- タイトル
- Thunderball
- アーティスト
- Tom Jones (OST)
- ライター
- John Barry, Don Black
- 収録アルバム
- Thunderball (OST)
- リリース年
- 1965年
- 他のヴァージョン
- Billy Strange, Al Caiola, Count Basie, Hugo Montenegro, Leroy Holmes, Ray Barretto, Reg Guest Syndicate, Roland Shaw & His Orchestra, Sounds Orchestral, the Cheltenham Orchestra, the James Bond Sextet, the John Barry Orchestra, Davie Allan & the Arrows, Dick Hyman, Elliott Fisher, The Jazz All-Stars, Percy Faith & His Orchestra, Dan & Dale

前回の『ゴールドフィンガー』(その1、その2、その3)に引きつづき、ジェイムズ・ボンド・シリーズのテーマです。今回は第4作『サンダーボール作戦』のテーマ。
何度か、60年代映画のタイトルは凝っていて楽しいものがたくさんあったということを書いていますが、ジェイムズ・ボンド・シリーズのなかでは、このThunderballのものがベストではないかと思います。どうして、こういう楽しいタイトルがなくなってしまったのでしょうかね。
それはともかく、音楽のほうです。Goldfingerとちがって、Thunderballのコードは、やや風変わりではあるものの、比較的シンプルで、悪凝りタイプではありません。いや、シンプルではあるけれど、しかしやっぱり、かなり変です。Bbm-F#-F-Bbmというイントロおよびヴァース冒頭のコード進行からして、それほど自明とはいえません(ヴァースではさらにBbm-B-F-Bbmのパターンが加えられ、ヴァースに関してはこれで押し通す)。ここに載るメロディーも、F-Bb-C-C#-C-Ab-F-Bb/Bb-B-F#-F-Eb-Db-C-Eb-Db、というように随所に半音進行を使っていて、それがエキゾティックな感覚を喚起しています。
じっさい、こういう半音進行というのはきわめてエキゾティカ的で、このテーマの変奏曲はまさにそういう方向でアレンジされています。
とんとレス・バクスターかアクスル・ストーダールかといったサウンドで、ここまでハッキリとバクスターしちゃっていると、意図的にエキゾティカの線を狙ったのではないかと考えざるをえません。舞台がバハマなので、まあ、南太平洋とはずいぶん方向ちがいではあるものの、もともとエキゾティカは「架空の南洋」の音楽なので、バハマに当てはめたところで、問題はないでしょう。
◆ ボツ・テーマ ◆◆
エキゾティカ的な構造をとっているために、話がいきなりヴァリアントのインスト・ヴァージョンのほうにいってしまいましたが、テーマのほうはもちろん歌もので、今回はトム・ジョーンズが歌っています。Goldfingerのほうはビルボード8位まで行きましたが、こちらは25位止まり。とはいえ、とにかくチャートインしたのは立派だし、楽曲の出来からいって妥当なスロットまでは行っているわけで、これ以上は実力では無理でしょう。Goldfingerほど圧倒的な魅力はありませんから。
トム・ジョーンズ・ファンというわけではなく、歌いあげるタイプはみな敬遠する人間なので、どちらかというと苦手なのですが(好きなのはIt's Not Unusualのみ)、この曲は歌いにくいイヤな流れがあちこちにあって、そういうラインで渋滞せず、自然に聴かせているところは、さすがにうまいものだと、好き嫌いを超えたところで思います。ロック・シンガーにはタフな曲です。
The Best of James Bond: 30th Anniversary Collectionという盤をもっているのですが、そのなかにDionne WarwickのMr. Kiss Kiss Bang Bangという、耳慣れない曲が入っています。これはThunderballのテーマとして用意され、ボツになったものだそうで、これをThunderballのタイトルに重ねた奇特な人がいました。
いやもう一目瞭然、だれが聴いても、8小節でボツ決定、ゴミ箱行きです。こんなテーマではだれもジェイムズ・ボンドを見る気分にはなりません。盤として聴いていても出来の悪い曲だと思っていましたが、絵に載せると、ひどさもひどし、録音する前にわかるだろうに、と思うのですがねえ。
Goldfingerほどカヴァーは多くないだろうと思ったのですが、どうしてどうして、Thunderballも大量にあるので、そのへんは次回に検討させていただきます。