「気づいたら、2時間もスマホを見て過ごしていた……」「ちょっとでも暇ができると、すぐスマホに手を伸ばしてしまう」
このようにスマホを触りすぎてしまう自分に嫌気がさしている、という読者の方も多いのではないでしょうか。
現代社会で、スマホを使わずに過ごすというのは、非常に難しいものです。しかし、スマホが身近すぎるあまり、知らず知らずのうちにスマホ依存になっていることもあるのです。
今回は、スマホと距離をとる方法について紹介します。
スマホ依存のチェックをしてみよう
「スマホはたしかによく触ってしまうけれど、依存というほどではない」と思っている方も多いかもしれません。しかし、じつは思っている以上に依存している可能性があるのです。
おくむらメモリークリニック理事長で脳神経外科医の奥村歩氏が、スマホ依存のチェックリストを紹介しています。このリストを使ってチェックしていきましょう。
家でも仕事中でもすぐにスマホを手に取れる状態にしている
「あの人の名前はなんだろう?」「あの映画のタイトルはなんだっけ?」など、 頭に疑問が浮かんだときは、すぐにスマホで検索してしまう
仕事でよい文章が浮かばないとき、スマホで検索したサイトの例文をコピペする
電車に乗っているときや仕事や家事、勉強などの休憩時間、ちょっとした待ち時間など、少しでも時間が空くとスマホを触ってしまう
「これ、覚えとかなきゃ」と思ったものはスマホで写真やスクリーンショットを撮る
家にスマホを置き忘れると不安で仕方がない
目的もないのに無意識にメールやサイトのチェックをスマホを使ってする
毎晩、 就寝直前までスマホを操作している
昼夜を問わずスマホでメールやラインをチェックして返信する
スマホのスクリーンタイムが1日平均2時間を超える
スマホの着信音やバイブレーションの「空耳」が聞こえることがある
スマホのネット検索以外で、調べ物をすることがなくなった
飲食店を選ぶ基準は自分の直感や知り合いの紹介よりもネットの評判を重視する
チェックした項目の合計数が4つ以上なら、スマホ依存である疑いがあります。また、チェックした項目数が3つ以下でも、スマホに頼りきった生活を送っているという意識のある方はスマホ依存の予備軍といえます。*1
あらためてチェックしてみると、思っていたよりも依存度が高いことに気づいた人もいると思います。とはいえ、スマホを触りすぎることはそんなに悪いことなのでしょうか。次項では、スマホの触りすぎによって起こる弊害について説明します。
スマホを触りすぎるとなにが起こるのか
あらためて、スマホを触りすぎると起こるデメリットについて確認していきましょう。奥村氏は、最近の医療現場では、スマホは「『依存性物質』と認定されてい」ると話します。*1
あまりにも日常的に身近にあるものなので気づきにくいですが、スマホは非常に依存性が高いものなのです。さらに、奥村氏は以下のように語っています。
スマホ依存は、本人に依存症になっている自覚が乏しいです。自覚しないと対策もしないため、脳の疲れがどんどん悪化して『脳過労』となります。脳過労とは脳の使いすぎによって脳の機能が低下した状態のことです。*1
筆者もよくスマホを手に取ってしまいますが、依存しているという自覚はありません。だからこそ、漫然とスマホを使い続け、知らず知らずのうちに脳疲労(脳過労)を起こしてしまうのです。
脳疲労を起こしているかどうかは、どのように判断すればいいのでしょうか。大阪大学大学院人間科学研究科准教授の平井啓氏は、以下のような状態であれば、脳疲労を起こしていると話します。
- 以前こなせていた仕事がなかなか終わらない
- 家に帰るとぐったりして何もしたくない
- 判断しにくくなった
- 一度にたくさんのことを言われると混乱する
- イライラしてちょっとしたことで職場の人や家族にあたってしまう *2
当てはまる項目があるという方も多いのではないでしょうか。脳疲労を起こしている状態では、仕事や勉強はもちろん、生活全般に悪影響が出てしまいます。早急にスマホ依存から脱出する必要があります。
「スマホから距離を置く」ことを習慣化する方法
スマホ依存は無自覚に脳疲労を起こし、生活の質を下げることがわかりました。それでは、スマホ依存状態から脱するには、どのようにしたらいいのでしょうか。
「ついスマホを触ってしまう」といっても、その背景には人によってさまざまな理由があります。たとえば以下のような状況です。
- 仕事や勉強に取り掛かるものの、やる気が起きず、ついスマホを見てしまう
- 寝てしまうのがもったいなく感じ、寝落ちするまでベッドのなかでスマホを見てしまう
- 休憩中、手持無沙汰で、ついスマホを触ってしまう
- ひとり暮らしの寂しさから、食事・風呂・移動中など、いつも動画などを見てしまう
ひとつひとつ見てみると、なにか感情的な理由があって、スマホを触っているのです。「スマホを触りすぎている」と自覚すると、つい「スマホを触らない」という無茶な目標を立ててしまいがちですが、スマホを触りたくなる理由に向き合わずに、ただスマホを禁じても、すぐ挫折してしまいます。
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、悪習慣をやめる方法として、「悪い習慣をやめる! という目標ではなく、『~する』という代替行動を決めなければいけない」と話します。*3
「スマホを見るのをやめる」というのは、行動としてイメージしにくいものです。そうではなく、スマホを見る代わりになにをするのか、ということを具体的に決めることが、スマホ依存を断ち切るためには必要なのです。
先ほど挙げた例から、スマホを触ってしまう理由と代替行動を考えてみました。
仕事や勉強のやる気が起きず、ついスマホを見てしまう
【スマホを触ってしまう理由】
作業をやりたくないため、スマホを見ることで先延ばししている
【代替行動】
- コワーキングスペースで作業するなど、人目がある場所で作業する
- ポモドーロ・テクニックを活用し、「25分作業して、休憩中の5分間だけスマホを見る」と決める
- 仕事のあとに、映画やレストラン、美容院などを予約し、締め切り効果を利用する
寝てしまうのがもったいなく感じ、寝落ちするまでベッドのなかでスマホを見てしまう
【スマホを触ってしまう理由】
日中の自由時間が少ない、またはストレスがかかっているせいで、自分の時間を確保するために夜スマホを触っている
【代替行動】
- スキマ時間を楽しいことにあてる(観たかったドラマをスキマ時間でテレビで観る、1時間早く起きてゲームをするなど)
- 週に一回はカロリーを気にせず食べたいものを食べに行ったりする
- カラオケやジョギングなど、ストレス発散を取り入れる
休憩中、手持無沙汰で、ついスマホを触ってしまう
【スマホを触ってしまう理由】
休憩中にできる楽しいことがなく、なんとなくスマホを見ている
【代替行動】
- あえてコンビニでマンガ雑誌を買い、休憩中に一作品ずつ読む
- 音楽を聞きながら、会社のまわりを10分散歩する
ひとり暮らしの寂しさから、いつも動画などを見てしまう
【スマホを触ってしまう理由】
ひとり暮らしでなんとなく寂しい、人と話したいという気持ちから、スマホを見ている
【代替行動】
- 帰ってきたらスマホをOFFにし、代わりにラジオをつける
- 週に一度近所の飲食店を巡って、お気に入りの店を探し、定期的に行く
- グループレッスンがある習い事を始める
自分がなぜスマホ依存になっているのかを振り返り、その理由に寄り添う代替行動を選択すれば、自然とスマホ依存を克服できるでしょう。
そうすれば、脳疲労も軽減され、日常生活をもっと健やかに過ごせるようになります。
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スマホ依存は思っている以上に身近なもの。この記事を読み終わったら、一度スマホを置いてぼーっとしてみましょう。
*1 東洋経済オンライン|だらだらスマホ触る人ほど「脳が疲れる」驚きの訳
*2 治療と仕事の両立支援ナビ ポータルサイト|両立支援におけるストレスマネジメント
*3 プレジデントオンライン|固い決意「スマホを見過ぎない」はむしろ逆効果
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。