それは、二度寝をした朝のことだった。布団に入ってうとうとしていると、耳元で「カシャッ」という音が聞こえた。カメラのシャッター音だ。誰かこの部屋に入ってきたのだろうか。だが、一人暮らしで客の予定もない。事態を理解し、恐怖がぞくりと頭を揺さぶる。いったい誰だ。私は振り向いて姿を見ようとした。
だが、首は回らなかった。それどころか、体が動かなくなっていたのだ。左向きに寝て足を曲げて丸まり、右手を足の間に挟んだ奇妙な姿勢のまま、ぴくりとも動かない。何者かに上から押さえつけられている。相手は両足を曲げて横に出した、いわゆる“お姉さん座り”をしているようだ。目だけを動かして乗っている存在を見ようとするが、視界の限界が黒く見えるだけで姿は確認できなかった。誰かと問おうとしても、上手く声も出せない。降りろとばかりに身じろぎする。だがいっそう強い力で押さえつけられ、それは叶わなかった。キーンと大きな耳鳴りがする。
どうすればいい。このままじゃいろいろと危ない。だが対抗手段が思いつかなかった。せめておどかしてやろうと、声を上げる。だが、せいぜい弱々しくかすれた声が出るだけだった。苦しみの中、一文字ずつ「降・り・ろ」とだけ何度も繰り返す。当然、そんなことでは脅しにはならなかった。私の上から降りる気配はない。
もう一度身じろぎする。右手を自由にしようとして、しかしより強い力で押さえつけられる。だがどういうわけか、体の下にあったはずの左手は比較的自由に動かせた。布団の上に手を出し、私に乗る存在を掴んでみる。赤ちゃんのように小さく、妙に平べったい指だった。いったいどういうことだ。困惑したまま、足をばたつかせる。胴体の方に体重をかけられていたからか、足は動いたのだ。それを利用し、無理矢理寝返りをうつ。そこで得体の知れない存在の感覚が消えた。
どこかの部屋で、一人の少女が着布団を抱えて座りこんでいた。顔を恐怖に引きつらせ、辺りをうかがっている。
「また被害が出たのか」
「しかし、今回は解決に貢献してくれました」
そんな大人達の会話が聞こえてくる。あれは一体何だったのか、結局何が起こったのか。それは分からないまま――
という夢を見たんだ。衝撃的だったから、これは書かねばなと。
金縛り自体は、なんか前にもあったような気が……あんまり覚えてないけど
とにかく今回の金縛りは、夢と分かる物だったんだよね。
そもそも金縛りって、疲れたか何かで体が動きにくくなっている時に見る夢らしいし
実は目が覚めたときちょっと体がしびれてたんだよね
これが金縛り解除で目が覚めてたら夢だとは思わなかったんだけど、後半がおかしかったからな
急に視点変更するわ、見知らぬ部屋にいるわ……こんな理不尽なこと、夢の中じゃなきゃあり得ない!
多分、上に書いた「相手の指」は掛け布団の端っこを掴んでたんだと思う
あとね、金縛りよりも「寝てるときにカメラのシャッター音が聞こえた」ことの方が何倍も怖かった……
だって私しかいないはずの部屋に誰かが侵入して、寝顔を盗撮したってことじゃん!
夢で良かったよ、いや本当に
ちなみにタイトルは、某毒虫の台詞
「動かぬ体に残された瞳で、真の恐怖を味わうがいい!」より