STUDENT VOICE / 富木南葉 | STAND UP STUDENTS | Powered by 東京新聞

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いま、わたしたちのまわりで、
起きていること。

毎日の勉強や、遊びに恋愛、就活。普段の暮らしの中では見えてこないたくさんのできごと。環境のことや政治、経済のこと。友達の悩みも、将来への不安も。小さなことも大きなことも全部、きっと大切な、自分たちのこと。

確かなこと。信じること。納得すること。コミュニケーションや、意見の交換。
あたりまえの自由さ、権利。流れてきた情報に頼るのではなくて、自分たちの目で耳で、手で、足で、感動をつかんでいく。

東京新聞『STAND UP STUDENTS』は、これからの社会を生きる若者たちに寄り添い、明日へと立ち向かっていくためのウェブマガジンです。等身大の学生たちのリアルな声や、第一線で活躍する先輩たちの声を集めることで、少しでも、誰かの明日の、生きる知恵やヒントになりたい。

時代を見つめ、絶えずファクトチェックを続けてきた『新聞』というメディアだからこそ伝えられる、『いま』が、ここに集まります。

STUDENT VOICE

富木南葉

18歳

STUDENT VOICE

他人を思いやるために
必要なのは人とのつながり

富木南葉 18歳

他人を思いやるために
必要なのは人とのつながり

小2の時、東日本大震災の原発事故で、大好きな福島の祖父母が避難することに。私は東京にいながらも自分のことのようにショックだったのですが、まわりの友達は「放射能があるから雨に濡れてはダメ」と他人事で、とても傷つきました。でも各地で起こる災害では逆に、どこか他人事だと思っている自分がいて⋯。その後、国際協力機構の研修プログラムやボランティア活動でいろんな国の人と交流する機会が増えて、遠く離れていても価値観が違っても、実際にそこに暮らす人たちと接点さえ持っていれば、お互い困った時に思いやれるし、差別も起きないと考えるようになりました。だから私は、いろんな人と話をして、世界中の人とつながりを持ちたいです。

新聞やニュース、メディアについて
聞かせてください
SNS でニュースを見ることはあるんですが、一番信頼できるメディアは「新聞」だと思います。ただ、私自身はあまり意見を持っていなくて流されやすいタイプなので、偏らないように何紙か読み比べをして、さまざまな角度から吸収するようにしています。
東京新聞の記者に
聞いてみたいことはありますか?
新聞記者の仕事は、立場の異なる人の声を汲み上げる役割があると思います。そこにはどんな難しさがあり、どんなことに気をつけていますか?「これは話を聞くのが難しいな」ということもあるでしょうか。

掲載日:2022年1月14日
回答 あり

東京新聞 福島特別支局 片山夏子から

福島は11年前の3・11後も、昨年2月13日と今年3月16日に、最大震度6強の大きな地震に襲われました。大地震に何度も襲われ、かなり損傷してしまっている家もあります。今年3月の地震で「これまで何とかもってきたけれど、今回は家ごと自分もつぶれると恐怖だった」と話してくれた人もいます。次にまた大きな地震が来たら⋯。それは1年半前から福島特別支局に赴任し、福島市内のアパートに住む私にとっても恐怖です。昨年、そして今年の地震で私のアパートの部屋はめちゃくちゃになり、今も洗面台の鏡が割れたり、台所の戸棚や引き出しが壊れたりした状態のまま住んでいます。

今年3月に福島市で震度6弱の地震に襲われ、いくつかの原稿を書いた後、しばらく原稿が書けなくなりました。心底怖かったのだと思います。直後は震度1や2の地震でも跳び上がり、体の芯から身構える自分がいました。衝撃でした。どんなにたくさんの人の話を聞いても、どんなに深く話が聞けたとしても、自分が想像できることには限界があるということを思い知りました。

でもだからこそ、相手の置かれた状況や気持ちを理解しようとしたり、相手を思いやったりすることが、どれほど大切かを痛感しています。

原発事故から11年が過ぎた今、もうこれだけ時間がたったのだから、被害を受けたことばかりを言うのではなく、復興した福島を見てもらい、前を向いて生きていくべきだという意見があります。一方で今も被害が続いているのに賠償が打ち切られたり、帰還困難区域が次々解除されたりするなど、原発事故が終わったかのようにされていくと危機感を感じている人たちがいます。立ち上がりたい、前を向きたいと思いながら、今も苦しくて立ち上がれない人もいます。

住んでいた場所で区域分けされ、極端な場合、道路一本隔てて賠償金が出たり出なかったりしたことも、仲良かった近所付き合いを断ち切ったり、多くの人たちの気持ちを複雑にしました。詳細はとても書ききれませんが、どちらの立場の人もつらい思いをしたり、悔しい思いをしたり、苦しんできました。そして両方の立場の人を取材しながら何度も思いました。原発事故さえなければ⋯。

立場は一人ひとりみんな違います。例えば何かの問題に同じ賛成意見だとしても、その理由は人によって違います。記者として、その個別事情まできちんと聞けたらと思います。また難しいですが、できる限り先入観をなくして話を聞くことを心掛けています。先ほど書いた通り、どんなに想像しようとしても、体験した人から聞かないと分からないからです。だからこれは聞けないと感じたり、聞くのが難しいと感じたりしたことでも、それを聞くにはどうすればいいかを考えます。

富木さんがいろいろな人と会い、相手を思いやる姿勢を心掛けていることは素晴らしいことです。みんなが今より少し自分と違う立場の人を思いやれたら、もっと優しくて生きやすい社会になると思います。そして遠い国で起きていることやそこにいる人たちのことも想像することができたら⋯。心底そう思います。

片山夏子
大学卒業後、化粧品会社の営業、ニート、埼玉新聞を経て2003年に中日新聞社に入社。東日本大震災の翌日から原発取材を続けている。福島第一原発の作業員たちの仕事や日常、家族への思いをつづる連載は『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』として書籍化され、講談社 本田靖春ノンフィクション賞など3賞受賞。

回答掲載日:2022年5月20日
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