心が疲れると、やる気や集中力が低下して、仕事のパフォーマンスが落ちてしまいます。そういった状況が少しでも思い当たるなら、3つの要素で心が疲れない自分をつくっていきましょう。ひとつずつ詳しく説明します。
要素1. 結果を気にしすぎない
ビジネスにおいて、目標をもって行動することは重要です。しかし、今週中には、絶対に契約をとろう!、必ず企画を通そう! といったように、結果を求めがちな人は要注意。焦りや不安が増大し、心が疲れてしまう可能性があります。
公認心理師、産業カウンセラーの片田智也氏によれば、心を疲れさせないためには「自分でコントロールできないものを気にしない」ことが重要なのだとか。コントロールできないものへの執着が、以下のような悪循環を生むからです。
仕事の結果を気にしすぎていると、それにともなって「契約をとれなかったらどうしよう……」といった不安などの感情も強まります。商談の場で不安や緊張で心身がガチガチになって失言をしたり話すべき内容を忘れてしまったりすれば、とれたはずの契約もとれなくなってしまうでしょう。
(参考およびカギカッコ内含む引用元:STUDY HACKER|心が疲れない人がしているのは「○○思考」。心がすぐ疲れる人との考え方の違いとは)
これでは心も疲れてしまうでしょう。そうならないためには、目標の立て方を変えるのがおすすめです。片田氏いわく「自分だけではコントロールが難しい目標」ではなく、「具体的かつコントロール可能な目標」を設定することで「不安を飼い慣らせる」とのこと。
つまり、自分次第でどうにかなる “行動” に重きを置いた目標を立てるわけです。片田氏の言葉を参考に例を挙げてみましょう。
- 契約をとる→新規顧客を10件訪問する
- 企画を通す→企画を5個考える
- プレゼンを成功させる→前を向いて堂々と話す
ポイントは、それが「自分の行動」であるかどうか。契約をとれるかどうかは相手の判断によりますが、たとえば顧客訪問であれば件数の増減を自分で調整できるます。数字的な目標を据えることで目標も具体的になります。
(参考およびカギカッコ内引用元:ミーツキャリア|今すぐ「やめるべき」思考習慣とは? 仕事で結果を出すための感情マネジメント術)
要素2.「イラショナル・ビリーフ」を手放す
「頼まれた仕事は完璧にこなすべきだ」「職場の雰囲気をよくするために、常に笑顔でいるべきだ」といった~すべき思考で、がんじがらめになっていませんか? 信念やこだわりも、度が過ぎると心の疲れにつながってしまいます。
たとえば「頼まれた仕事は完璧にこなす」という考え方は、誰かに強制されているわけではありません。これに固執してしまうと、わずかなミスでも自分を責めたり、満足してもらえたかどうか不安に駆られたりすることがあります。
ネガティブな感情にさらされ続けた結果、心が疲れてしまうのです。
東京成徳大学教授、日本公認心理師協会副会長の石隈利紀氏は、個々が持つ信念や考え方(ビリーフ)について、次のように述べています。
ビリーフには往々にして、「いつも一番でなきゃいけない」「絶対に失敗してはならない」などといった“ねばならぬ主義”があり、これらをイラショナル・ビリーフ(非論理的な考え方)と呼んでいますが、これが強すぎると、不安や悩み、怒り、あるいは自分をみじめにする感情を引き起こすのです。
(引用元:リクルートワークス研究所|自分も他者も認めて、柔らかく生きる)
誰でも多かれ少なかれイラショナル・ビリーフをもっているかもしれません。しかし、それに縛られると心を疲れさせてしまいます。そうならないよう、イラショナル・ビリーフを手放すことが必要です。
そうしたことから石隈氏は、「自分のイラショナル・ビリーフに対して、『その根拠は?』『誰が決めたの?』という具合に点検を繰り返す」ようすすめています(カギカッコ内引用元:同上)。それにより、その考えに固執する必要性はないことに気づき、気持ちが楽になるのではないでしょうか。
とはいえ、考え方や価値観をすぐに変えるのは難しいかもしれません。そんなときは、
- なるべくミスがないよう気をつけよう
- ありがとうと言ってもらえれば十分
といった具合に、こだわりを緩めながら少しずつイラショナル・ビリーフを手放してみてはいかがでしょう。
要素3.「無感情」の時間を取り入れる
仕事で嫌なことがあったから、気晴らしにスイーツを食べる――といったように、ネガティブな感情を消そうと行動することはよくありますよね。しかし、ネガティブからポジティブへと極端に感情を揺さぶるのも、心の負担になる可能性があります。
つまり、いったん感情をニュートラルに戻すことなく、ポジティブとネガティブを行き来することで心が疲れてしまうのです。仕事で嫌なことがあってスイーツを食べて気晴らしをしても、しばらくすると明日の仕事のことを思い、モヤモヤが復活するイメージです。
そこでおすすめしたいのが、ネガティブでもポジティブでもない無感情な時間を取り入れること。僧侶で『反応しない練習』(KADOKAWA/中経出版)の著者でもある草薙龍瞬氏は、
怒って、喜んで、怒って、喜んで、の繰り返し。まるで反復横跳びではありませんか。しかも「真ん中」(ニュートラル)が抜けている(!)。これで心が消耗するのは、ごく自然ですよね。
と述べ、感情に振り回されがちな私たちに対し、「ニュートラルな心」を大事にするよう伝えています。
いっとき感情を手放して、心をラクにするわけですね。そういった怒りも喜びもない無感情な状態にするには、「感覚に意識を向ける」ことだと草薙氏。具体例として、次のような呼吸の方法を挙げています。
「吸う」を「1」、「吐く」を「2」と数えて、10まで数える(感情をリセットするために、50、100まで数えてもOK)。
(参考およびカギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|心が強い人は「無感情」を習慣にしている)
実際に、筆者もこの方法を試してみました。
好きなことをしているあいだは楽しいのですが、あとから「まだ仕事が残っていて嫌だな」「どうして仕事に集中できないんだろう」とネガティブな感情に襲われることがあるからです。
そこで、仕事に集中できないと感じたときや、趣味の時間と仕事の時間のあいだなど、ポジティブとネガティブが切り替わりそうなタイミングで呼吸法を取り入れたところ、感情をフラットにすることができました。
数を数えながら呼吸に集中したことで「仕事が嫌だ」といった考えが頭の中から一掃された気がします。
感情が揺さぶられることが多い仕事の前後や、考え事にふけりやすい寝る前に行なうのがおすすめです。心が疲れてしまいがちな人は試してみてください。
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考え方を変えたり、感情の整え方を覚えたりすることで、次第に心が疲れにくくなるはずです。今回ご紹介した3つの要素を意識して「心が疲れにくい自分」になれば、仕事も一層はかどるでしょう。
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リクルートワークス研究所|自分も他者も認めて、柔らかく生きる
東洋経済オンライン|心が強い人は「無感情」を習慣にしている
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。