ケイスケホンダとはなんだったのか。
ロシアでの日本のW杯は終わった。
そしてケイスケホンダのW杯も終わった。
(事実上の代表引退を表明)
日本は総括しなければならない、この男を。
ベルギー戦の総括よりも急を要する。
一体なんだったんだ、この人は。
W杯直前に放送された「プロフェッショナル~仕事の流儀~」において、
自分の名前を個人名ではなく「概念」にまで押し上げ、
日本中から猛烈な「ふざけんな」寄りのツッコミを受けるも、
それをあざ笑うかのようなセネガル戦でのゴールと、あの敬礼ポーズ。
実にこの顔である。
日本を救う劇的なゴールへの感謝を一瞬忘れてしまうほど、
ムカッとくるフェイスだ。
なんでこんな顔をする必要があったのか・・・。
しかしこれこそが、ケイスケホンダがケイスケホンダである所以だ。
8年前、日本サッカー界に突如として降臨し、長きに渡って君臨した男の、コアが凝縮されて世界に配信されたと言っても過言ではない。
「そっちの方がオモロイやろ」
サッカーを含めたスポーツの世界は、結果が全てである。
その中でもサッカーは、恐ろしいほどにそのサイクルが目まぐるしい。
ほとんど、一試合ごとと言ってもいいくらいに、
批判と称賛の間を行ったり来たりする。
ケイスケホンダはこの性質に誰よりも自覚的だった。
批判もあれば称賛もある、という話ではなく、
批判はその次に訪れる称賛のスケールを大きくし、
称賛はその次に訪れる批判のスケールを大きくする、というものだ。
デカい称賛の後に、デカい批判がやってくる。その逆もしかりで、それらは相関関係にある。
「それやったら大きい方がオモロイやろ。俺も観てる人も。」
称賛も批判も固定されないなら、デカくできるところまでデカくする。そっちの方が間違いなくオモロい。そのためだったら発言だろうとなんだろうと駆使する。
あれは4年前、2014ブラジルW杯のことー
彼はよせばいいのに「優勝する」と各所でぶち上げ、日本中の期待を煽りに煽った。
結果はご存じのとおり、惨敗。
その時を振り返って、こんなことを語っていた。
(オフの日、自宅での高負荷の自主トレ中の発言)
「もうできひんっていうラインから、どこまでやれるか。自分との戦いやね。(中略)これくらい気分が乗ってたら、誰でもできるんです。試されるのは、気持ちが乗らないとき。W杯で負けて日本中から『謝れ』と叩かれているときに、これができるか。僕はできます」
↓この本からの引用です。
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確かに当時、想像を絶する叩かれ方をしていた。
最大級にどデカい批判の矛先が、彼に集中していた時、
肝心の本人が何をしていたかというと、
筋トレをしていたのだ。
これを、よく言われるところの、彼一流の「鋼のメンタル」として
片付けていいと思わない。
デカい批判のあとに必ずやってくる、デカい称賛。
それを妄想して、下手したらワクワクしていた可能性すらある。
だって、その種は既にまかれているのだ。
自分がこのサイクルをやめさえしなければ。
この努力の方向性さえ間違っていなければ。
そして今回のロシアW杯。
チームとしてベスト16。個人としては1ゴール1アシストという結果が、4年前の批判を回収するほどの称賛につながったかどうか、それはわからない。いろいろな評価の向きがあると思う。
いずれにしても、
彼のW杯とそれをめぐるサイクルは終わる。
「有言実行の人」ということで通っているが、全てが履行されているわけではない。
また、「大言壮語だけの人である」という批判も、的がズレている。そんな人間ならとっくに消えている。
それでは、ケイスケホンダとはなんなのか。
あえて言うなら、
「サプライズ精神が度を超した変人」である。
人を驚かせて喜ばせることが好きで、そのために想像を絶する努力を払える人である、というのが8年間彼を観てきた自分の見解である。
「夢を叶えた人」であり、「自己実現」の代名詞的な存在で語られることも多いが、
根本的にその視線は自己ではなく他者に向けられていると感じる。むしろ、他者の中に自分も含まれているような感じだ。
大きな(オモロい)物語の発起人となり、批判も想定外も全て含めてその進行をマネジメントする、そんな存在だったように思う。
こんなサッカー選手はもう現れないだろう。
まず無理である。
でもしょうがない。
もう代表選手としての彼を観ることはできない。
この戯曲もフィナーレだ。カーテンコールとして、
最後に一言もらおう。
「8年間、オモロかったやろ?」
本田、ほんとに面白かったよ!!
ありがとう!