数字で見る! スポーツで身体に起こる気になる「6」つのデータ
運動不足を感じている人でも、「スポーツをすることは何となく身体にいいと思っているけど、自分にどんなことが起きるのか」ということは意外とわからない人も多いのではないでしょうか。今回、「充実度」「心の健康」「障害者」「美容」「子ども」「体の健康」の6つのカテゴリーごとに、様々な調査結果や研究結果から、具体的にイメージできる「数字・データ」をピックアップして、「スポーツをすることで、生活・人生に起きる変化」をご紹介します。
生活の充実度とスポーツ
スポーツをすると生活の充実感が向上
スポーツの実施頻度が多い人ほど、日常生活に充実を感じている割合が高い調査結果が出ています。ウォーキングなどの有酸素運動によって分泌される様々な脳内物質が、この結果をもたらしてくれることがわかってきました。
例えば、「エンドルフィン」と「内因性カンナビノイド」。多幸感をもたらす物質と言われており、これらが脳内で分泌されると、幸せな気分になることができます。
近年では、適度な運動がBDNF(脳由来神経栄養因子)というタンパク質の分泌を高め、これにより脳の神経の発達にもつながると言われています。また脳への影響だけでなく、ウォーキングなどの軽い運動が心身の健康につながることは運動生理学的にも実証されています。
関連記事:プラス「10」分のウォーキングから始めるストレス対策
https://sports.go.jp/special/value-sports/plus-10-minutes-walking.html
心の健康とスポーツ
スポーツには心の健康にも効果的
運動の種目では、ヨガや、水泳、ジョギング、ウォーキングなど有酸素運動でどれも同じように、気分の改善と向上が観察されています。有酸素運動を続けることによって、「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンなどの神経伝達物質(神経と神経で連絡を取り合う物質)が分泌され、脳の中で感情や記憶を司る部分にセロトニンが伝達すると、精神的な落ち着きが得られると言われています。
(公財)明治安田厚生事業団体力医学研究所の研究では、「余暇時間にまったく運動をしないグループに比べ、1週間に運動を2時間以上しているグループは、1年後に抑うつになるリスクが約半分に抑えられる」という調査結果があります。余暇の身体活動やスポーツが、将来の抑うつ状態の発生を抑えると報告されており、仕事上のストレスが高い人こそ余暇での運動を積極的に取入れたほうがよさそうです。
《体への効能》
脳内物質セロトニンは悩みや不安をやわらげる物質です。また、心を落ち着かせ、冷静な判断や強い精神力のもとにもなります。
関連記事:プラス「10」分のウォーキングから始めるストレス対策
https://sports.go.jp/special/value-sports/plus-10-minutes-walking.html
障害とスポーツ
スポーツ・レクリエーションには様々な効果
別の質問ではスポーツ・レクリエーションを「実施する目的」について尋ねており、「健康の維持・増進のため」という回答が最も多く選ばれました。しかし、実際に実施してみてよかったと感じた点は、感情面でのポジティブな変化に加え、ライフスタイル自体の変化など、実に多岐に渡っています。
2003年度、日本障がい者スポーツ協会の調査「スポーツを始めた時と現在の思い(スポーツの効果)」でも、仲間づくりや生活圏の拡大などの社会的側面ではプラス63.2%、マイナス2.6%、生活の充実感やストレスの解消などの精神的側面ではプラス70.8%、マイナス2.1%、運動不足の解消や健康の維持増進などの身体的側面ではプラス68.2%、マイナス2.5%、医療機関への依存や通院回数の減少などの医療的側面ではプラス52.6%、マイナス3.1%という結果に。
体を動かすという人間の本源的な欲求に応えるとともに、楽しさ・喜びをもたらし、スポーツを通じて自らの可能性にチャレンジしたり、仲間との交流やコミュニケーションを深めたりすることは、生活の質を高め、人生をより豊かにしてくれるのではないでしょうか。
《体への効能》
運動することで出る脳内物質、ドーパミンは脳の報酬系とも言われていて、「またやりたい!」という気持ちや意欲につながる物質。ポジティブな気分にさせてくれる効果もあります。
参考:5 障害者とスポーツ - 日本スポーツ協会
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data0/publish/pdf/h24_seigo2_25.pdf
地域における障害者スポーツの普及促進について - 文部科学省
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/002_index/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/03/31/1369121_01_1.pdf
美容とスポーツ
キレイの鍵はスポーツ
適度に食べて、適度に運動する(エネルギー高回転型)ことでキレイにやせる女性は、健康面からみて理想的です。
一方で、運動はせずに食べないだけ(エネルギー低回転型)の生活を送る女性は、やせていても、肥満の方と同等の糖尿病リスクがあると言われています。今後、高齢になると痩せと運動不足が原因で転倒・骨折による寝たきり患者が増えてしまう恐れも指摘されています。
スポーツ庁は、「仕事や子育てが忙しく、運動に時間を割くことができない」といったスポーツ実施率が低い20~40代の女性たちを対象に運動プログラム「Myスポーツプログラム」を提案。わざわざ運動の時間を捻出するのではなく、今ある生活のなかに〝ちょっとした″運動を組込む形で取入れる「ながら運動」を薦めています。
《体への効能》
運動による血行の促進は、新陳代謝の促進、冷え性や美肌効果など他にも良い効果があると言われています。もちろん運動だけでなく、適度な食事、睡眠のバランスが美容にも、健康にも効果的です。
関連記事:「痩せていれば病気にならない」は誤解!? 女性の大敵「痩せ」「運動不足」のリスクと解決策【前編】
https://sports.go.jp/special/policy/post-21.html
【後編】
https://sports.go.jp/special/policy/post-22.html
子どもの学力とスポーツ
体力と学力には関係が!
運動も勉強も、「頭で行うもの」という意味では同じ。むしろ運動ができる子は勉強もできるようになる、それは多くの研究で実証されているのです。
アメリカで小中学生95万人に行った大規模調査で、子どもたちの心肺能力や筋力・持久力・体脂肪率などの総合的な体力調査と、学力テストの成績との関連性を分析した研究では、体力調査での成績が高い子どもほど、学業成績も優秀な傾向があることが確認されています。
東京大学の深代千之教授によれば、運動では「走る」「投げる」「打つ」「跳ぶ」などのいろんな動作を覚えて脳に格納して、スポーツの場面で引き出して使うように、勉強でも、例えば数学の応用問題を解くときにいくつかの公式の中から適切なものを使って問題を解くことと同じようなこと。勉強と運動とは相関関係にあり、疫学的に双方が関係していると言います。
《体への効能》
運動をすると脳の神経細胞の増加や記憶をつかさどる海馬が大きくなることがわかってきています。運動後は脳への血流が増し活性化して、思考力や集中力が飛躍的に高まる機会となるので、学習をするチャンスです。
関連記事:運動ができるようになると、アタマもよくなる!? 専門家に聞く!子供の能力を引き出すためのメソッド
https://sports.go.jp/tag/kids/post-20.html
体の健康とスポーツ
今よりプラス10分〜20分の歩行で、ガンや糖尿病の予防に効果
成人の1日当たりの平均歩数は男性6,846歩、女性5,867歩です。
(厚生労働省:平成29年「国民健康・栄養調査」)
「1,000歩の目安は約10分」とされていますので、いつもより歩く時間を10分〜20分増やすと、ガンや糖尿病などの病気を防ぐ可能性があります。たとえば、都心部であれば「通勤時は1駅手前から歩いてみる」「会社の昼休みに行くコンビニエンスストアを少し離れたお店にしてみる」「仕事中は1階上のトイレを使い、階段を上る癖をつけてみる」「デスクワークが疲れたら片道5分の距離を散歩してみる」といったように、生活の負担にならない程度のちょっとした工夫で「プラス1000歩」は実現可能なのです。
関連記事:プラス「10」分のウォーキングから始めるストレス対策
https://sports.go.jp/special/value-sports/plus-10-minutes-walking.html
まとめ
さまざまな目的で行われる身体活動すべてが「スポーツ」です。スポーツをすることで、生活や人生を、より豊かなものに変えることもできます。「自分には縁遠い」と思っていた方も、自分なりの「スポーツ」を始めてみませんか。
●本記事は以下の資料を参照しています
Sport in life:スポーツ庁(2019-10-01閲覧)
「痩せていれば病気にならない」は誤解!? 女性の大敵「痩せ」「運動不足」のリスクと解決策【前編】(2019-10-01閲覧)
「痩せていれば病気にならない」は誤解!? 女性の大敵「痩せ」「運動不足」のリスクと解決策【後編】(2019-10-01閲覧)
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5 障害者とスポーツ - 日本スポーツ協会
地域における障害者スポーツの普及促進について - 文部科学省