「上司から言われたとおりにはできるけど、自分で考えて行動するのは苦手...」 「もっと主体的に仕事をしてほしいと言われても、どうすればいいかわからない...」
このような悩みを抱えていませんか? もしそうなら、周囲からは"深く考えられない人"と見られているかもしれません。しかし、諦める必要はありません。
本記事では、深く考える習慣がないとどのようなリスクがあるのか、そしてどうすれば“深く考える人"になれるのかを具体的にご紹介します。たとえば、データ入力の仕事一つとっても、その意味や目的を考えることで新たな気づきが生まれるかもしれません。
「自分には無理だ」と思わずに、できるところから少しずつ始めてみましょう。きっと、あなたの中に眠っている"考える力"を引き出すヒントが見つかるはずです。
“考える人”と“考えない人”はココが違う
「言われたことはできるけど、ほかに何をすればいいのかわからない」
「もっと当事者意識をもって仕事してほしいと言われても困る」
このようなお悩みは、“深く考える習慣がない人”に見受けられます。一方で、“深く考える習慣がある人”は言われたことに留まらず、自ら仕事を見つけて取り組めます。どうやら、この両者の差は「主体性」にあるようです。
キャリアコンサルタントの粟野友樹氏は、主体性について「目的や課題を自ら設定して、その実現のために考え行動し、結果に責任を持って取り組む力」だと説明します。*1
たとえば、仕事で使うデータ整理の状況を例に考えてみます。これまではデータをひとつひとつ確認してフォルダ分けして……と、手間がかかったとしましょう。その際に、「この作業は改善の余地があるかもしれない。自動化できないだろうか?」と課題を見つけ出し、「作業を効率化しよう」と目標を設定して実際に行動できるのが主体性のある人です。そんななか、疑問すら抱かずに漫然と仕事をするのが主体性のない人と言えるのではないでしょうか。
さらに、主体性の有無は“会話”にも現れるようです。
『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者でコンサルタントの安達裕哉氏によれば、「過去の仕事のエピソード」を聞いたときの答え方で、その違いがわかるのだそう。
なぜなら、「割り振られた仕事をこなしているだけの人は、自分の頭で考えて行動していないので、具体的なエピソードが全然出てこないですし、自分の言葉で答えられ」ないからです。*2
先の例で言えば、主体性をもって行動した人なら「データ量が多いと時間もかかるしミスもしやすいので、どうにかしたかったんですよね。ちょうど勉強していたシェルスクリプトを使って、効率化してみようと思ったんです」などと具体的に語れるでしょう。
仕事に取り組むときの姿勢や職場での何気ない会話で、あなたに考える習慣があるのかどうかが明らかになってくるのです。
“考えない人”はここがまずい
ここまで読んでくださった人のなかには、「自分に主体性はないかもしれないけど、仕事はちゃんとしてるし問題ない」と思った人がいるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか? 深く考える習慣がないのは自分自身のキャリアに影響があるだけではなく、まわりにも悪影響を及ぼしかねません。
ご自身やまわりにどのような悪影響があるのかを、ここでは3つお伝えしましょう。
自らのキャリアに悪影響
自分への悪影響として「自ら考え、行動しない人は周囲や上司から評価されにく」いとしたうえで、キャリアアップには「主体性や観察力、先を読む力などが求められ」ると話すのは、キャリアコンサルタントの後藤祐介氏。*3
言われたことができる人はほかにもたくさんいます。それはつまり、代わりがほかにもたくさんいるということです。
深く考える習慣がないままでは評価されないどころか、いまのポジションすら奪われてしまうかもしれません。
チームの生産性に悪影響
深く考える習慣がない人には主体性がないため、「上司やリーダーにも『具体的な指示をする』という業務が加わり、チーム全体の作業効率が低下することもある」と後藤氏は述べます。(カギカッコ内引用元:同上)
“言われないと動けない”という人は要注意。悪気はなくても、まわりに負担をかけてしまっている可能性があるのです。
まわりのモチベーションを下げる
自ら考えて仕事に取り組む人にとって、いわゆる「指示待ち」の姿勢は理解し難いものです。後藤氏は「給料の差がない場合は、仕事量と報酬が釣り合わないと感じ、周囲のモチベーションが低下していく恐れもある」とも指摘しています。*3
たしかに、なにも考えずに仕事をしている人と同じ報酬だと、自ら考えて前向きに取り組んでいる姿勢を正当に評価されていないように感じ、モチベーションが下がってしまいますよね。
深く考える習慣がないと、このように知らぬ間にまわりにも悪影響を与えてしまっている可能性があるのです。
“考える習慣”を身につける方法
では、どうすれば深く考える習慣が身につくのでしょうか。その方法を、ここでは3つ紹介いたしましょう。
相手視点で考えてみる
前出の粟野氏は「仕事で関わる人の視点に立ってみると、新たな課題が見えるようになり、やるべきことが見えてくるかもしれ」ないと話します。*1
たとえば忙しい上司に報告を求められたならば、「忙しそうだからいまは要点だけを伝えて、詳細はメールをしておこう」と考えることもできます。
“もし自分が相手の立場だったら、どうしてほしい?”という視点をもつだけで、そこに考える余地が生まれるのです。
その仕事の意味を考える
「どんな仕事にも意味があると言うけれど、いつも同じ作業だと飽きてしまうし、退屈に感じてしまう……」
そのようなお悩みに対して粟野氏は、「一つひとつの仕事に『意識して臨む』ことで、仕事に対して興味が湧き、主体的に関わろうと思えるようになる」とすすめます。*1
たとえば、目の前の仕事がその先どのように広がっていくのかを想像してみるのはどうでしょうか?
データ入力をするなら、「これは誰がどんなときに、なんのために使うデータなのか?」と考えてみると、そのデータに興味をもつことができ、改善点に気づいて提案できるかもしれません。
目標を設定する
“新しい業務にチャレンジする”“作業効率を上げる”のように目標を決めるのも、深く考える習慣を身につけるのにいいでしょう。
粟野氏も、「目標を決めて行動」する「経験が、自ら考え行動する(=主体性を高める)トレーニングにな」ると述べています。*1
以下に目標を決めて自ら行動することの具体例を挙げてみました。
- 業務量が多すぎて新しい業務にチャレンジする時間や余裕がないため、現在担当している業務の一部を後輩に引き継ぐためのマニュアルを作成しようと考え行動に移した。
- ミスによる手戻りが多いために作業効率が落ちているので、ミスしやすい作業を自動化してヒューマンエラーをなくすように取り組んだ。
こんなふうに自分で考えて目標を決め、行動に移せるといいですね。目標を達成する経験の積み重ねは、仕事に対するモチベーションにもつながりそうです。
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なにも考えずに漫然と仕事をするリスクと、その打開策について紹介しました。深く考えて行動する習慣を身につけて、前向きに仕事に取り組めるといいですね。
※引用部分の太字は編集部が施した
*1 リクナビNEXTジャーナル|「主体性」とはどういう意味?仕事で主体性が重要視される理由と高める方法
*2 ダイヤモンド・オンライン|「自分の頭で考えている人」と「受け売りをしてるだけの浅い人」を一発で見抜く“すごい方法”【書籍オンライン編集部セレクション】
*3 ハタラクティブ| 「指示待ち人間の特徴とは?具体的な原因や脱却するポイント、対処法を解説
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。