再エネで地域を豊かに! 「地域活性エネルギーリンク協議会」が開催
2019/06/25
「地域活性エネルギーリンク協議会」が、活動を開始した。自治体新電力など、地域主導のエネルギー事業への注目が高まるなか、同協議会に寄せられる期待は大きい。
地域内連携と地域間連携
2つのリンクで活性化
再生可能エネルギーをツールとして地域活性化を目指す「地域活性エネルギーリンク協議会」が6月5日、都内ホールで設立記念公開セミナーを開催した。同協議会は、新電力や発電事業者などの地域エネルギー会社と自治体、およびそれらをサポートする民間企業等を会員として、今年4月に設立された。
会場の様子
図:地域内と地域間、2つのリンクのイメージ
地域活性エネルギーリンク協議会が掲げる目標は、「エネルギーの地産地消による経済循環と地域の活性化」だ。そして、それを実現するために重視すべきが、協議会の名称にもある「リンク(連携)」なのだという。同協議会代表理事の北村和也氏は、次のように話す。
「エネルギーの地産地消による経済循環と地域の活性化を形あるものにするためには、まず核となる地域の発電事業者、地域・自治体新電力などのエネルギー供給事業者、自治体の3者による有機的な地域内の連携が欠かせません。さらに、地域内に留まることなく、例えば電力の融通や各種の有益な情報の交換などの地域間の連携を行うことがより重要になってきました。私たち、地域活性エネルギーリンク協議会は、この2つの連携をお手伝いし、再エネの拡大や利活用、また広く地域サービスなど個々の事業を一緒になってサポートすることで、各地域の活性化を図ります」。」
北村和也氏(地域活性エネルギーリンク協議会代表理事)
横浜市と東北の市町村が
再エネで連携協定
設立記念公開セミナーでは、北村代表の挨拶に続いて、横浜市副市長の小林一美氏と久慈市長の遠藤譲一氏が講演。横浜市と久慈市を含む東北12市町村の間で、今年2月に締結された「再生可能エネルギーの活用に関する連携協定」の意義について論じられた。
小林一美氏(横浜市副市長)
遠藤譲一氏(久慈市長)
374万人という基礎自治体1位の人口を抱え、事業所数11万を擁する横浜市は、電力需要が極めて大きい。しかし、活用できる土地は少なく、再エネの開発には限りがある。一方で、東北地方には再エネ発電所のために活用できる土地・海域が多く、再エネ電力供給源としてのポテンシャルは大きい。
連携協定は、この需要と供給を結び付けることで、それぞれの自治体が抱える課題の解決を図ろうとするものだ。この報告は、地域間連携の具体例として、セミナー参加者の関心を集めた。
地域循環共生圏の確立へ
環境省も共同歩調
中央官庁からは、環境省の大臣官房環境計画課長の川又孝太郎氏が登壇。地域活性化のための地域循環共生圏をテーマに、地域資源を活かして自立・分散型社会を形成し、地域の特性に応じて補完しあうことの重要性を説いた。
川又氏も、「再生可能エネルギーのポテンシャルは豊富だがエネルギー需要が小さい地方と、エネルギー需要が大きい都市との連携は不可欠になる」と断言。エネルギーに関する資金の流れを「都市→中東」から「都市→地方」にシフトさせていきたいと話した。
川又孝太郎氏(環境省大臣官房環境計画課長)
最新の学術成果を共有
学術界からは、神奈川工科大学創造工学部ホームエレクトロニクス開発学科教授・スマートハウス研究センター所長の一色正男氏が、地域活性化のためのエネルギーマネジメントについてレクチャー。HEMS(Home Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)を活かしたコミュニティのあり方、人と人のきずなを支援するIoTサービスの将来像などを示した。
一色正男氏(神奈川工科大学スマートハウス研究センター所長)
国立大学法人弘前大学地域戦略研究所所長の本田明弘氏は、地域活性化に結びつく再生可能エネルギーをテーマに、青森県で進められている洋上風力発電への取り組みについて紹介した。
この中で本田氏は、今年4月に洋上風力発電の導入を促進するための法律「再エネ海域利用法」が施行されたが、これを実のあるものにするためには「地域での理解促進」が何よりも重要であると力を込めた。
本田明弘氏(国立大学法人弘前大学地域戦略研究所所長)
この他、「電力自由化の課題、地域活性化を妨げるもの」をテーマに、一般社団法人日本卸電力取引所企画業務部長の國松亮一氏が、「公平で公正な電力市場の確立の必要性」について解説。村谷法務行政書士事務所の村谷敬氏が、「近視眼に陥らない電力情報の読み解き方」と題して講義した。
國松亮一氏(一般社団法人日本卸電力取引所企画業務部長)
村谷敬氏氏(村谷法務行政書士事務所 行政書士)
ドイツからも講師を招聘!
さらに、同セミナーにはドイツからも講師が招かれた。ライプツィヒ市経済振興局局長のクレメンス・シュルケ氏と、ライプツィヒ・シュタットヴェルケ・リジョナル・マネージャー・企業連携部門リーダーのカイ-ウヴェ・ブレヒシュミット氏だ。日本の自治体新電力の多くが参考にしてきた本場のシュタットベルケに関して、これまでの歩みと成果、今後の展望などについて詳らかにした。
クレメンス・シュルケ氏(ライプツィヒ市経済振興局局長)
カイ-ウヴェ・ブレヒシュミット氏(ライプツィヒ・シュタットヴェルケ・リジョナル・マネージャー)
地域活性エネルギーリンク
協議会の主な活動と参加団体
活動内容
●地域のエネルギー会社および自治体間の情報交換の場をつくること。
●地域・自治体新電力の設立と事業安定化、自治体とのコラボを行うこと。
●必要な技術・ノウハウ・ファイナンスなどシステムのアドバイスと提供すること。
●自治体や地元の民間企業が行う地域活性化の各種事業を支援すること。
参加団体(2019年6月14日現在、36団体)
<エネルギー供給事業者>
青森県民エナジー株式会社(青森県)/株式会社さくら新電力(青森県)/久慈地域エネルギー株式会社(岩手県)/岩手中央エネルギー株式会社(岩手県)/ふくしま新電力株式会社(福島県)/ヴィジョナリーパワー株式会社(山梨県)/おいでんエネルギー株式会社(愛知県)/株式会社マルヰ(石川県)/伊勢志摩電力株式会社(三重県)/淡路島電力株式会社(兵庫県)/やめエネルギー株式会社(福岡県)/新電力おおいた株式会社(大分県)/株式会社ぶんごおおのエナジー(大分県)/宮崎電力株式会社(宮崎県)/ひおき地域エネルギー株式会社(鹿児島県)
<発電事業者>
特定非営利活動法人グリーンシティ/株式会社ひろさきアップルパワー/ファーマーズエナジー青森株式会社/会津電力株式会社/特定非営利活動法人上田市民エネルギー/株式会社グリーン発電大分
<地域・学術会員>
岩手県北広域振興局/久慈市/豊後大野市/国立大学法人弘前大学地域戦略研究所/神奈川工科大学スマートハウス研究センター/千葉大学予防医学センター健康都市・空間デザインラボ/特定非営利活動法人そらべあ基金
<サポート会員>
パワーシェアリング株式会社/凸版印刷株式会社/株式会社シード・プランニング/株式会社日本再生エネリンク/株式会社横浜環境デザイン/株式会社エネルギーソリューションジャパン/株式会社竹中工務店/株式会社デンケン
DATA
地域活性エネルギーリンク協議会事務局
〒113-0034 東京都文京区湯島3-9-11
湯島ファーストビル4階
株式会社シード・プランニング内
TEL:03-3835-9211
FAX:03-3831-0495
取材・文・写真/廣町公則