事前に廃墟の見取り図を手に入れ、作戦を練る。見取り図には「ガーディアンの部屋」の存在が記されていた。どうやら入口からすぐのところに、番人のような化け物がいるらしい。その部屋は絶対に開けないようにしよう、と言い合ってコンビニへ向かった。ゲームとはいえ、簡単に準備を行うのは必要だろう。
私は電池が欲しかった。LEDの懐中電灯に使う単4電池が心もとないから、予備が欲しかった。が、どういうわけか見事に単4だけが売っていない。店員に聞くと、今すぐに準備はできないのだという。
「1時間後にご用意できますが」
店員にそう提案される。が、それはさすがに肝試しの後になるだろう。今回無事に帰れれば、と期待を込めて「お願いします」とだけ言っておいた。
準備を済ませた私達は、件の廃墟へと向かった。そこは元々工場か何かだったのか、屋外に屋根を被せたような構造をしている。壁のコンクリートは腐食し、鉄扉は錆びて塗料が剥がれて、夜の暗さも相まって不気味さを醸し出していた。
ドアのない入口をくぐると、左右に扉を見つける。仲間の一人が向かって左手のドアに近づいた。それはコンクリートにはめ込まれた、白っぽいドア。私はあることを思い出して戦慄した。入口近くにある「ガーディアンの部屋」。それは確か、入ってすぐの左側の部屋だったはず――
「そっちじゃない!」
私の警告は、しかし数秒遅かった。仲間はもう、部屋の扉を開けていたのだ。開け放った部屋の先に、動く気配はなかった。静寂がいやに緊張感を駆り立てる。その部屋は管理室の一つだろうか、見える範囲には用途のわからない機械しか見えない。
が、安堵したのも束の間、ぬっと何かが視界に入った。かろうじて人型とわかる、白い全身の"何か"。無機質な表面に赤く血管のような筋が浮いていて、機械なのか生物なのかさえわからない。頭部はのっぺりとしていて表情もわからない。が、私達に対する敵意、殺意だけは肌で直感した。殺される、いや、殺しにくる――本能が私に訴えてくる。
私達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。誰でもいい、誰か生き残った人がリセットボタンを押せればいい。その考えだけで、トイレの個室に逃げ込んだ。古いせいか鍵は掛からなかったが、身を隠すことだけはできる。
「リセット、リセット…!」
心の中で念じるように、リセットをかける。この回は失敗だ。左側には即死級の化け物がいる。その実感があるから今度は間違えない。だからお願い、最初に戻して――
けれど、いくら待っても目の前には錆びついた壁があるだけだった。視界は狭い個室から変わらず、"ガーディアン"が立てる足音はまだ聞こえる。化け物は笑い声のような音さえ出していた。隣の個室に逃げ込んだのか、仲間もリセットを試みる声が聞こえる。だが現状は変わらない。ただ狭い部屋で死を待つばかりの最悪な状況のままだ。
ああそうか、と私は絶望した。これは最初からゲームなどではなかったのだ。どういうわけかリセットできるなんて思い込んで、試しもせず軽率に我が身を危険に晒して。結果、こうして殺されるとわかってももう手立てがない。コンクリートに冷たく足音が反響する。化け物の気配が、背中に当たる扉のすぐ向こうにあった。
という夢を見たんだ
いえーい、お久しぶりの夢オチです!
いやほんと、目が覚めたとき心臓バックバクだったよね。こんなに夢で良かった!!って思ったの初めてだよ
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ホラーとして伏線もオチも完璧すぎて、目が覚めてから「書かなきゃ」って使命感に駆られました
そう考えるところが創作者の悲しい性だよねw
一応記憶の限り忠実に書いたけど、曖昧なところは起きてる私が整合性を取りました。ご了承ください