じ、切り替えのたびに集中力が落ちる。*2

つまり、マルチタスクは脳に負担がかかり、仕事に集中できなくなってしまうのですね。だからこそ、目の前の仕事に集中するシングルタスクが大切なのです。

書類を手に持ちながら立つビジネスパーソン

タスク管理にはWBS(作業分解構造図)がおすすめ

いまやることを決めて、目の前の仕事だけに集中する――これを実行するための具体的な方法としておすすめなのが「WBS(作業分解構造図)」です。

Webディレクターの鎌田麻三子氏によると、WBSとは「仕事やプロジェクトにおける各タスクを分解・分類し、階層構造として表現した」もの。そのメリットは、いまやることが可視化されることです。

WBSはプロジェクト全体の作業内容を"見える化"するものであり、これによりチームメンバーは「自分は次になにをするべきか」を把握しやすくなります。チーム内の役割や作業プロセス、成果物が明確になれば、余分な手戻りを減らすことができ、最終的なリリースまでの道のりも明確になるでしょう。*3

つまり、仕事内容を分解・分類することで「いまやること」や「次にやること」がわかりやすくなるのですね。やることがきちんと決まることで、シングルタスクにも集中しやすくなるはずです。

WBS(作業分解構造図)をやってみた!

ここからは、筆者による実践を通して、WBSの作り方をご紹介しましょう。筆者はタスク管理がうまくいかず、「あれもこれもやらなきゃ」と集中力がそがれて仕事が長引くことが多いのです。そんな筆者が、WBSを活用してタスク管理を試みます。

前出の鎌田氏は、WBSの作り方を次の4つのステップで示しています。*3

  1. タスク洗い出し
  2. タスクの順序を決定
  3. タスクのカテゴライズ・構造化
  4. 担当を決定

作成ツールに指定はないようなので、今回はExcelを使って「イベントレポートの執筆」という仕事のWBSを作成します。

1. タスクの洗い出し

はじめに、やるべきタスクをすべて書き出します。「取材」「執筆」などの大きなカテゴリを、具体的な作業に分解するイメージです。今回は表形式で書き出し、右へ行くほど作業内容が細かくなるようにしました。

筆者が作成したWBS

2. タスクの順序を決定

続いて、書き出したタスクを実行する順番を決めます。「日程調整をしてから取材のスケジュールを決める」「取材へ行ったらまずはヒアリング」といったように、仕事の流れを考えながらタスクに順番をつけていきましょう。順番がわかりやすいよう、赤字で数字を入力しました。

筆者が作成したWBS

3. タスクのカテゴライズ・構造化

次に、タスクをツリー状に並べて構造化をしていきます。人材育成コンサルタントの清水久三子氏は、「大まかに切り分けた作業を『レベル1』」、「レベル1を達成するために必要な作業を切り分けて『レベル2』」のように、レベルごとに構造化する方法をすすめています。*4

つまり、最終目標の「イベントレポートの執筆」を切り分けた「事前準備」「取材」「執筆」がレベル1、その下に「日程調整」「ヒアリング」などがレベル2として配置されるイメージです。

筆者が作成したWBSの全体図

全体図

筆者が作成したWBSの「事前準備」拡大

「事前準備」拡大

筆者が作成したWBSの「取材」拡大

「取材」拡大

筆者が作成したWBSの「執筆」拡大

「執筆」拡大

※画像は筆者が作成した

今回はチームではなく筆者が自身のみのタスク管理を行なっているため、4つめの「担当の決定」は省略することに。完成したWBSに沿って、仕事を進めました。

WBS(作業分解構造図)で作業効率が上がった

仕事にWBSを取り入れると、「いまやるべきこと」「次にやること」がはっきりしました。その結果「何からやろう?」と迷ったり、とりあえず思いついた作業に手をつけたりすることがなくなり、順を追って効率よく仕事を進められたのです。

たとえば筆者は、記事の構成を決める前に写真を選んでしまい、あとから必要な写真が揃っておらず画像を見返すことがありました。しかし、WBSを作ったことで順番が明確になり、無駄なやり直しや再確認が減ったと実感しています。作業効率が上がったと言っていいでしょう。

笑顔でガッツポーズをするビジネスパーソン

また、WBSに書いてあるとおりに仕事を進めるため、自然とマルチタスクがなくなった実感もあります。構成を考えながら写真を選ぶといったことがなく、集中力がそがれにくいと感じました。前出の佐々木氏がタスク管理のポイントとして挙げた「『いま現時点でやるべきこと』を明らかにして、それに全力を尽くすこと」を実践できたのです。*1

今回は短期的な仕事にWBSを取り入れましたが、中長期的な業務にも活用できそうです。「いまやること」がはっきりするため、先送りにしたりモチベーションに左右されたりすることを防げるのではないでしょうか。

さらに、短期的な仕事でWBSを作る際は、「〇月〇日までに」と期限を書き加えると、より優先順位が可視化されて実行しやすくなると思います。

***
タスクを具体的に可視化できる、WBS(作業分解構造図)。仕事が終わらない、効率が悪いと悩んでいる人は、試してみてはいかがでしょうか。

※引用部分の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

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