2024年 09月 22日
二人のヨハネス |
近所にヨハネスという若者がいる。
他の若者たちと住まいをシェアしている。
フードシェアにも参加していて、
古くなった野菜や期限ぎれの食品を
近くのスーパーなどから無料で貰い受けてくる。
「なんでも持ってっていいよ」と言われて、
何か貰ったこともあった。
久しぶりに出会ったら、彼は
大学の教職課程を終えて、今は
シュタイナーの高校で教育実習中とか。
（こちらの教育実習は２年間もかかり、
給料もわずかながらもらえる。）
「それじゃあ、いよいよ先生になるのね」
と言ったら、
「いやいや。安全のために教員の資格は取るけれど、
すぐに教師になろうとは思わない」と言う。
「じゃあ、何をしたいの？」
「特別に何かをしたくはないの。
僕はリラックスして生きたいんだ。
アクセクせずに、ひたすらリラックスして、、。
何も欲しい物はない。買いたい物もない。
食料品はフードシェアで、髪は自分で切るし、
おしゃれにも興味はない。一にも二にもリラックス。
どうしても生きていけなくなったら教師になるかな」
今どき、こう言う若者もいることに
ちょっと驚いた。
「ドイツでも近頃は、誰もが
若い頃から給料の高い職業を目指すようになって、
昔のように大学生が学問への興味から学んでいたのとは違うな」
と思っていたから、
こういうヒッピーみたいな青年
（ただし見た目はヒッピーじゃなくて
おぼっちゃま風）がまだいるとは驚いた。
（散歩道の途中にあるリンゴの樹）
相棒の姉の息子もヨハネスだ。名前は同じでも、彼は
リラックスヨハネスとは正反対の生活をしている。
彼は高校の頃はいわゆる不良だった。
自分でも「俺の犯罪的な時期」などと呼んでいる。
在籍していた公立のギムナジウムでは
進級があやしくなって、
落ちこぼれ用と言われたある私立ギムナジウムに転校し、
やっとのことでアビトゥア（大学入学資格）を取った。
それでも大学には行かず、
企業で働き、ビジネス学校で養成を受けた。
彼は口先でペラペラ偉そうに話すのがとても得意だ。
「コロナなんて嘘っぱち、
ビタミンDを毎日飲んでいれば大丈夫。
肉ばかり毎日食べると健康に良い」などを、
誰もが信じたくなるように話す才能がある。
この才能が効いたのか、企業から企業へと
移るたびに昇進し、収入は増える一方、
貯金も貯まる一方だけれど
使う時間がなくなった。
それで
２年前に勤めをキッパリやめて、一年間、
世界中を豪遊して回った。その後
さすがに心配になったらしく、再び仕事を探し、
何百倍もの競争率を克服して、
アメリカ企業のスイス支店のマネージャーとなった。
給料は我が娘のほぼ１０倍だ。つまり
娘（大学修士卒業）の一年間の給料が
彼の一ヶ月の給料に相当する。
（娘の給料はほぼドイツの平均）
スイスのチューリッヒに高給マンションを借り
高級車を買ったとか。
でもこのヨハネスの生活は
リラックスとは正反対だ。
今日はアメリカ、明日はシンガポール、
その後に中国、、、、と年がら年中、
世界中を飛び回っている。
家族がいないからこそできる仕事、とも言える。
いや、日本の家族だったら我慢してくれるかな。
こちらでは無理そう。
名前は同じヨハネスでも、
リラックスヨハネスとはこんなにも違う生活。
どう生きたいか、というのは本当に人様々なのだ。
どっちがいいとも悪いとも言えない。
どっちが理想的なのかも人それぞれ。
私はただ観察しているだけ。
（遠くに見える丘は「美しい山」という名前を持つ）
by Solar18
| 2024-09-22 20:14
| 生きる途中での選択
|
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Comments(6)
Commented
by
at 2024-09-22 20:30
永遠のテーマかな、小説になりそうですね。
1
> saheizi-inokoriさん
この二人が老人になった時どうなっているか知りたいけれど、無理です。
この二人が老人になった時どうなっているか知りたいけれど、無理です。
うちの次男
今40歳ですが
以前から 早くリタイアして
好きなことをして暮らしたい～と
節約生活を送っています。
私も 働き者ではないので
それ 分かるような（笑）
長男は夫に似てるので
真剣に働いている（かな？）
今40歳ですが
以前から 早くリタイアして
好きなことをして暮らしたい～と
節約生活を送っています。
私も 働き者ではないので
それ 分かるような（笑）
長男は夫に似てるので
真剣に働いている（かな？）
> hanarenge2さん
観察が噂話になる恐れがあるので、躊躇することがあります。誰もが小説のような人生を送っているのですね。
観察が噂話になる恐れがあるので、躊躇することがあります。誰もが小説のような人生を送っているのですね。
