背後から突き出された槍が、魔女の胸から覗く。鮮血が太陽の光で槍を黒々と輝かせていた。
「な…に…?」
不意打ちを受けた魔女は、力なく崩れ落ちた。そのまま起き上がってくる気配を見せない。ニコもバングルも、そこでひとまず息をついた。
「助かったぜ、ニコ。」
魔女の呪縛から解放されたバングルは、大きく息を吐いた。まるで、呼吸ができるという喜びにふけるように深呼吸したのだ。ニコはそれには答えず、そっぽを向くだけ。
「お? 何だ、照れてるのか? やっぱお前可愛いとk」
「うるさい。」
ゴンッと鈍い音が響き、手を伸ばし掛けたバングルに鉄槌が降ろされた。痛みでバングルは頭を押さえてうずくまる。そんな彼を差し置いて、ニコは魔女へと視線を戻した。
「ん?」
「ニコ、どうかしたのか?」
ニコが違和感に気付いたのと同様に、バングルも彼の視線を追ってそれを理解した。女性の死体はそこにはなく、代わりに茶色の毛並みをした獣が倒れていた。
「これは…獺(かわうそ)だな。」
バングルは死骸をのぞき込んでしみじみと言う。それは分かってる、とニコは毒づいた。問題は、何故魔女ではなくて獺なのかということ。バングルはやれやれ、と息をついた。
「たまにな、本物の魔女じゃなくて、生まれつき魔力の高い獣なんかが魔女のフリをしている事もある。今回は獺が魔女に化けてたみたいだな…。」
言い終わってからバングルは、俺も詳しくはないけどな、と付け加えた。ニコはただ、足下で倒れている獣の死骸に見入っていた。いつの間にか、周りには人だかりができている。
「倒したのか? …って、こりゃあ獺か?!」
「俺達はこんなものに苦しめられてたってのかよ!」
人々は口々に言い合い、辺りはどよめき立った。この態度の変わりようには、二人とも感じていた。彼らにとっては本当に深刻な問題だったのだろうが。
「な…に…?」
不意打ちを受けた魔女は、力なく崩れ落ちた。そのまま起き上がってくる気配を見せない。ニコもバングルも、そこでひとまず息をついた。
「助かったぜ、ニコ。」
魔女の呪縛から解放されたバングルは、大きく息を吐いた。まるで、呼吸ができるという喜びにふけるように深呼吸したのだ。ニコはそれには答えず、そっぽを向くだけ。
「お? 何だ、照れてるのか? やっぱお前可愛いとk」
「うるさい。」
ゴンッと鈍い音が響き、手を伸ばし掛けたバングルに鉄槌が降ろされた。痛みでバングルは頭を押さえてうずくまる。そんな彼を差し置いて、ニコは魔女へと視線を戻した。
「ん?」
「ニコ、どうかしたのか?」
ニコが違和感に気付いたのと同様に、バングルも彼の視線を追ってそれを理解した。女性の死体はそこにはなく、代わりに茶色の毛並みをした獣が倒れていた。
「これは…獺(かわうそ)だな。」
バングルは死骸をのぞき込んでしみじみと言う。それは分かってる、とニコは毒づいた。問題は、何故魔女ではなくて獺なのかということ。バングルはやれやれ、と息をついた。
「たまにな、本物の魔女じゃなくて、生まれつき魔力の高い獣なんかが魔女のフリをしている事もある。今回は獺が魔女に化けてたみたいだな…。」
言い終わってからバングルは、俺も詳しくはないけどな、と付け加えた。ニコはただ、足下で倒れている獣の死骸に見入っていた。いつの間にか、周りには人だかりができている。
「倒したのか? …って、こりゃあ獺か?!」
「俺達はこんなものに苦しめられてたってのかよ!」
人々は口々に言い合い、辺りはどよめき立った。この態度の変わりようには、二人とも感じていた。彼らにとっては本当に深刻な問題だったのだろうが。
仕事に決着がつき、ニコとバングルは夕暮れの街並みを歩いていた。
「無駄に疲れた…。」
ニコはぼそりとこぼした。それをバングルはすかさず聞きつけ、気持ち嬉しそうに笑う。
「じゃあ、風呂にでも入ってくか?この辺りで温泉が湧いてるらしいんだ。」
「帰る。」
バングルの提案をよそに、ニコは足早に歩いていった。こいつのこの性格では、ろくな事が起きそうにない…そう勘づき、逃げるように歩く。慌ててバングルもその後を追った。
「あっ、ちょっ、待てって・・・・・・てか速え!」
早足で歩くニコを、バングルは小走りで追いかける事になるのであった…。
~あとがき~
ニコの初仕事、完結編!
そして、魔女が実は獺だったというオチw