得点とリバウンドでチームをけん引「楽しいです! 一番にそれがきますね」 こう語る表情だけでなく、試合中からもその様子は見てとれ…
得点とリバウンドでチームをけん引
「楽しいです! 一番にそれがきますね」
こう語る表情だけでなく、試合中からもその様子は見てとれた。
今シーズンより導入されたアジアクォーター制度で韓国WKBLにチャレンジし、KBスターズの一員としてシーズンを戦っている永田萌絵。開幕から8試合を戦って1試合平均12.13得点6.5リバウンド2.88アシストをマークし、出場時間も31分27秒と、目下、チームの主軸として奮闘中だ。
それこそハナ銀行との開幕戦では11得点、続く新韓銀行S-Birdsでは21得点と勝利に貢献。開幕して早々にその名前を知らしめたといえる。このころ、現地にて取材をしていたこともあり、地元の韓国人記者から「永田はKBにとって必要な選手だね」といった言葉をかけられると、こちらも胸を張りたくなる気分だった。
その後も永田はコンスタントに得点を挙げ、白星が先行するチームを支えてきた。11月15日のハナ銀行との試合では、チームとしてホームゲーム18連勝という記録を達成。その試合では、前半終了間際にトリッキーなブザービーターのシュートを決めるなど、永田も十分にチームを盛り立てた。
なお、WKBLのレギュラーシーズン、第1ラウンド(各チーム5試合)を終えた時点で、貢献度のランキングではアジアクォーター枠の日本人選手の中では永田が堂々1位(全体では11位)となっている。
抜群の跳躍力にスピードを兼ね備えたフォワードは、鋭いドライブや高い打点のジャンプシュート、バネを生かしたリバウンドを持ち味とする。その能力をいかんなく発揮しており、指揮官からも毎試合(得点とリバウンドの)『ダブルダブル』をしてほしいと言われているという。
ただ、リバウンドに関しては174センチの身長はセンターたちと対峙すれば決して大きくないため、「止まった状態でコンタクトして取ろうとすると相手の幅や高さに押されて取れないので、飛び込みリバウンド、ちょっと引いて走りながら取るように意識しています」と、教えてくれた。
スピードを主体としたスタイルにフィット
昨シーズン、KBはWNBAでのプレー経験もある198センチのパク・ジスを擁してレギュラーシーズンを優勝。プレーオフではファイナルで敗れて最終順位は準優勝となったものの、高さを起点に強さを誇った。しかし、今シーズンはパク・ジスがトルコリーグのガラタサライへ移籍したこともあり、一転、登録選手の平均身長では全6チームの中で一番低いチームとなった。
そのため、「KB自体が小さいチームなのでスピードと早い展開のバスケットをしていかないといけない」(永田)と、今シーズンはスピードを全面に出したスタイルで勝負している。それが「自分のスタイルに合ったチームに加入できたかなと思います」と、機動力を武器とする永田にとってはピタリとハマったともいえるだろう。
加えて、「韓国はセットプレーが多く、トランジションでは日本の方が早いかなと思っているので、逆に自分のスピードを生かして相手の隙をつくなど、そういったプレーが出せてきているのだと思います」とも明かしてくれた。
永田は、東京医療保健大学で下級生のころから主軸を担い、キャプテンを務めた4年生のときにはインカレ3連覇を達成。同大会のMVPには2度輝いた。また、大学時代から名を連ねていた3x3女子日本代表でも世界大会で優勝など国際大会でも好成績を残している。そして大学卒業後はトヨタ自動車アンテロープスへ入団。2シーズン在籍した後にデンソーアイリスへと移籍した。
しかし、トヨタ自動車、そして2シーズンを過ごしたデンソーでは納得のいくプレーとまではいかず。昨シーズンもレギュラーシーズンでの1試合平均の出場時間は7分にとどまった。だからこそ、プレータイムを大きく伸ばし、“らしさ”を出せている今は、やりがいや楽しさを感じているのだろう。
だが永田は、「Wリーグで4年間、ずっとベンチから出るタイプのプレーヤーだったのですが、その苦い経験が今生きてるのかなと思います」と、力強く発する。「それまでの頑張りがいつ結果に出るかは分からないけれど、しっかり毎日やり続けることが大事なのかなと思います」という言葉には、もがきながらも前へと進むことを止めなかった彼女の努力を感じさせた。
辛い時期があっても決してそれは無駄ではない。そうした様々な経験を経て「今は思いっきり楽しもうというマインドに切り替えられています」と、永田は言う。そんな彼女の活躍を待っていた日本のファンは多いだろう。
水を得た魚のようにアグレッシブなプレーを披露する永田。
「試合を重ねるごとに相手チームも私に対してアジャストしてくると思うので、そこでどうクリエイトできるかが、また一つ自分が成長する要因かなと思っています。しっかりそのときにできることを探しながらやり続けていきたいです」と語るKBの新戦力は、現状に浮かれることなく、しっかりと前を見据えていた。
文・写真=田島早苗