先輩VOICE 08 Spiral Club | STAND UP STUDENTS | Powered by 東京新聞

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いま、わたしたちのまわりで、
起きていること。

毎日の勉強や、遊びに恋愛、就活。普段の暮らしの中では見えてこないたくさんのできごと。環境のことや政治、経済のこと。友達の悩みも、将来への不安も。小さなことも大きなことも全部、きっと大切な、自分たちのこと。

確かなこと。信じること。納得すること。コミュニケーションや、意見の交換。
あたりまえの自由さ、権利。流れてきた情報に頼るのではなくて、自分たちの目で耳で、手で、足で、感動をつかんでいく。

東京新聞『STAND UP STUDENTS』は、これからの社会を生きる若者たちに寄り添い、明日へと立ち向かっていくためのウェブマガジンです。等身大の学生たちのリアルな声や、第一線で活躍する先輩たちの声を集めることで、少しでも、誰かの明日の、生きる知恵やヒントになりたい。

時代を見つめ、絶えずファクトチェックを続けてきた『新聞』というメディアだからこそ伝えられる、『いま』が、ここに集まります。

先輩VOICE

08
Spiral Club
すぱいらるくらぶ

ある日、手にした1枚の手作りの新聞「すぱいらる号」。ポップなイラストとデザインの雰囲気から、好きな映画や音楽のことが書かれているのかと思いきや、そこには「環境」「署名」「サステナブル」の文字。難しいはずの社会問題が、カルチャー誌のようにインタビューやエッセイでわかりやすくまとめられていました。運営するのは「環境について話そう」をテーマに、約30名の有志のメンバーが集まり生まれた「Spiral Club」。さまざまなアクションを通じて、とにかく楽しみながら環境問題と向き合う彼らに、普段の活動のこと、学生時代のこと、就活のことを、伺ってきました。

Spiral Club ができたきっかけを教えてください。

FUJIGARA:私は2017年の夏頃に NEUT Magazine で、気候変動の解決を目指す国際環境 NGO 「350 Japan」を運営するスタッフの対談記事を読んでボランティアに参加したのですが、そこで同じボランティアやスタッフとして活動していたのが、今一緒に「すぱいらる号」を編集しているモエギや、Spiral Club の立ち上げメンバーでした。同世代の8人くらいですね。

モエギ:その中の1人が「気候変動も大事だけれど、1つの問題に絞らず、日常的に政治のことから身の回りの小さな問題まで、幅広く話し合えるコミュニティがあったらいいよね」って提案してくれて。それに賛同した人たちが2018年11月くらいから徐々に集まって、まずは「名前を決めよう」と。

FUJIGARA:螺旋(らせん)を意味する「スパイラル」っていう言葉は立ち上げの時点で話に上がっていました。同じところをまわるのではなく、循環しながら上昇していくような。自然界の黄金比を表現してるというのもいいなと思い「Spiral Club しかないよね!」って(笑)。モエギがロゴのイラストを描いてくれたんですけど、それを見てみんなで「うん。かっこいい!」って。その後、2019年2月に開催した Spiral Club の結成イベントを機に正式に活動がスタートしました。

モエギさんは普段はデザイナーを?

モエギ:いや、私はデザインを学んできたわけでもないし、イラストも趣味で描いてるだけなんですけど、みんなが「ここでいろいろ実験していいよ」って受け入れてくれたのがきっかけで Spiral Club ではデザインをしたりイラストを描いたりしています。あとは過去のボランティア経験を生かしてオープンミーティングを企画したり。Spiral Club はやりたい人がやりたいことをそれぞれみんなに提案しながらやる、という感じなので、基本自由です。

立山:リーダーがいるわけでもないし、誰が何の担当というのもなくて、それぞれ生活のために自分の仕事をしながら、好きなこととか得意なことを持ち寄って活動しているのがいいんですよね。ぼくは写真家を目指して上京してきたので 、時々みんなの写真を撮ったりしています。Spiral Club は自分のやりたいことを形にしたり発信できる場でもありますね。

みなさんは普段の仕事と Spiral Club の活動はどう両立させていますか?

FUJIGARA:私は IT 系の会社で業務委託としてお仕事をもらいつつ、フリーランスとしてデザインをしたり、写真を撮ったり、アート関係のイベントの手伝いをしています。もともとは正社員だったんですが、コロナ禍で働き方を考えたいなって思うようになって、もっと自分の好きなことや 得意なことをやっていけたらなと、徐々に「働き方改革」を実現しています(笑)。

石垣:私ももともと広告代理店で働いてたんですが、知人の紹介で Spiral Club を知って活動に関わるようになってから、自分のキャリアというか、本当にやりたいことってなんだろうと考えるようになって、最近、積極的に環境活動に取り組む映像制作会社に転職しました。それで言うと Spiral Club には多大な影響を与えられてますよね(笑)。

リサ:私は国際 NGO で、気候変動の解決のための市民活動を広げるための「フィールドオーガナイザー」という仕事のアシスタントをしているので、Spiral Club の活動と普段の仕事がつながっている感じです。

石垣:リサはオランダから Spiral Club に参加してくれたんだよね。

リサ:そうですね。オランダの大学で「環境問題と人」というテーマで卒業論文を書いてて、難しい数字やデータを並べて発信する活動団体ではなく、もっと「人」の気持ちに寄り添った活動をしている人たちはいないのかと思ってググったらすぐに「Spiral Club」の名前が(笑)。おもしろそうと思ってすぐに「仲間に入れて」とメールしました。

「すぱいらる号」の発行以外に、普段はどういったペースでどんな活動をされてるんですか?

モエギ:コロナ禍でしばらく休んでいましたが、代々木公園に集まって月1くらいで誰でも参加できるオープンミーティングを開催しています。例えば「海洋生物とプラスチックの問題」とか「ハミガキ粉を作ってみよう」とか毎回違ったテーマを決めて SNS で呼びかけるんですが、毎回、世代も職業も違う人たちが20人くらい集まるので、それぞれの視点が共有されておもしろいんですよね。気候変動に関心ある人もいれば、食に関心のある人もいるし、専門家のように知識がある人もいれば、ここではじめて問題の重要さを知るという人もいて。

立山:ここでの話し合いで答えを導き出すとか、専門家が誰かに何かを教えるとかではなく、それぞれがその時のテーマに対して思っていることをシェアするという感じなので気軽なんです。誰かの意見をアドバイスと感じた人はそのまま受け取ればいいし、モヤっとしてる人はモヤっとしてることをそのまま共有して、他の人の意見を聞いてみるといいなと。

石垣:Spiral Club は主催者でもあり参加者でもあるんですが、私たちが気付かされること、教えてもらうことの方が多いです。

STAND UP STUDENTS を通じて会った学生の中には、意見はあるけれど、同調圧力を感じてなかなか言えずに悩んでいるという学生も多かったのですが、そういう人でも参加できるものですか?

モエギ:むしろそういう人ばかりです(笑)。普段、家族や友人に意見が言えないから、ここで話してみるという。

FUJIGARA:それでも20人とかが集まると意見は言いづらくなるので、グループに分けてローテーションでなるべくみんなが話せる機会を作れたらと思っています。あとミーティングでは話せなかったけれど、終わってから参加者同士で自然と話せたりとか。意外とそこで本音で話せて仲良くなったり。オンラインだとそれができないのが寂しいなと。

石垣:周りの影響で「言えない」気持ち、私もすごくわかります。自分もそうだったので。でもある時、環境活動をリードしている先輩から「誰かに意見を伝える時は『種を蒔く』気持ちで話してみるといい」と教えてもらって、それを実践しています。例えば、突然「気候変動を止めないと!」と言っても、誰も聞く耳は持ってくれなくて、でも「昨日ニュースを見て悲しい気持ちになった」とか「無農薬の野菜を買って料理してみた」とか、自分の中で起こったことを小さなことでもいいから種を蒔くように少しずつ広げてみる。そうすると、ある日共感してくれる人が現れたり、SNS でシェアしてくれたり、徐々に芽が出るように広がっていくのかなって。すぐに返事やリアクションはないかもしれないけれど、いつか芽が出る、と思うようになったら、割となんでも気軽に話せるようになりました。

FUJIGARA:わからないことがあって当たり前だし、考えるきっかけも理解のスピードもそれぞれ違うし、いろんな人がいて、いろんな考えがあって OK というのが、私たちのオープンミーティングのいいところかなと思います。

リサ:Spiral Club のみんなと会って驚いたのは、みんな話をするのも聞くのも上手なんですよね。誰でもできるミーティングではなく、主催者としてそこの調整がうまくできているんだと思います。まず話を聞いてくれる。

立山:それにみんなテーマに対して普段から話をしてるので、いろいろな視点で意見を持っているんですよね。それがオープンミーティングで参加者が話をする時の安心感につながっているんだと思います。

参加者が安心して話ができるコツというかポイントはどこだと思いますか?

モエギ:自分の意見を共有する時に、主語が「国」や「社会」にならないようにするのと、個人の考えを「こうすべき」と押し付けないのが大事だと思います。あくまで「共有」なので「違う意見を出してもいい」というのを Spiral Club のみんなが理解していることが、安心感につながるのかなと。意見をぶつけたりするのではなくて「積み上げていく」感覚でディスカッションをすると自然と楽しくなってきます!

他にオープンミーティングで気をつけていることはありますか?

モエギ:「話したことを忘れない」ことですね。誰か一人がその問題のことをひとつ忘れると、解決からひとつ遠のくと考えているので、日常的に考えたり話をすることが大事なんだと思います。

なるほど。確かにそれは大事ですね。忘れてしまわないように心掛けていることはありますか?

モエギ:個人的に新聞を読むのがすごく好きで、気になったニュースとか、疑問に感じたこと、モヤモヤしたことをとにかく会ったみんなに話すようにしていて、そうすると種から芽が出るみたいに、どんどん他の話題に広がっていくんですよね。突き詰めるとけっきょく環境問題に至るよね、とか。選挙に行かないと、とか。ただ新聞を読むだけでは、それはそれで考えが偏ってしまうかもしれないけれど、読んで思ったことをみんなと話すことで、忘れないし、いろいろな視点を取り入れられるなと。新聞がそのきっかけになってますね。

FUJIGARA:私も常に考えるために、ネットでニュースを見たり SNS で情報をたくさん取り入れてた時期があったんですが、切り取り報道とか、誰か一人の意見に対して極端な賛否があったり、SNS はファクトチェックがないから「言ってたことと事実と違うじゃん!」ってこともあったり、それで疲れてしまって⋯。一人で考える時間も大事だけれど、モエギが言うように、会って話すことも大事だなと思いました。SNS 自体はいいんですが、課題に対して自分に都合のいい情報や意見だけ集めてただ反対するのではなく、反対側の人にもそう思う理由や背景、歴史の積み重ねがあると思うので、全体の声に耳を傾けたいと考えるようになりました。今は自分とは違う意見や思想が生まれる背景を学ぶ一つの手段として SNS やネット を使っています。

石垣:社会に出て何か問題を解決したいと思った時、そうなっているのには理由があるわけで、一方的に自分の意見だけで愚痴を言っても解決はしないので、賛成と反対の両方のソースを読む力が必要かなと思っています。学生の時から SNS に頼りすぎずに、まず話してみること、大事だと思いますね。と言いながら私もモエギや FUJIGARA のやり方をすごく参考にしています(笑)。

 

学生の悩みの1つに、新卒採用のプレッシャーなどの就活問題があります。Spiral Club のみなさんはいわゆる一般的な就活を通ってない印象がありますが、どう考えますか?

FUJIGARA:もともと私は貧しい家庭出身なので、なるべくいい会社に就職してお金を稼がないと生活できないし、やりたいこともできないと思ってたんですが、ボランティア活動や Spiral Club を通じて、いろいろな考えを持つ人たちと出会ううちに「働き方も生き方もいろいろあっていいよね」と思うようになりました。学生時代は何も知らなくて頭がガチガチで正社員しかないと思っていたけれど、ある程度生活ができて好きなこともできるのであれば業務委託でも何でもいい。会社に入らないとお給料をもらえないって思ってたけれど、仕事もお給料も人とのご縁の上で成り立っていて、いろいろな形があるんだなって。今はみんなで社会の「抜け穴」を探究している最中です(笑)。

立山:ぼくも一度、会社説明会を受けたんですが、話を聞くにつれて自分のやりたいこととズレを感じるようになって⋯。自分のやりたいことを叶えるために就職するはずが、どんどん企業側の要望に自分を合わせなくてはいけなくなる感覚があって⋯。周りの友人たちも苦しそうだし、エントリーシートを書くうちに自分を偽ってまで就活したくないなと思いました。

モエギ:私は就職活動はしなかったんですが、就職する前にとにかくいろいろな体験をした方がいいと思っています。結局いま Spiral Club に関われたり、仕事を任せてもらえてるのも、学生時代に海外を放浪した経験が生きていて。自分のやりたい仕事を見つけるのも大事だと思うんですが、とにかく学生のうちに細かい経験をたくさん積んで、自分が好きとか、違和感を感じるとか、流れに身を任せるというのもありなのかなって。いい会社に就職するというより、居心地のいい場所を探すのがいいと思います。

リサ:私にとっては Spiral Club が居心地のいい場所。オランダで就職先を探しているうちにビザの関係で帰国することになって、一番に会いに行ったのも Spiral Club だし、日本で仕事を探しているっていう私に、350 での仕事を紹介してくれたのもみんなだし、私も居心地のいい場所と縁が大事だなって思います。

石垣:でも新卒で1社目が大事だって思う気持ちもわかります。ただ、実際に社会に出てみると人生どうにでもなるというか(笑)。

モエギ:私もそんな風に「1社目がダメでもなんとかなる」って当時言われてたら気軽に社会に出れたと思う。社会人になる前にボランティアに参加してよかったのは、いろんな経験をしてきたいろんな世代の大人が、対等に話をしてくれたんですよね。自分のやりたいことを明確にして、その方向に向かって動き出せばなんとかなるということを身をもって教えてくれた感じです。もちろん「この人どうやって食べていけてるんだろう」って思う人もいましたが(笑)。

最後にライフワークとして Spiral Club を続ける理由といいますか、続くためのコツやモチベーションがあれば教えてください。

FUJIGARA:とにかく「好きだから」というのがありますね。楽しみすぎて脱線してしまうこともたくさんあるんですが、それも、全部、許す。移住してプロジェクトを立ち上げたりしているメンバーや、活動や仕事が忙しくなってなかなか会えてないメンバーもいるんですが、全員どんな形だってメンバーだし、お互いの活動を通じて刺激し合って上昇している感じです。

モエギ:やりたいことや、できることがあったら「これは実験だ!」というマインドでまずやってみる。そんなアイデアを持った時に、「いいじゃん、やってみよ!」と言って協力してくれる仲間がいることが私の大きなモチベーションです。

リサ:疲れきらないというのも大事。ある程度ミーティングできたらおしゃべりするとか。

立山:わかる。誰かにこれやってとかって言われたことがないのも続く秘訣かも。

石垣:誰かが疎外感を感じないように、声をかけ合ったり、ごはんを誘い合ったりしているのもいいなって思ってます。

FUJIGARA:とにかく興味がありそうなことは提案して巻き込んでみたくなるんです、Spiral Club って。いろんな視点を持っている人たちなので。それがそれぞれの暮らしや仕事のモチベーションにもなってる。だから続くと思うし、 Spiral Club みたいな、誰かにとって居心地のいいコミュニティが、ほかにもいっぱいできたらいいなって思いますね。

モエギ:環境問題や政治って難しいって思うかもしれないけれど、私たちの活動を通じて「もっと気軽でいいんだ」って思って、ハードルを下げて、楽しんでもらえたらうれしいです。

記事公開日:2021年12月2日

Spiral Club
すぱいらるくらぶ
Spiral Club は「Let’s Talk About Environment!(環境について話そう!)」をテーマに活動するオープンコミュニティです。私たちの夢は、サステナブルな社会を実現することです。どんな社会の変化も「一つの会話」から始まるのでは? そう考え、サステナビリティの基礎である「環境」について「会話」するきっかけを作っています。( Spiral Club 公式サイトより)

写真左から:リサ、FUJIGARA、石垣、立山、モエギ

http://spiral-club.com

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