放浪の旅では無いのだが、漢旅と言うのは実にフレキシブルだ。
知床ウトロに宿を取ったので、翌日の予定は羅臼側の野湯を再訪、または新規R244沿いの秘湯・野湯巡りというふたつの案。
次男坊は即答で後者を選択。
「 イェ〜い、ビュッフェ会場一番乗り〜! 」
っと思ったら、既に半分程席が埋まってる不思議。
沢山の食材が並ぶと、目でお腹いっぱい。
生ジャケのひつまぶしの様なご飯が美味しいと、珍しく次男坊は朝からしっかり目に摂っていた。
ウトロから斜里市街地へ入る前、ナビに従い左折して国道244号線へ。
そのまま根北峠方面へ車を走らせる。
思いの外、スムーズに目的の越川温泉へ辿り着く事が出来た。
この温泉は地元の、「越川温泉利用組合」と言う有志の方々の保全で成り立っている。
「今なら誰も入っていませんよ」
丁度入り口ですれ違いの方にお声を頂いた。
中へ入ると御高齢のお爺さんとおばあちゃんが湯上りで涼んでいた。
挨拶をして少し話すと、どうやら組合員の方と察しがついた。
利用協力金¥200は事前に調べていたので、
「ふたりで500円入れるねぇ〜」と500円玉1枚投じると、
「ありがとねぇ〜、助かるよぉ〜」とおばあちゃん。
協力金は入って直ぐ右手に設置されている「貯金箱」に入れる。
貯金箱にしては大胆過ぎる造りに、思わず「ふふっ」と笑ってしまった。
「じゃあ早速浸からせてもらうね」と、暖簾をくぐる。
おお〜っ!
何とも言えない風情の温泉だ。
のんびり浸っていると、窓からお爺さんとおばあちゃんが車で帰って行くのが見えた。
時を待たずして一台の車。
「誰か来たね」と次男坊と話していると、その車で来たと思しきお爺さんが覗き込み、
「熱っつくねぇ〜か?」と聞いてくる。
「いや、全然良い湯です」と次男坊が返答すると、
「オレぁ、熱っついの嫌なんだわ」と、やや挙動不審。
上の歯が無いので聞き取り辛い。
脱衣所に戻ったのを見計らって、
「あの爺っ様、絶〜対お金払って無いべ」次男坊に言っていると、
なんとっ、この方も組合員の方でした…。
大変っ、失礼致しました 汗
3人でゆっくり湯浴みしながらお爺さんに様々お話しを聞く事が出来た。
結構な衝撃的裏話しなので、この場ではオフレコにしとく。
※ 組合員の方々の多くは御高齢であり、冬季は除雪を依頼すると一回¥10000掛かり、夏季は草刈りと、組合員さん達のご厚意によってこの温泉は成り立っています。
しかし、協力金の¥200すら払わない人間が少なく無いそうです。
湯上がり後、お爺さんと一緒に来られたおばあちゃんともお話ししました。
随分と足が悪い様で入り口付近に車を横付けしてたが、そういうバックヤードも含め、「入らせて頂いている」と言う事を念頭に利用すべき温泉だと感じた。
お爺さんを疑ってしまった自分…、
穴があったら入りたい。
そして、川北温泉の情報も聞いたがお爺さん曰く、
「行がねぇ方が良いどぉ」と。
道が狭くて悪路という事だ。
そんな事なら寧ろ行きたくなる我々。
教えて頂いた道則を一路進む。
斜里町方面からだと、国道244を根北峠へ向かい、峠を降りると左手に「金山スキー場」が見えてくる。
過ぎた所に橋が架かっているので、橋の袂の右の林道から入る。
看板があるからすぐに分かる、との事。
目指す林道は迷う事無く見付ける事が出来た。
林道としては確かに狭いが、全然想定内。
昨シーズンは林道崩壊の為にアクセス出来なかったが、現在は開通している。
元々あった町営の温泉宿が廃業し、温泉だけが残っているという経緯。
そのルーツは古のアイヌの方々の利用まで遡り、道路開通は明治期と長い歴史がある。
この温泉も有志の方々によって管理され、山深いロケーションながら驚く程整然と管理されている。
このブルーシートであつらえた小屋は休み処となっており、寄書きノートには訪れた多くの声が綴られている。
近郊の人から海外の方まで実に幅広い。
源泉温度は高くそのままでは入湯出来無い。
赤いコックを捻って沢水を加水し適温調整をする。
行きに一台すれ違ったので、適温かな?と思ったが全然熱い。
脱衣所もしっかり男女に分かれ、勿論湯舟も別。
峠にかかる国道から分岐した林道を5km進んだ山奥なのにこの清潔感。
こ〜んなロケーションでキャンプでもと誰しも考えると思うが、キャンプ及び車泊は禁じられている。
飲泉出来るのかカップが吊してある。
勿論、飲んでみる。
「塩っぱぁ〜!」
この温泉でジャガイモ蒸したら美味しいべなぁ〜
海水並みの塩味と、スープの様な出汁が効いてる!
しっかり硫黄臭もあるのだが、不思議と肌が痒くなる事は無かった。
次男坊、そして自分も併せ、今回巡った温泉で1番の高評価だ。
未だ未だのんびり浸って居たかったのだが、家族連れの方達が訪れて来たので譲った。
女風呂の方は高温が予想されたので、脱衣する前に湯温を確かめて調整してから入った方が良いと注告。
小さなお子さんが火傷でもしたらたまったもんじゃ無い。
帰りも二台すれ違ったが、結構訪れる人が居る様だ。
道幅の狭い林道なので、互いに譲り合う精神必須!
譲ってもらったら一礼するのがマナー。
こんな当たり前の事が出来無い人間は、沢に落ちろと山神様にお祈りします。
※ 近郊のコンビニまでは相当な距離があるので、予め水分は多目にに持参するのをお忘れ無く。
お湯加減を調整する水は豊富にあるが、沢水なので飲用不可。
勿論の事、自販機なんて無い。
国道に戻り来た道を引き返し、そして帰路に就く。
次男坊が車を停めてある職場駐車場まで送り届け、一緒にKヨシさん宅へ寄る。
自宅へ持ち帰る用の玉葱を受け取る為。
「ハネ品をちょっとだけ」と伝えてたのに、大玉品を20kg!
しかも半分は白玉。
今年の玉葱の出来は上々との事。
しかし量が凄い。
農家さんには、お盆も関係無い様子でとても忙しそう。
そのままKヨシさん宅で次男坊と分かれる。
毎度毎度もの寂しさが込み上げる。
今夏の旅も充実した時間だった…。
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