「頑張って勉強したのに、たいして身につかなかった。勉強意欲がなくなってしまった……」
「勉強に長時間割いたけど、資格試験に合格できなかった。もう自信がない……」
こうした勉強の悩みは、“ふたつのこと” を意識してみると解消に向かうかもしれません。
勉強しても効果が感じられないから……と諦めてしまう人。
勉強の効果を実感し、学ぶ意欲を持ち続けられる人。
両者の違いを知り、諦めずに勉強を続けられるようになるために、勉強のやり方を改善してみましょう。
【1】初めのうちは「できたこと」に注目しよう
覚えられなかったり、問題の答えを間違えたりと、勉強には「できない」体験がつきもの。初めて勉強する内容だとなおさら「できない」「わからない」という場面は多いでしょう。しかし、できないことにばかり目を向けていると、勉強の効果を実感するのは難しいものです。
『何歳からでも結果が出る 本当の勉強法』著者の望月俊孝氏によると、「勉強の初期段階は、とにかく『できた部分だけに』フォーカスする」べきであるそう。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|勉強の効果が上がらない人と抜群な人の決定的差)
その根拠として、望月氏はこんな実験結果を紹介しています。
シカゴ大学のアイレット・フィッシュバッハ氏らが、寄付慈善団体の登録者122名を「まだ寄付をしたことのない人たち」「毎月平均32ドル寄付する常連」に分け、以下2通りの頼み方で寄付を募った。
・表現1:【達成分】を強調する
「ゴールは1万ドル。現在は4920ドルまで達成しています」・表現2:【不足分】を強調する
「ゴールの1万ドルまで、あと5080ドル足りません」
すると結果は、
- まだ寄付をしたことのない人たちは、【達成分】を強調された表現1のほう
- 寄付の常連は、【不足分】を強調された表現2のほう
それぞれ上記の頼まれ方をしたときに、より多くの人が寄付をした。
(引用元:同上。実験結果は同資料よりまとめた)前者の結果を勉強に当てはめてみると、とある内容を学び始めて間もないうちは、“この言葉は覚えた” “この問題は解けた” などと達成できたことに注目すると、勉強のモチベーションが上がる――と言えるでしょう。こうしたことから望月氏は、“初期段階はできた部分にフォーカスすべき” としているのですね。
具体的には、「一度解けた問題でも解き直す、復習する、自分ができたことを日記につけていく」ことを望月氏は提案しています。(カギカッコ内引用元:同上)
あなたも、初めての内容に取り組むときは、できないところやわからない内容はいったん置いておき、「この単語は覚えていた」「この理論も理解できていた」といったように、できた部分を探しながら復習をしてみませんか? 日記につけるとするならこのような具合でしょうか。
【例】5月15日(月) ○○資格のテキストで、
- 「○○」という言葉の説明を暗記できた
- 練習問題で○問正解できた
- 昨日勉強した○○の内容を忘れていなかった
できたことに目を向ければ「勉強したことが、きちんと身についている!」と効果を実感できるはず。モチベーションも保ちやすく、勉強を続けやすくなるでしょう。しだいにできることが増えていけば、ますます勉強意欲が上がるはずです。
【2】「やらないこと」を決めよう
「問題集は、1ページも漏らさずに全部やるぞ」
「参考書は、最初から最後のページまで丁寧に読まなくちゃ」
このように、とてもまじめに勉強する人ほど効果を感じられそうな気がするものですが、「あれもこれも、全部やろう」とするのはよくないようです。
東京大学卒で、800超の資格をもつ資格・勉強法アドバイザーの鈴木秀明氏は、「何でも完璧にやろうとする人は、むしろ得点力は低い」と言います。完璧を求めると「途中で壁に突き当たるとスランプになったり、勉強が嫌になったりする」のだとか。
一方、「得点力を高める」には、「手を抜いてもいいところは適度に手を抜いて、真に注力すべきところにエネルギーを注ぐ」ことが大切だと鈴木氏。
手を抜く、つまり「優先順位の低いタスクや時間対効果・労力対効果の小さいタスクを、削れるところから削っていく」ことで「勉強の生産性が上が」るのだそうです。
(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|東大生のなかで「すごい!」と言われる人たちの「手の抜き方」とは?)
これこそ、勉強の効果を実感したい人にとって必要な考え方ではないでしょうか?
とはいえ、勉強の効果を実感したいと思えば思うほど、「あれの勉強も必要かも」「この知識もやらないとまずいかも」と考えてしまうもの……。勉強量を削るのは、勇気がいりますよね。
そこで、鈴木氏が挙げる「あえて捨てる」5つのポイントを参考に、どこで手を抜くのか判断しましょう。
(2)配点が低い科目・分野
(3)めったに出題されない分野
(4)ほかの受験者も解けないだろうと思われる分野・問題
(5)直近の回の試験で出題されたばかりのところ
(各文言はダイヤモンド・オンライン|勉強で最も大事なのは「やらないこと」を決めること より引用した)
資格試験を受けるなら、過去問を最初に確認して、上記の1~5を判断してから勉強を始めるとよさそうです。1ページめから順に問題を解くのではなく、先に配点や正答率をチェックしたり、例年とは違う傾向の問題をあぶり出したりしておくと、手の抜きどころを決めやすいでしょう。
筆者は資格の勉強ではありませんが、読書術を学ぶためのテキストを読む際に、上の1~5をチェックしてみました。すると、習得に時間がかかりそうな「速読」の章は飛ばそうと瞬時に判断できました。また「めったに出題されない分野」は「ほとんど使わない知識」と言い換え、特に悩んでおらず新たに知識を得る必要性を感じていない「選書」の章も飛ばすことに。ちなみに、読まない章を決めるときは、テキストの目次を見ながら行ないました。
勉強で「手を抜くところ」「やらないこと」を決めると、不必要な内容には時間と労力を割かずにすむので効率がよく、本当に必要な勉強に力を注げるので効果も実感しやすいと感じました。余力ができたぶん、「資格の勉強もしようかな」「仕事で使えるスキルも学びたい」とほかの勉強にも意欲的になれましたよ。
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学習の方法や考え方を変えれば、次第に勉強の効果を実感できるようになるはずです。勉強内容が理解できなかったり成績が伸びなかったりと効果を感じられず、勉強を諦めかけていた……というあなた。ぜひ今回ご紹介した方法を試してみてくださいね。
(参考)
東洋経済オンライン|勉強の効果が上がらない人と抜群な人の決定的差
Ayelet Fishbach, Marlone D Henderson, Minjung Koo (2011), “Pursuing goals with others: group identification and motivation resulting from things done versus things left undone,” Journal of Experimental Psychology, Vol. 140, No. 3, pp.520-534.
シカクロード|取得資格一覧
ダイヤモンド・オンライン|東大生のなかで「すごい!」と言われる人たちの「手の抜き方」とは?
ダイヤモンド・オンライン|勉強で最も大事なのは「やらないこと」を決めること
【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。