以前、六本木ヒルズ内にある森美術館で開催された、「黒澤明 展」に映像製作をしている友人と行ったことがあります。
黒澤明と言えば、世界で有名な映画監督の一人です。
黒澤監督は若い頃、画家を志していました。
「黒澤明展」では黒澤監督が書き残した多くの絵画が展示され、画家としての才野があった事を物語っていました。
黒澤監督が残した絵画は、主に映画の登場人物を描いた、いわゆるキャラクターデザインでした。
日本映画界が斜陽化し、映画館にお客が入らなくなった70年代以降、黒澤監督ですら映画製作が出来なくなります。
テレビに流れていく映画人を横目に、あくまでも映画製作にこだわった黒澤明。
自殺未遂事件を起こすなど、黒澤監督は自身を追いつめていきます。
そのような中、「映画は作れなくても、せめて絵だけでも残しておきたい」と、黒澤監督は絵筆を握るのでした。
黒澤明が残したキャラクターデザインを見ると、実に緻密に描いている事がわかります。
鉄砲隊の鎧、足軽の装束、大将の兜など、色から型まで、そのまま動き出すような姿。
「七人の侍」「影武者」「乱」「夢」「八月の狂詩曲」、そして遺作となった「まあだだよ」まで、実に多くの登場人物が描かれていました。
私が特に印象残ったのは、黒澤監督が書き残した「まあだだよ」のワンシーンの絵でした。
夕暮れに浮かぶ雲、そこに黒澤監督の筆で、「大胆に描いて下さい。ありきたりでは駄目です。」とありました。
世界の絵本展でも書きましたが、人の持つ想像力、イマジネーションは無限だと思います。
映画、映像製作には常にリアリティと空想力のバランスを求められます。
その中にあって、黒澤明監督の言葉は重みがあると思います。